【後編】生徒の学習モチベ爆上がり! 有名女子校を改革に導いた、個人面談での魔法の声かけ

最終更新日:2023年4月6日

元・品川女子学院 教頭 石井豊彦先生をお迎えし、個人面談で生徒の学習モチベーションをぐんと高める声かけの方法を考える今回のセミナー。前編では、声かけで変わったという品川女子学院における進学実績の変化と「4ゾーングラフ」についてお話しいただきました。後編は実践編として、面談のロールプレイングとQ&Aをご紹介します。

> 【前編】生徒の学習モチベ爆上がり! 有名女子校を改革に導いた、個人面談での魔法の声かけ

もくじ

– 登壇者自己紹介

– 【第1部】品女の進学実績の変化

– 【第2部】変化の秘密は「4ゾーングラフ」

– 【第3部】面談ロールプレイング

– Q&A

 

第3部:面談ロールプレイング

(松山)ここまで変化の秘密をご説明いただきましたが、実際の面談のときにどうやって声かけをすればいいのか、なかなかイメージもつきにくいと思いますので、面談のロールプレイングを行いたいと思います。

ここにコトバンク女子学院を設立いたしました。ここに3人のAさん、Bさん、Cさんという生徒がいます。それぞれ違った悩みを抱えています。

フォーゾーングラフに当てはめてみますと、Aさんはまず基本を頑張ろうというところにいます。Bさんは基本からちょっと応用ができるようになりましたという②のゾーンにいます。Cさんは、応用もできていたのになぜか基本を落としてしまっている、本来ありえないZゾーンのところにいます。この3人のそれぞれの状況に対して石井先生がどのように声かけをしたり、それにどんな秘密があるのかロープレでお見せしたいと思います。

(松山)「試験勉強のやる気がなかなか出てこなくて悩んでいるんですけど、どうしたらいいですか。」

(石井先生)「そうですね。ところでこの理科は入学して以来ずっと苦手な教科なんですか。」

(松山)「いや入学したときはそうでもなかったんですけど、なんか難しくなっちゃって。それでなんかやる気が出なくなっちゃったんですよね。」

(石井先生)「いつ頃難しく感じるようになったんですか。中2の春ぐらいだったかなと思います。それは何かきっかけのようなものがあったんですか。」

(松山)「全然覚えてないです。」

(石井先生)このように、まずは話を深めていく必要があると思います。こういうときは、何ができないかということがわかってない場合、苦手なんだけどもどうしていいのかわからない場合がよくあります。ずっと苦手だったのかどうかは大事なことです。そういうことも本人に聞きましょう。今回は中2の春ぐらいからと言ってましたが、プロットした点を毎回残しておいて、その春のデータを見て、そのときどういう状況だったのか確認します。このときに他の教科との関連などもありますので、そういったことも含めてみたらいいと思います。

また、授業自体は楽しいのかどうかも大きなポイントです。先生が合わなくて授業そのものに身が入らないのか、ノートをとるなど必要最低限のやるべき努力が継続されているかどうか、こういう話をしながら本人に聞いていくといいと思います。大切なのは、とにかく頑張れではなくて、何を頑張るかということを具体的に2人で相談して決めていくということです。そして、これならば実行できるというものに答えを持っていかなくてはいけません。

これはよくあることですが、目的を結果にするケースが多いです。次は平均点以上取ることができるように頑張ろうという目標は、一生懸命頑張っても平均点に届かなかったら、努力しても無駄だったということになります。こういう行動は駄目です。例えば、毎日5分間でいいから何々をしようという行動を目標にします。この目標ならば、毎日5分間勉強しているということを続けていたら先生に褒められ、認めてもらえます。結果として成績が届かなくても、それは次はどうしたらいいかという次のステップに繋げることになります。結果を求めるのではなくて、そのプロセス、行動を、本人ができる範囲で約束できるようにしましょう

長期間にわたって低迷していることに悩んでいる場合は、簡単には上向かないです。とにかく何かを実行してそれを褒めることから始まって、そのサイクルが次に影響を与えるという気持ちでアドバイスをすればいいと思います。

全ての教科が①のゾーンにあるのか、②とか③のゾーンにある教科があるのであれば、なぜそれは③のゾーンにいるのかを本人に話させて、自分がやってうまくいっていることを、①の教科でもやってみようとアドバイスすることもよいでしょう。まずは、本人にその気にさせなければならないので、自分が努力したらできる目標にすることがポイントだと思います。低迷している悩みは大きいですから、これなら自分でもできる、この先生は自分のことを考えてくれていると思ってくれるような結論になったらいい面談だったと思います。

