【前編】授業が楽しみになる! 生徒の発信力を引き出す達人たちの4技能融合授業ノウハウ

最終更新日:2023年4月6日

授業への集中力が高まり、発信力が伸びる授業法「4技能融合授業」

学校祭や体育祭が終わると、生徒たちは何だか気もそぞろ。授業への集中力が下がっている、生徒を集中させる秘訣は何かないものか……そういうことで悩んだ経験のある先生も多いのではないでしょうか。そこでおすすめしたいのが「4技能融合授業」です。

「4技能融合授業」とは?

読み書きが中心となっている普段の授業に”聞く”・”話す”の要素を加え、1つの授業に”読む””聞く””書く””話す”、全ての要素を組み込む授業法です。これにより、生徒が考えて発信する機会が生まれ、授業に積極的に取り組むようになります。

「4技能融合授業」で得られる4つのメリット

①先生の準備負担が軽減
生徒の授業へのモチベーションがアップ
実用的な英語力が身につく
受験英語の成績がアップする

今回のセミナーでは、青森県立青森高等学校の當麻進仁先生、長崎県立長崎東中学校・高等学校の一ノ瀬憲二先生という生徒の発信力を引き出す達人とも言える2名の先生方を迎え、4技能融合授業を簡単に実践する方法をご紹介いただきます。今すぐに、お使いの教科書でも実践できるコツが満載です。

もくじ

【第1部】技能融合をすべき理由、技能融合型授業が実施できない理由(當麻先生)

【第2部】楽しく学べる4技能!ディスカッションとエッセイの実践(一ノ瀬先生)

【第3部】明日からできる!コミュニケーション英語の8時間プログラム(當麻先生)

【第4部】Q&A

 

【第1部】技能融合をすべき理由、技能融合型授業が実施できない理由(當麻先生)

(當麻先生)4技能統合の授業がなかなか進まない理由として個人的に考えているのは、文法や訳読、解説が中心になって、リスニングをやるとなっても選択問題のT-Fか4択問題で終わってしまうことが多い点です。理由はなんといっても、大学受験があるからというところが大きいと思っています。

しかし、ESLやCEFRに対して学習指導要領がカバーしている範囲は上図ぐらいのものです。教科書は内容によってずれや偏りがありますし、共通テストはそのうちのリスニングとリーディングしか扱いません。個別試験は和訳も英訳も出るしとなると、授業がどうしても偏ってしまいます。

そこで、やはり4技能がいいのではないかと思っています。理由としては、やる気が出るからというのが一番です。成績も伸びるか、少なくとも同じかなので、やって損はありません。

例えばうちの生徒の2年生の感想にこんなものがありました。最初はやったことがないので苦手だという意識があったと思いますが、続けていくうちに「とても役立っています、楽しかったです」といった声があったり、自分の成長が見えるので驚いていたり、「もっと続けていきたい」という話もありました。

成績はどうなったかというと、右端が今担当している2年生の成績です。たいていは2年生になったときに一度成績が落ちるのですが、それがなくて、今のところはそのまま上昇傾向にあります。4技能を入れたとしても心配は要らないと思っています。

成績の上で悪影響はなく、むしろ良いぐらいで、モチベーションもすごく高まっています。生徒側は最初に少しだけ抵抗感を見せますが、やっていくうちにすぐに生徒も良さがわかってくると思っています。

たまたまではないかと思う方もいらっしゃると思うので、理論を紹介します。意味内容重視の授業をやったときと、文法にフォーカスを当てて授業をやったときの、その後のテストの結果を比べたものですが、驚くことに、文法のテストを含め全ての分野において意味内容重視の授業をやった方が効果がある、という実験結果が出ていました。

名古屋外国語大学の柴田先生の調査で、国際グローバルコースで意味内容重視のライティングの授業を展開したところ、1年生の4月には抵抗感を持っていた生徒が多かったようです。

これが、12月までに下がっていって、12月には肯定的な数字が増えてきたという調査結果でした。感覚的に自分でいいなと思っているものは、理論的にもそんなにずれてはいないんだなという気がしています。

実際にできるかという点でも、そんなに難しくないと思っています。それは第2部の方でお話しします。

(松山)當麻先生ありがとうございました。要点をまとめますと、まず4技能融合が進まないのは、大学受験の出題形式と全然違うから先生たちが躊躇してしまうこと、受験の役に立たないのではないかと思ってしまうということでした。それでも4技能の融合をおすすめするのは、生徒が楽しく授業に参加できるから、そして、実はテストの点数も伸びるからということでした。悪いところが見当たらないので、やるしかない感じがしてきますね。

【第2部】楽しく学べる4技能!ディスカッションとエッセイの実践(一ノ瀬先生)

(一ノ瀬先生)本校は長崎地区で2番手の進学校ですが、4技能を始めて、大学合格の実績は横ばいか少し上がったような感じです。約7割の子たちが現役で国公立大学に合格しており、東京外大や公立の国際教養など、英語で非常に高いレベルを求められる大学にも入っております。

今回は、簡単に実践できる活動として、高校2年生でできるDefinitionゲームとExpressionゲームを紹介いたします。2つ目に、高校2・3年生での技能融合について高校2年生のペアプレゼンとディスカッションからエッセイの実践を見ていただきます。最後に試験の結果等をご覧いただきます。

