UNLOCK Reading and Writing Book 3
最終更新日:2022年5月13日
- おすすめしたプロフェッショナル
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藤原功生 / 北星学園女子中学高等学校 専門英語科所属
UNLOCK
ケンブリッジ大学出版
- おすすめのポイント
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Q. 良かったところ
外国語環境の中で実生活を送るに至る英語力が身につくところや、「英語で考え、英語で話す」といった経験が身につけられる。
また、日常で使える英語の読解力や、英語で考えられる思考力が身につけられるところがいいところだと思う。
英語教育において「日常会話」と称されているものは、実際かなり幅広く難易度が高いものだと思う。
英語で「日常会話」ができるようになるということは、相当に深い思考力が必要になってくるのではないか。そういったことを踏まえて本当の意味での日常会話・実用的な英語を学習できる教科書だと思う。Q. 困ったところや改善してほしいところ
教材に対しては特にない。
Q.導入の経緯や、本教材採用の意図と狙い
高校2年生(本校では5年生と呼称)の専門英語科コースを担当していて「Unlock Reading and Writing Book3」を取り扱っている。本校では普通科(Coreコース・Highコース)、専門音楽科、専門英語科を設置している。専門英語科ではハイレベルな英語の習得を目指しているため、こちらの教材を使用している。
コースはそれぞれ特色があり、英語力も異なる。そのため各科コースの特色に応じて教科書を選定している。具体的には、Highコースは一般入試を突破しての進学を主眼としており、大学入試に対応できる多様なコンテンツを備えた文法語彙レベルが高い教科書を選んでいる。Coreコース(普通科)は英語嫌いをなくすことを目的としており、自ら積極的に英語を学べるような教科書を採用するようにしている。専門英語科は、英語に特化したクラスであるため、入学段階でCEFR A2程度の英語力がある。よりハイレベルな英語の習得のため、高校生の日常・知的レベルなどに即した教材の選定を検討し、本教材を採用した。状況(クラスの人数やレベル):
各科コースによって異なるが、担当している専門英語科は英語を本格的に学びたくて入学してきた生徒が多く、特に英語のレベルが高い。クラスの人数は 1クラス約30〜25人ほど。
他の類似教材ではなくなぜこれか:
理由として2つあり、1つは高いオーセンティシティを確保することだ。背景として、欧米で同年代の生徒たちが興味・関心があるもの、知っておくべきもの等については実地で作成されたマテリアルを用いることに越したことはないのではないかと思う。さらに英語を勉強するだけではなく、英語が使われている文化や習慣に触れて学ぶということが重要だと考えている。
2つ目は生徒の知的レベルと語学レベルに合う教材がなかなか日本の出版社から出ていないという現状を踏まえた。生徒の英語レベルに合わせると内容の知的レベルが幼くなりすぎてしまう傾向がある。その点で、洋書テキストは知的レベル・語学レベル奏法に合致すると思う。
理由としては学習者が母語を介さずに英語を勉強する際に、それぞれの年代にあったものがケンブリッジ出版の教科書には準備されている。また、デジタルコンテンツについては非常に充実している。LMSについても、日本の検定教科書よりも既に大きく進歩している印象がある。Q. 実際の使い方 (どこを、どの程度のペースで等)
「Unlock」のシリーズにはスピーキングとリスニングを鍛えるものと、ライティングとリーディングを鍛えるものの2種類があるが、全般的に難度が高いこともあり専門英語科のみで使用している。実施しているCambridge英検の結果も踏まえ、特にライティング&リーディングに力を入れている。使用教材は各科コースの特性によって完全に異なるが、専門英語科においては特にオーセンティシティがあるものを使用するように努めている。また、日本語に訳すのではなくRetellingやInferential Questions、Discussion等を通して理解を深めていく。
Retellingでは、一度読んだ内容を自分の言葉で相手に分かりやすく説明をしてみるが、これができればテキストの内容を理解しているということにもなる。
Inferential Questionsではテキストに実際は書いていないものの、行間に至るまでしっかり読んで理解することによって自ら考えて答えることができるようになる質問に解答させることで、さらに理解を深めていく。理解が難しい問題は写真や図表を用いて説明をすることなどもある。教材の構成(全体構成、ページ構成):
授業では4技能、テキストでは6技能を統合し、基礎を学習してから上のレベルへのさらなる学習を促す構成のシリーズになっている。
章に応じて「人、季節、ライフスタイル、場所、仕事、家と建物、食事と文化、交通」といった内容の写真を見て背景知識を活性化し、その後、動画を視聴してレッスンで学習することのオーバービューをしていく。その後、基礎事項の学習、読解活動、発展的な活動(Discussion・Essay Writing等)に移行する。進め方(年/学期単位、授業単位):
1年で1冊を完了するシラバスを組んでいる。基本的には教科書の最初から章立てに沿って進めている。その中でも一番時間をかけているのはDiscussionである。授業では、「授業でしかできないこと」に力を入れて実施するが、Discussionは授業内に対面で実施することが望ましい。生徒によって理解してるレベルが異なるが、分からない単語などは各々が事前に勉強して授業内で対話する。学習の個別化/共同化にメリハリをつけることを意識している。
指導する上での工夫:
テキストの内容に即し、スピーキングの機会が減ってしまうため、いかにスピーキングの力を生徒につけさせるかが新たな課題となった。教材の内容に則して独自のプリントを作成して併用しながら学習させている。PowerPointスライドも作成し、全ての授業で使うようにしている。専門英語科は日本語使用の比率が極めて少ないため、難しい表現・内容などを説明するときはフレーズを変えて話すように工夫している。
Q. 使ってみた結果
専門英語科は本教材を使用していて、ケンブリッジ英検を英語力のアセスメントに用いている。結果として、Cambridge英検においてはリーディングとライティングにおいては例年に比してかなりの伸長があった。分かりやすく数字に反映されるため生徒のモチベーションを保つことができる。
なお、問題点はこれといって特にないが、科コースによりさまざまな授業があるため効率的に取り組めるようにスリム化できればいいなと感じている。Cambridge英検の結果を見ると、リスニングが若干弱いため理解度を深められるようにするやり方を今後考えていかなければならない。
Q. 利用が向いていると思われる学校・クラス・生徒
語彙力がないと英検2級の中間レベルであっても相当大変だと思う。現在専門英語科で使用している「Unlock Reading and Writing Book3」はCEFR A2レベルの英語レベルが最低限必要になってくる。また、英語で思考・判断・表現をさせる教材であるため、中学段階でしっかり文法や単語をビルドアップした生徒のみ向くのではないかと思う。
Q. 個人的にあまり合わないと思う学校・クラス・生徒
本教材は文法や語彙などの基礎の足場がない生徒や知識の低い生徒が使用するには難しく、結果としてモチベーションを下げることになってしまうと思う。中学校で基礎事項が定着している前提であれば、「Unlock Book1」など、低いレベルからの導入が望ましい。
- 藤原功生
- 北星学園女子中学高等学校 専門英語科所属