生徒の「英語やらされてる感」を吹き飛ばす! モチベ爆上がりのメタ・コミュニケーション指導術

最終更新日:2023年9月1日

学習に最も大切な要素の一つはモチベーションです。特に英語を学ぶ場合、学習の目的や将来の活用法を明確にしなければ、生徒たちの学習モチベーションを高めることは困難です。生徒のモチベーションを上げることに苦労している先生も多いのではないでしょうか。
今回は、校外活動を通して教員としての幅を広げ、学びを深め続けている「メタコミュニケーションの達人」西山先生に、生徒のモチベーション向上についてお話していただきます。

登壇者プロフィール

偏差値70以上の東大寺学園中学高等学校で英語教員として勤務後、香里ヌヴェール学院小学校の校長先生を務め、全授業の6割を英語化。
現在は、開智日本橋学園中学高等学校英語科の教諭をしながら海外大学進学兼国際交流推進も担当。昭和女子大附属小学校国際コース開設室長も務める。さらに、舞台俳優やDJなどとしても活躍中。

モチベーションを持ちにくい日本の学校環境

英語学習にかかわらず、モチベーションは非常に重要です。しかし、日本の学校では、昔からあまりモチベーションが重要視されていない風潮があると思います。「昔からこうだったから努力しないといけない」など、「~ねばならない」や前例踏襲という観点で語られることが多いのではないでしょうか。

モチベーションに関する問題点は、保護者・教員・児童生徒と、立場によって異なります。

・保護者編:「自分のようになってほしくないという強迫観念によるモチベーション」「受験のため」「よその子より学力が高ければうれしい」など、モチベーションがあまり高くない。
・教員編:「限られた授業数内で教材をこなさなければならない」「同僚と合わせなければならない」「受験のためだけに英語を勉強している」などの理由で、教えるモチベーションが上がらない。
・児童・生徒編:「英語を話すロールモデルが極端に少ない」「目標設定が受験に画一化されている」「やらされ感満載で英語の勉強が面白くない」などがモチベーションの低下につながっている。

生徒たちが主体的に勉強しない、いくら授業を工夫しても英語力が上がらないと悩む先生も多いと思います。本来、語学はスキルを定着させていくものなので、どれだけ授業外で自主的に学習できるかにかかっています。しかし日本の学校は、学習の目標設定はバラバラ、生徒のモチベーションもさまざま、生徒たちの「好き」や「興味」を度外視した授業設計など、生徒がモチベーションを持てない環境にあります。

そもそも、クラスに30人生徒がいれば、能力・適性や興味・関心もそれぞれ異なるので、モチベーションが上がるポイントも違います。全員が喜ぶような授業をする難しさもあるでしょう。

動機付けの段階とアプローチ

モチベーションには、外発的動機付けと内発的動機付けの2種類があり、さらに外発的動機付けは、モチベーションの低い順に、「外的調整」「取り入れ的調整」「同一化的調整」「総合的調整」の4段階に分かれます。

【外発的動機付け】

・外的調整:親や先生などに言われたから勉強する。「親や先生に褒められる」
・取り入れ的調整:達成感や有能感を得るために勉強する。「勉強できないと恥ずかしい」
・同一化的調整:目標のために積極的に勉強する。「良い大学に入りたい」
・総合的調整:自分の能力を高めるために勉強する。

【内発的動機付け】

・内発的調整:勉強という活動自体が目的。「面白くて楽しい」

このように、モチベーションの高さは5段階あり、生徒たちが今どの段階にいるのかを知っておくことが大事です。

英語が話せることによるインセンティブを伝えることが大事

日本で英語学習へのモチベーションが高まらない理由として、「Fixed Mindset」になりがちな環境設定もあるでしょう。

この「Fixed Mindset」の考え方を「Growth Mindset」に変えていければ、英語の授業にも前向きに挑戦してくれるのではないかと思います。

生徒たちに英語学習の目標を持ってもらうためには、英語を学習するとアドバンテージがたくさんあると伝えることも大切です。例えば、インターネットの世界で使用される言語の60.4%が英語です。一方、日本語はわずか2.1%。インターネット上の人口は49.5億人と言われているので、極端に言うと英語ができれば50億人近い人とコミュニケーションが取れるということになります。

こういうことを、生徒に「これって楽しいことだよね」と教えてあげるのがいいと思います。つまり、「英語を学ぶのは楽しい」と伝えられる大人がどれだけ学校にいるか、ということが大事です。

政治・経済・文化・エンタメなど、さまざまな観点から見ても、英語を勉強しておいた方が、必ずアドバンテージがあります。Z世代と言われている今の子どもたちは、パソコンやインターネットにも詳しい世代です。英語ができれば、もっといろいろな情報を得られて、世界が広がっていくというインセンティブの大きさを伝えてあげるべきだと思います。

海外の大学への進学も視野に入れよう

私は、英語を多くの選択肢を持つためのツールだと考えています。英語ができれば、日本の大学だけでなく海外の大学に進学するという選択も可能です。就職先や住む場所などに関しても、英語ができれば選択肢が広がりますよね。