まずDefinition Gameです。これは授業の冒頭で実施するといいと思います。授業の最初にペアを作って、1人の生徒は前を見て、もう1人の生徒は後ろを向いて3つの単語を投影します。前を向いている生徒がこの3つの単語について英語でDefinitionをして、スライドを見ていない生徒が3つを当てます。1段あたり10秒、合計30秒の活動です。ペアをスイッチしてやるととても盛り上がります。

次はExpression Gameという帯活動です。例えば、instead ofを用いて会話が続くような面白い英文を書いてきてくださいと指示します。実際に生徒が作ってきたものがこちらです。②番は「何が起こったの!?」と今までで一番盛り上がりました(笑)。盛り上がるし、文法の定着にもなりますのでおすすめです。

次は、高校2年生と高校3年生で実施しているペアプレゼンの発表活動をご覧いただきます。1人より2人でプレゼンをさせることで同時に2人評価できるのが良い点です。また、少し英語力が弱い生徒も、助け合いながらやってくれています。PowerPointのスライドを上手に作って、共同作業でやっている生徒もいました。

この活動ではルーブリックを決めているのですが、Good PointとSuggestionsを入れているのが生徒には好評です。これは僕ではなくて、プレゼンを聞いている友達からもらえるんです。「Good Pointは日本語でいいから2つ以上良いところを書いてください、Suggestionsはもしあれば書いてね」と言うと、大体良い評価を子供たちは挙げてくれます。7年前のものを今でも大切に持っている卒業生もいました。

2021年度からは高校3年生でディスカッションに取り組んでいます。本校の国際科では「異文化理解」という授業が週に2時間ありますので、6月から6ヶ月間実施しました。

ポイントは、ディスカッションを2回やることです。例えば、宇宙探査についてどう思いますか、宇宙探査を日本政府が税金をかけてやるべきでしょうかなどです。

リーディングでは、宇宙探査のことについて読みます。シャドーイングやオーバーラップ、和訳も入れていきます。ここで1回ディスカッションを行います。このディスカッションは基本的にはあまり進まないので、30分ほど調査やシェアをします。そのあと60分ぐらい時間をかけてエッセイライティングをします。ディスカッションで話したことを元に自分で調査をして、JAXAや日本政府がどれぐらいお金をかけているのかをエッセイに盛り込んで、それを使ってディスカッションの2回目を行うという流れです。

これは1回目のディスカッションの様子です。テキストを見ながらやっている人が多いですね。1回目はなかなか話せないので、ここで生徒たちはもどかしさを感じます。そして、「英語でどう言えばよかったんだろう」ともどかしく感じながら調べるのです。

エッセイライティングの後には書いたもののシェアも行います。そうすることで、相手が次の2回目のディスカッションにどんなデータを持ってきて、どんな話をするのか、班の仲間もあらかじめ予備知識として知っておくことができます。

ディスカッションとエッセイを結びつけてあげると、生徒同士で学びが深まって、表現や調査したことを書いたり、友達が使ったことを自分も転用してみたり、双方向の学びが生まれます。4技能統合の授業は、学びを深めるということにも非常に大きな役割を果たしてくれているのではないかと思います。

ディスカッションの評価で工夫しているのは、自己評価とファシリテーター評価と先生の評価の3つを入れている点です。みんなに伝わったか、良いデータがあったか、積極的に参加したか、生徒がまず自己評価をします。そして各班のファシリテーターが、それをもらって評価をします。生徒はだいたい過小評価をしますが、班長は妥当な評価をしてくれます。

最後にテスト結果です。ディスカッションの授業をやらなかった2年間に比べ、やった2021年度はトータルスコアが大きく上がっています。ライティングが下がっているのは、ディスカッションを入れている関係で本数が少なくなりますので、即興で書く力が落ちているのかもしれません。ただ、RとLは伸びていますので、非常に良いと思います。スピーキングも非常に上がっています。

これはセンター試験と共通テストの結果です。本校では、全国平均プラス10点を取ろうという学年統一の目標があります。もちろんセンター試験や共通テストの平均点のぶれはありますが、むしろやった方がリスニングは伸びているような感じもあります。

何より次の世代を担う子供たちに、しょぼい英語で高校を卒業してほしくないという思いがあります。4技能をやることによって、「長崎東で英語の授業を受けたい」という生徒が実際に増えています。本校は地域2番手校ですが、地域の1番手校を目指すのではなく、長崎東で英語教育を受けたいという生徒たちを受け入れていきたいと思います。

(松山)一ノ瀬先生、ありがとうございました。最後のディスカッションからエッセイの流れを作っていく授業において、”聞く”が最初にあり、そして”話す”の間に”書く”を挟むという順番が肝かと思ったんですけれども、この2つにはどういった効果がありますでしょうか。

(一ノ瀬先生)まずはインプットが重要かと思いますので、話す前にどんな内容なのかしっかり聞かせます。生徒たちは、次に”話す”が控えているので、非常によく聞きます。また、一度話してみると全然出来なくて終わることが多いので、「こういうことを話したかったな」「こういうデータがあるといいな」と頭の中で論点を整理しながら書くようになります。それを踏まえて2回目の話すターンを実施することで、生徒自身も上達を実感できているように思います。

(松山)話すために聞く、話すために読むという活動ができているのですね。生徒も楽しいし、成績も伸びるし、評価も丸をつけるだけであらかじめ用意してしまえば先生の負担もそこまで重くはないのではないかと感じました。

 

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