(松山)一点ここで質問が来ています。例えば授業は楽しいですかと聞いて、つまらないですと言われてしまったとき、先生が好きではないと言っている生徒については、どういった声かけをしたらいいですか。

(石井先生)これは大きな問題ですよね。でも、その先生の授業全員が嫌いということはほとんどなくて、その先生を評価する生徒もいれば、なかなか合わないという生徒もいるのが現実です。つまりその先生を好きになる必要はないわけで、やるべきことをしっかりやっているかどうか、「このことは少なくともあなたがやらなければいけないことをやれてないよね」というように、原理原則を大切にして指導をするべきと思います。教わった人によって自分の人生を左右されることほど愚かなことはないです。私に出会ったせいで理科が嫌いになった生徒もいると思います。それは本当に申し訳ないですが、そうではなくて、どの教科の先生もその教科が好きで、その教科の魅力を伝えるために先生になったわけですからそういう評価を受けた先生にも必ずいいところがあるし、そしてその先生が意図することを理解できるような、そんなアドバイスをまずはすべきかと思います。また、これは各先生方が自分の課題としてずっと解決に努力することでもあります。

(松山)ありがとうございます。難しいですよね。友達が、英語は何々先生だから好き。だから周りよりできるんだと言っていたことを思いだしました。年頃の子たちにとっては、先生の好き嫌いが結果にどうしても影響してしまうのかもしれないですね。

(石井先生)よく言われることですが、本などで本質的なものを知るとか、例えば英語が嫌いの子には、英語が話をすることができたらどんなにいいことがあるんだろうかというような話題を振って雑談をしてみるとか、また身近にそういうことですごく充実した人生を送る人たちがいればその人を紹介することもできるのではないでしょうかます

例えば、品川女子に、大学で心理学を教えられている先生が特別授業で来て、文系の生徒で心理学をやりたいという子がその先生の話を聞いたのですが、その先生が最後に言ったことが、「心理学は文系に分類されていますけど数学は大事です。なぜならば統計学というものをすごく用いるからです。だから心理学を学びたい子はしっかり数学を頑張らないと駄目よ」と言ったそうです。文系のクラスは受験科目に数学がないので、どうしても数学の授業をおろそかにする傾向があったのですが、その話を聞いて、文系数学の授業の態度が良くなりました。自分がやりたいことをしっかり考えて、そこにこの科目が絡んでいるんだということを聞くと、モチベーションが上がったという一例といえます。

品川女子では、ロールモデルという言葉をよく使います。こうなりたいという目標の人つまりロールモデルがいて、その人の話だったら、担任が100回言っても聞かないことを聞いてくれるというようなこともあります。ロールモデルのような人たちに相談したり、アドバイスをもらったり、いろんなことを担任として考えていけばいいと思います。

その嫌われている先生のせいにして、その子がそのままその教科が嫌いでいていいかというとそうではないと思いますので、いろんなことをお互い考えていけばいいと思います。

(松山)次はBさんです。基礎ができていて、応用がちょっとできるゾーン②の子です。

(松山)「得点がアップしました。先生これからも頑張ります」

(石井先生)「良かったですね!本当に努力した結果です。前回の面談で、授業があった日には必ず復習するって言っていましたが、それが実行できた結果ですか。」

(松山)「はいちょっとだけでもやるようにしました。」

(石井先生)「苦手な科目も、こうやって地道な努力をすると得点がアップしてくるということが体験できてすごく良かったです。これから他の科目でもこのようなことができるように頑張ってくださいね。」

(石井先生)得点がアップしたというタイプは非常に面談しやすいと思います。成績がアップしたことを褒めるのですが、これは実は努力して、決めた内容が実行できたからよかったということが確認できたらなお良いと思います。よく私がやっていた方法ですが、現在のあなたを100点満点で採点するとしたら何点挙げられるか、ということをよく聞いていました。例えば、70点と答えた子がいたら、70点あげれたのはどういうことができたからなのか、30点減点したのはどういうことをできなかったからなのか、それぞれ具体的に話を引き出して、この子が次にやらないといけないと思っていることを聞き出すことができる思います。

また、③のゾーンに行くためにはこの子はさらに基礎だけではなくて、応用の得点を取るためにどういうような努力をしなければいけないかを相談し、次の面談までの約束にするべきだと思います。本人にどうしたらいいか聞いて、仮説を立てて、それを実行する約束をして終えればいいと思います。成功するかどうか、わかりませんが、失敗すれば、次の面談で新しい方法を考えれば良いと思います。とにかく繋げていくということが大事な生徒たちだと思います。

