CLILが充実。他教科と連携しやすい幅広い題材を通して、バランスよく4技能を身に付ける
最終更新日:2022年9月20日
- おすすめしたプロフェッショナル
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上村優介 / 東福岡自彊館中学校・東福岡高等学校
New Horizon
東京書籍
- おすすめのポイント
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Q.良かったところ
他教科と連携しやすい幅広い題材が扱われている。レッスンのPreview動画などがあり、本文の内容理解をリスニングから始め、読んで、会話し、書く、という4技能のタスクを作りやすい設定になっている。使われている語彙のレベルが高いので、表現の幅が自動的に広がる。
Q. 困ったところや改善してほしいところ
スピーキング活動の説明は、例文や選択肢を入れるなど、もう少し分かりやすく書いてあると助かる。小学校の英語教育にばらつきがあるため、シンプルな説明では問題の意図をつかめない生徒もいる。
Q. 導入の経緯や、本教材採用の意図と狙い
問題/課題:
平成28年頃までの約20年間、ずっとZ会の『New Treasure』を使っていたが、内容に教員たちが飽きてきた。それで、検定教科書に変えてみようということになり、数年間『Sunshine』を使用したが、偏差値50程度の本校の生徒には内容が少し簡単すぎる感じがあった。そこで令和3年度の教科書改訂に伴い、レベル感がちょうど良い本書を導入することにした。
状況(クラスの人数やレベル):
中学1年~3年まで全クラスで本書を導入している。私が担当の中学3年生は、43人×2クラス。レベルは英検3級~2級程度。
他の類似教材ではなくなぜこれか:
本書のトピックには「CLIL(内容言語統合型学習)」が充実しており、自分たち英語科が求めている、学んでほしいトピックと重なっている。例えば、3年生のUnit3では「Animals on the Red List」という絶滅の危機に瀕している動物たちについて扱われているが、国語科の教科書にも絶滅危惧種の教材が載っている。また、Unit2では「Haiku in English」という題材で、俳句という日本文化の一つと結び付けつつ、英語特有の音や韻を踏み、音の楽しさを学べる。教科を横断してつながるようなトピックを含んでいると、他教科と連携して学びに向かうことができる。
Q. 実際の使い方 (どこを、どの程度のペースで等)
教材の構成(全体構成、ページ構成):
全部で11ユニットあるが、他の教材も併用しているため、1年間ですべてを扱うのではなく、生徒が興味を持ちやすいユニットを教員が5~6ユニット選んで扱う。1ユニットの構成は見開き4ページ。最初の見開き1ページは導入部分で、教員と生徒・生徒同士の会話など会話ベースの英文とそのリスニング音声があり、ユニットで扱う問題提起などが載せられている。その後、本文の長文が2つ(Story1・Story2)あり、本文の内容をもっと詳しく掘り下げるための設問やアクティビティが設けられている。
進め方(年/学期単位、授業単位):
1ユニットは、大体45分授業×8コマ(2週間程度)で扱う。
・1コマ目 まずそのレッスンのPreview動画を見る。QRコードを読み取ると、主人公と学校の生徒が話している場面の会話が2つアニメの映像で流れる。何を言っているのかまずは耳で確認する。動画を聞き取って、内容の〇✕問題などをロイロノートで出題する。生徒の解答は瞬時にタブレットで提出されるので、それを教室のスクリーンに映し出して、全員で解答結果を確認する。
・2コマ目 長文1つ目。本文を読んだ後、ワードハント(日本語と品詞のみが書いてあるボキャブラリーシートを使って、教科書を見ながら対応する英語をどんどん書いていく)を行う。
音読活動:本文を6つのステップで段階的に読めるように練習する。
STEP1 スラッシュリーディング [語彙・文構造に注意してスラッシュを入れながら読む]
STEP2 音読 [意味を理解しながら正しい発音で]
・3コマ目 音読活動のつづき
STEP3 オーバーラッピング [英文を見ながら音声を聴きながら音読する]
STEP4 穴あき音読 [裏のシートを使って括弧を埋めながら音読する]
STEP5 シャドーイング [音声だけを聞いて追いかけて音読する]
STEP6 バックトランスレーション [裏の日本語を見て英語にする]
その場で30回音読させて、読み方や、なぜこういうステップを踏むのか、という説明を加える。翌週に「音読確認テスト」という小テストを行う。テストは、空欄穴埋め、または和文英訳など。
・4コマ目 長文2つ目。1つ目と同様に本文を扱った後、音読活動を行う。
・5コマ目 音読活動のつづき
4回目くらいから、音読したものをiPadのメモ機能を使って録音・文字起こしをし、自分で実際の本文と見比べて、違うところにしるしを付けて提出させる。
・6~8コマ目 プロジェクト。ポスター作製や英語劇など、レッスンに応じたアクティビティを各自で、またはペアやグループで準備して発表する。週に1コマALTと一緒に授業するときはプレゼンの仕方などを指導してもらう。
指導する上での工夫:
文法から入るのをやめて、ストーリーメイン、プロジェクトメインで、先に英語を実際に使って活動をしたうえで、知識を入れる。理屈で教えるよりはしゃべって教える方が生徒の反応が良い。
中高一貫校の一番大きなメリットはListeningだと思う。家で自分で英語を聞く機会というのは、よほどでないとなかなかハードルが高いと思うので、6年間の授業の中でできるだけ多く音声に触れさせたい。授業の音読活動の中でシャドーイングなども行うが、Reading とListeningは表裏一体だと思う。リスニングの音声が自分で出せるように、大事なところは大きく言っているはずなので、大事なところを拾おうとする習慣を付けさせる。リスニングができるようになるためのメカニズムは、①速さに付いて行けるようになる、②どれだけ真似が上手か、だと思う。たくさん英語を聞いて、音だけでは分からないことがあって当たり前だと感じる中で、文字のありがたみが分かる。
Q. 使ってみた結果
高校で使っている教科書『Power on』と比べて、レベルが高い。中学3年の教科書だが、高1、高2レベルの単語(例:生息地・捕食者など)が含まれた難しめの英文にチャレンジできるのはありがたい。内容が自分たちが他教科で勉強していることとリンクしていることに気づくので、背景知識が入ったうえで読むと、内容に興味を持ちやすい。「単語を覚えると文章を作れる」など、単語を覚えるメリットを知っているので、難しくてもあきらめないで取り組む姿勢が見られる。
Q. 利用が向いていると思われる学校・クラス・生徒
指導の仕方次第でどのレベルにも合うとは思うが、特に偏差値55くらいまでの生徒であれば、十分学べる教科書。
Q. 個人的にあまり合わないと思う学校・クラス・生徒
特にないと思うが、偏差値60以上になると、内容の展開がシンプルすぎるかもしれない。
- 上村優介
- 東福岡自彊館中学校・東福岡高等学校