高校生と大学生がオンラインで交流!英語によるプレゼンテーションスキルの向上を目指した高大接続授業
最終更新日:2024年2月13日
昨今、英語学習においてアウトプットの必要性が重視されており、授業にもグループワークやプレゼンテーションを取り入れている学校も多いのではないでしょうか。岩手県立大槌高校と盛岡大学文学部英語文化学科では、2022年11月22日と29日に、Zoom活用による高大接続授業を実施しました。
授業の内容は、高校生・大学生それぞれが各自取り組んできた課題やプロジェクトについて、英語でプレゼンテーションするというものです。いつもとは環境や伝える相手が異なる場でのプレゼンテーションに対し、高校生たちはどのように取り組んでいたのでしょうか。授業の内容や、今回の高大接続授業を開催した大槌高校の鈴木紗季先生(現岩手県立大船渡高校英語科)の所感をまとめました。
いつもとは違う環境で発表することで、「伝える」スキルやモチベーションの向上を目指す
以前から、大槌高校では総合的な探究の時間に、生徒が自分の興味のあるテーマ(問い)を設定し、ヒアリングやディスカッションを通して課題解決をするという「マイプロジェクト」に取り組んでいました。一方、盛岡大学文学部英語文化学科では、初年次の基礎ゼミナール1で、盛岡市役所などの社会人に対し「〇〇が大学生の日常になるには」という課題に対する提案を行っています。
今回の高大接続授業は、そういった取り組みを行っている高校生と大学生が、それぞれの取り組みを通じて得た学びや考えを発表し合い、交流を図るために実施されました。さらに、今後の高大接続授業の在り方についての模索や、英語によるプレゼンテーションスキルの向上も目的としています。
お互いに、いつもとは異なる環境でのプレゼンテーションに対して良い意味での緊張感を持ち、より良い発表をしようというモチベーションアップにつながればという狙いもありました。
Zoomのブレイクアウトルームを活用し、12グループずつに分けて発表
2日間にわたった授業には、大槌高校の生徒24名と、盛岡大学文学部英語文化学科1年の57名が参加しました。授業時間は各日1時間。高校・大学ともに12個のグループに分けてZoomのブレイクアウトルームを作成し、10分間の発表を4セッションに分けて実施しました。聞く側は、12グループの中からあらかじめ4グループを決めておき、1つのグループの発表が終わったあと、次のグループのブレイクアウトルームに移動するという流れです。
1日目は高校生による発表で、大槌町の魅力を発信するプロジェクトのほか、ギター・映画など趣味に関するもの、医療・福祉に関する調査などさまざまなテーマについて発表していました。2日目は、大学生から、盛岡の喫茶店・映画館・南部鉄瓶・商店街などの魅力化に取り組んだプロジェクトについて発表されました。
Zoomの操作に慣れていない生徒も多く、スライドが動かないなどのトラブルもあったものの、それぞれのグループの取り組みについてなんとか伝えようと頑張っている姿が印象的でした。発表後に大学生から英語で質問されたり、プロジェクトをほめてもらえたりする場面もあり、高校生にとっては良い刺激になっていたようです。また、大学生の中には、英語で質問できないもどかしさを感じていた学生もおり、お互いに学びを得た機会となりました。
授業を通じて「英語で伝える」ための気づきを得られた
オンラインでの英語プレゼンテーションが終わり、参加した生徒たちはさまざまな感想や学びを得たようです。
「話し方に抑揚がないと、とても聞きにくいことに気付いた」
「区切りを付けて話すと聞きやすくなる」
「シンプルな単語で伝えた方が聞きやすく、伝わりやすくなるのではないかと感じた」
「今回のような機会はあまりないので、良い経験になった」
「南部鉄瓶の存在を初めて知った」
大学生側からも、「高校生の発表を聞いて、伝える気持ちがあれば多少文脈が間違っていても伝わることが分かった」「大学生とは違ったテーマを扱っていて、聞いていてとても楽しかった」などの声がありました。
お互いに、普段とは異なる環境で発表する経験を通じ、「英語で伝える」ことについて新たな気づきを得られたのではないでしょうか。
聞き手の存在が発表のモチベーションになる
今回の高大接続授業を実施した鈴木紗季先生(授業実施時:大槌高校教諭、現:大船渡高校教諭)にも、感想をお聞きしました。
「当日は、パソコン自体のスペックやサーバーの関係で、うまくスライドを共有できなかった点と、ファシリテーターが1人いればよかったというのが反省点です。スマホやiPadは得意でも、パソコンの操作ができないという課題も見えました。とはいえ、そのような状況の中でも全員が発表できたので、初回としては成功だったと思います。
難しい探究のテーマを、よくかみ砕いて英語にしていたのにも感心しました。生徒たちも、ALTに発表するのとは違った緊張感や楽しさを感じていたようです。やはり、発表のモチベーションを上げるには、聞き手がいるという前提が大事だと思います。生徒たちにとっては、発表の内容が大学生に伝わったことが1つの自信になっていました。今回のような連携を、今後も続けていければと思います。英語が苦手な生徒でも、質疑応答まで英語で頑張るというのが次回の目標です。」
同じく、今回の授業をご担当された新沼史和先生(盛岡大学教授)にも感想を伺いました。
「学生たちが高校生のみなさんのプレゼンテーションを一生懸命聞いている姿に感激しました。普段教員の話を聞く時よりも随分しっかり話をきいているなと(笑)。こういった刺激は本学の学生にとっても良かったと思います。英語で質問できないもどかしさというものもあっていろんな学びがあったと思います。」
(取材:五十嵐美加/記事作成:白根理恵)