(松山)それでは次に、難しそうなCさんに行きたいと思います。Cさんは基本的に応用も基礎もできていたけれども、ちょっと基本ができなくなってしまって、Zゾーンにいる生徒です。

(松山)「最近部活のリーダーになって忙しくて、成績が下がり気味なんですよね。頑張っているつもりなんですけどこのままだと心配です。どうしたらいいですかね。」

(石井先生)「そうですか。でも部活動のリーダーになったってすごいじゃないですか。頑張っているということはまずは自信を持ってください。周りで同じような悩みを持っている人は多いんですか。」

(松山)「同級生にはいないかも。」

(石井先生)「先輩の部活動のリーダーだった先輩とはそういう話をしてみたんですか。」

(松山)「そうですね。ちょっとしてみました。」

(石井先生)「前リーダーはこういう悩みはなくて乗り切れたんでしょうか」

(松山)「先輩もやっぱり困ったって言ってました。」

(石井先生)「どのようにして先輩はこの課題を乗り切ったかというのは、ぜひ聞いてみていたらどうでしょうか?」

(松山)「ちょっとまた喋ってみます。」

(石井先生)「とにかくリーダーになるということは、大変なことで名誉なことであるので、これをしっかりやりきることがあなたにとってすごく大事なことです。ぜひ成績が下がらないように両立するように一緒に考えていきましょう。」

このZゾーンには、ありとあらゆる理由が存在します。よくあるのが部活動の部長とか生徒会の会長とか、そういうリーダーを引き受けたために時間がなくなってしまったケースですでも、そういうケースは将来社会にでるとよくあることです。例えば、昇進をしたり、家庭を持ったり、また女性であれば出産したり、いろいろなことを同時にやらなくてはいけないことがあります。何かを両立するために何かを犠牲にすることが、あなたの望んでいることではありませんね。そうならないために、マルチタスクと言って、いろいろなことを効率よく処理していく能力が将来求められます。高校生で、こういう経験ができるということは素晴らしいチャンスだと思います。その意味をしっかり理解した上で、何とか解決していってほしいと伝えてあげたいと思います。

面談の中でも言いましたけれども、身の回りに同じような悩みを抱えて悩んでいる人がいないか、そしてそのような悩みを解決した人はいないか、これをロールモデルといいます。生徒が、ロールモデルと思える人に話を聞いていくのも一つかもしれないです。ひょっとしたらその子の保護者も、昔同じような経験をして、何らかの回答を掴んでいるかもしれません。自分だけで悩むのではなくて、いろいろな人に相談していろいろな人の経験を自分のものにしていく、こういったことが、この経験を通じて得られたら素晴らしいことだと思います。

また、Zゾーンにいる子については、こういう子がいるということを他の先生とも共有していくといいと思います。例えば、学年の変わり目で、先生との相性という点もあって、今までは一生懸命に聞けていたのに、今は授業の細かい部分をポロポロ落としてしまっていて、今まで理解したことで応用問題が解けているというようなケースもあります。また、実際はケアレスミスをたくさんして、本当ならば、③のゾーンのはずが、Zゾーンにいるというような状況もありますので、しっかりと確認していくとよいと思います。

このシートは、私が品川女子の教頭時代に作ったシートです。英語の進研模試偏差値が60以上の生徒の人数がその学年の人数の何%になるかを折れ線グラフにしたものです。なぜ英語にしたかというと、入学試験の科目で英語だけは理系文系にあるからです。全員がずっと受け続けるということで英語にしました。

最初の高校1年生は、高校生になったという自覚で品川女子の生徒は頑張るんです。そして少し上向きにグラフが上がります。ところがその後、高校2年生になると見事に下がっていきます。これはどうしてでしょうか?これは毎年同じことが起こる現象です。高校2年生になると6年制の私立の場合、部活動の部長、生徒会の会長というのはこの学年が担うわけです。いろいろなことをその子たちが引き受けて、そしてその子たちは一生懸命頑張って、決して勉強をさぼっているわけではなくても、結果成績は下がっていきます。このときに私達はそれを見守ってやるべきだろうと考えております。

なぜならば、高校2年生の部長が交代するのが2年生の11月過ぎですが、その後2年生の2月に模擬試験があって、その模擬試験では偏差値60以上の生徒が急増しているからです。つまり、やり終えたら受験生に切り替えて、2年最期の模試では、1年生のときよりもその人数が増えるという状況になります。

皆さんにお伝えしたいのは、単純に前回に比べて落ちたからといって大騒ぎするのではなく、また、前回に比べて上がったからといって喜ぶのではないということです。前回に比べて上がっていても、ひょっとしたらもっと上がらなければいけないのかもしれないです。

生徒は、学校の特徴によって、こういった数値が特徴を持って上下してく傾向が見つけられると思ってます。これを私はスクールバイオリズムと名付けております。人間には、バイオリズムというものがあって、体調の良いとき悪いときにリズムがあるといわれて、そういうものを知っておくと体調管理がうまくいくと言われています。私たちも、自分の学校に、スクールバイオリズム、こういった癖があるというのを理解した上で、本当はもっと上がらなければいけないのに上がっていないとか、本当はもっと下がるはずなのに下がらないで頑張っているというようなことをしっかり理解して、褒めてあげたり励ましてあげたりする必要があります。

3年生1学期グラフの特徴として、今度は成績が下がる傾向がありますが、これは心配ありません。なぜならば浪人をした人たちが模擬試験の母体に入ってくるからです。どうしても高校3年生をもう1回やっている生徒の方が成績は最初はいいです。最初は偏差値が落ちますけれども、そこからまた受験生の自覚というもので盛り返していきます。

学校には、このようなバイオリズムがあるということを知った上で、Zゾーンに入っている子どもたちには、みんな同じように悩んでいてそんなに気にする必要はないと言ってあげてもいいのかも知れないです。

(松山)どうもありがとうございました。個人面談で生徒のモチベが爆上がりする3ステップとして、明日から先生方が何をすればいいのかをステップにまとめました。まずステップ1、日常の中で褒めるポイントを記録し、面談で伝えよう。これはエクボ探しの部分です。ステップ2は、ABC分類とフォーゾーングラフです。これを是非活用することを視野に入れてみてください。そうすることで、課題の所在が明らかになります。ステップ3、その課題が発生した原因を生徒とともに探り、解決の為に具体的な行動案を立てていきましょう。ただ頑張れというだけではなく、PDCAをきちんと回していく、企業活動だとPDCAを回すというのは当たり前のことですけれども、学校で生徒の学習状況や成績についてPDCAを回していくという発想は、私が学生のときは少なくともなかったし、言われなかったと思いました。

(石井先生)先ほどお話したABC分類というのは、私が考えたABC分類を今日はご紹介しただけです。それぞれの先生がそれぞれのABCを決めて、問題にメッセージを乗せて発信をして、それをフォーゾーングラフで検証していくと、自分の授業を振り返ることもできますし、自分が担当している異常値を示ししている生徒を素早く発見できるといったような利点があります。課題の所在を明らかにさえすれば、手当も速やかに行えます。ぜひやっていただけたらと思います。

生徒からありがとうと言われることが我々は何よりも大好きですし、そういうことがあれば、少々ブラックな職場環境でも頑張って、改善していけると思っております。

(松山)石井先生は、この3月でご退職をされたということで、生徒と接しない時間が再び訪れますね。

(石井先生)実はですね、昔パリの日本人学校に3年いたことがあります。海外の留学生が日本に来て日本の大学に行くための日本語学校というものがあるのですが、そこの理系の先生が足りないということでお声をかけていただきまして、来年の4月からそこで週に1日だけ、日本の大学で学びたいという海外の留学生に授業することになりました。実は日本は6年、3年、3年の12年間で高校卒業です。ところが外国では、11年間で卒業する国もあります。そうすると、日本の大学に行くためには、12年ではなくて11年で卒業しているので、日本で日本語学校に1年間在籍して授業を受けると、12年目と認定されて、日本の大学の受験資格を得られるということがあるそうです。そのような学校で、1年間、私は化学と数学を担当します。今まで中学校高校そして大学生といろいろ教えることができましたが、今度は海外から来た、日本で学びたいという留学生とこうやってご縁が持てるということで、ちょっと今はわくわくしております。

(松山)日本の学生とどう違うのかみたいなところも肌で感じることができそうですね。

(石井先生)そうですね。何より日本が大好きで、日本で学びたいと言ってくれている子たちに対して、何か授業でもっとワクワクさせてあげたいなと思っております。求めていると、何かしらドアが開くのかなという感じはあります。今回のコトバンクさんでのセミナーも、今まで自分がやってきたことを少しでもお知らせして、もし皆様に活用してもらえるならありがたいなと思っていたら、このようなお声をかけていただいたのでありがたいと思っております。

 

Q&A

Q. 先生が担任を務めていたときは、高校3年生の2学期については大学入試の合格に向けて、どのような個別指導をしてきましたか。また、志望校までかなり努力が必要な生徒にはどういった声かけをしていましたか。

A. (石井先生)これは私が勝手に考えている理屈ですが、受験直前にストレスとプレッシャーで何も手につかなくなった生徒がいたとします。こういう状況になったときどうしますか。試験は同じ点数は取れません。これをデータを用いてご説明します。これは進研模試の2年生の7月と11月の模試の結果(英語)を比較したデータです。例えば、7月の模試では34名の方が偏差値60~65の成績を取っていますが、その34名のうち11月の次の模試で同じ成績をとったのはたった15人で、9人は偏差値が5~10ぐらい下がった、10人は偏差値が5~10ぐらい上がった、という結果があります。2回の模試の校内偏差値はほぼ同じなので、同じ位の難しさのテストであると考えられます。つまり、同じ範囲で同じぐらいの難しさのテストをやっても同じ点数は連続して取れないということです。

テストで同じ点を取り続けることが難しいという考え方から、生徒たちには、試験結果の得点はあなたの実力の近辺にでるのであって、正確にあなたの実力と同じではなく、上に出たり下がったり、振動を繰り返していると伝えました。大体の生徒は、自分の実力で入れる学校を志望校としていることはありません。本当だったら合格するのが難しい大学を志望校として頑張っています。たまたま良い点数をとったときに合格するというのが実情だと思います。だから、受験勉強の期間中は、図にある結果を上げる要因をひとつでも多く行い、結果を下げる要因をとにかくやらないという生活態度に終始しなさい、これしかないという指導をしてきました。

これは私の大胆な仮説です。実力というものがあって、それに対してテストの得点が上がったり下がったりしているとすれば、上がったときにたまたま志望校の試験があったら合格するし、実力からして多分大丈夫ですよという押さえのレベル校の試験があったときたまたま調子が悪かったり体調が悪かったりすれば不合格になります。これが入試です。

このグラフのように、何も手につかなくなって実力がどんどん低下していくと全ての学校に合格できなくなります。

逆にしっかりと頑張って着実にやらなければいけないことをやっていくと実力が上がり、グラフのように、全ての志望校に合格することもあります。先輩たちで全部合格した、全部駄目だったという、いろいろな人がいますけど、良い結果を求めて、自分に向き合って最後までいいということをやり続ける。もうそれしかありません。現役は最後の1秒まで実力は延びるとよく言われています。それを繰り返し繰り返し、私はこれを、高校2年生、3年生に一生懸命説いてきました。

 

Q. Zゾーンには自頭はあるのに基礎を地道にできない生徒もいると思います。こういった場合は、トレーニング的に基礎力をつける機会を面談等で行動目標として作ればいいと思います。一方、②のゾーンの生徒はおそらく授業をまじめに受けていると思いますが、③に行くには、いわゆる自頭的な能力が必要になるのではないかと思います。そのような生徒にはどのような声かけをされていましたか。

A. (石井先生)具体的にこの問題が解ければいいんだというものを示すということが、フォーゾーンや、進研模試のグラフから分かります。この問題が解けていれば偏差値60に到着できるんだというのを具体的に示して、その生徒が②のゾーンになったそのテストで、実際に落とした問題を見て、この問題を解けるようにするにはどうしたらいいかを地道に、具体的に考えさせます。才能の話になると、自分は才能がないんだとなってしまいますが、そんなことはないです。この問題を間違えたのは、あのときにどういうことをしなければいけなかったのに、それをしなかったからだと理解でき、才能とは区別して考えさせることができると思います。具体的な質問で具体的なことを考えさせ、具体的にこの問題を解けるようになるにはこんなことしたらいいのではないかというような話が出きたら、それを採用していけばいいと思います。具体的に何をさせるかということに落とし込むために、ゾーンやグラフというものを活用しています。具体的に次の一歩を示してあげる、それが一番いいと思います。

Q. 個人面談のタイミングはいつですか。授業中、昼休み、放課後などでしょうか。

A. (石井先生)私の勤めていた学校では、年5回担任の面談がありました。定期試験の後にそういった面談があったのでそれを活用していました。もう一つは、私のようなおじさんが16歳、17歳のお嬢さんに「ちょっと時間を取って2人で話をしよう」と言ったら、いやって言われるのは当たり前ですから、「なぜここに呼んだのか」と、「あなたはZゾーンにいるから、その話をしたいから呼んだんだ」というように、エビデンスに基づく理由を説明ができることがすごく大事だと思います。品川女子は1学期は学年が始まった直後、中間試験の後、夏休み前に保護者面談、夏休みが終わった後の面談、中間試験が終わった後、12に保護者面談、2月の面談と、担任は7回も面談しないといけなかったので多かったですね。放課後だけでなく昼休み、朝にも面談を行っていした。私個人としては、なかなか15分ちゃんと目の前に座って話してくれるチャンスというのはなかなか作れないので、すごくありがたかったです。

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