日本では、偏差値が重視されるため、年齢が上がるごとに選択肢が狭くなってしまいます。ところが、海外では、自分のやりたいことや適性に合わせて多くの選択肢から選べるようになっています。子どもたちにとって、選択肢を広げていくということは非常に大切です。選択肢を広げるためにも、日本の大学だけでなく、ぜひ海外への大学進学も視野に入れてほしいと思います。選択肢を広げることが、英語学習へのモチベーションの向上にもつながるのではないでしょうか。

英語学習においては、以下の3点をうまく回していくことが重要です。

・質の高い学習を継続する。
・変化のきっかけになる国際交流などを行う。
・学ぶ目的や動機として海外進学も念頭に入れる。

英語力の向上とは、人生において、できるだけ多くの選択肢の中から、自分の好きなものを自分で選択していくチカラだと思います。

モチベーションを持続するためには、「やる気確認3項目」を確認しながら学習することが必要です。

【やる気確認3項目】

・好きでやっているか
・成長した姿をイメージしているか
・日々の学習の振り返りをしているか

生徒・保護者・教員ともに、この3点ができていれば、自然とモチベーションは持続していくでしょう。

生徒たちと世界をつなぐ「ハブ」になる

私自身も、常に英語を教えることの難しさを感じています。まだ若い頃、信頼しているベテランの先輩に「受け持っているクラス全員を変えようという気持ちで授業をする必要はあるけれど、実際は数年たって『ミニ西山』が一人できて、彼の人生に大きなインパクトを与えるぐらいの気持ちで、リラックスしてやりなさい」と言われたことがあります。

今は、もっと自分に対して謙虚になっていて、自分にはクラスの生徒全員を変える力は持っていないのではないかと思っています。自分が生徒を変えるのではなく、行動変容を起こすような人と生徒をつなぐ「ハブ」の役割になればいいのではないかと考えるようになりました。

自分の好きが一番、他人の好きも一番~「楽しい」を大切に

人は、頭で考えるより、一歩足を踏み出して何かを経験したり、誰かと出会うことで人生が変わることもあると思います

たとえ正しいことを言われても、自分に合わない、楽しくないと思ったら生徒たちは変わりません。今の日本では、まだ「歯を食いしばって努力すれば必ず成長する」という風潮が少なからずあります。しかし、好きではないことをやり続けても苦しいだけで身に付かないのではないでしょうか。楽しくて夢中になってやるから、上達するのだと思います。自分の好きが一番、他人の好きも一番。「好き」や「ワクワクする」という気持ちはとても大切です。

私は、英語教師のほかに、副業として市教委のアドバイザーや国際教育博の総合司会などもやっています。この働き方をしているメリットは、学校外の活動で出会ったさまざまな人と子どもたちをつなげてあげられるということです。

1つの肩書きだけでなく、いくつもの生き方や働き方の種類を持っていることを「スラッシャー」といいますが、最近ではラジオ番組の準レギュラー・Voicyのパーソナリティー・舞台俳優などにも挑戦しています。私自身、好きなことをやっていたら半年前では想像もつかないくらい人生が変わりました。

生徒の進路指導でも、偏差値や成績を基準にするのではなく、「人生は自分の好きなように生きていけるものなんだよ」と伝えていければと考えています。英語学習の目標設定にも役立つのではないでしょうか。

「好き」という気持ちは、人生を豊かにするものです。英語学習・英語教育・進路選択・日々の子供たちの生き方においても必要なことだと思います。他人との比較に囚われることなく、自分自身が何をやりたいのか、何が好きなのかに目を向けることで、人生はプラスに向かって進んでいくものです。生徒にも、そう伝えてあげられる大人でありたいですね。

教員が、先を生きている人として、「どんどんチャレンジしよう!」と熱く伝えて、生徒にチャレンジさせることが必要です。チャレンジしたら適切なフィードバックをして、小さな成功体験を積み上げていく。こうすることでモチベーションはどんどん高まり、成績も上がっていくでしょう。生徒にチャレンジさせる仕組みを作ってあげることが大切です。

英語を含めた外国語というのは、人生の中でできるだけ多くの選択肢に出会うためのツールです。正しい学習方法で、モチベーションを高く持ち、継続して取り組めば、英語の学習方法は、卒業後に別の言語を学ぶ際のマスターキーにもなります。

授業では2つの要素を意識することがポイントです。1つは、世界で通用する英語力を身に付けさせること。もう1つは、学ぶ際に好奇心を持ち、自分ごととして英語を学んでいいと伝えることです。

そうすることで、生徒たちは「知りたい!→ 自分で考える→発信したい」という行動をとるようになり、フィードバックをもらうことによってもっと知りたくなるというように変わっていくのではないかと思います。 そういう生徒は、おそらく大人になってもチャレンジを続けて小さな成功を積み重ねていき、自分や他人の好きを大事にできる人間に成長するのではないかと思います。

ここでもう一度思い出してほしいのが、「やる気確認3項目」です。

・好きでやっているか
・成功した姿をイメージしているか
・日々の学習の振り返りをしているか

この3つを意識しながら学習することで、モチベーションは上がっていくでしょう。

英語教材を探す

  • Repeatalk 詳しくはこちら
  • Twitter
  • Facebook

お知らせ

レビュー募集

国際教育ナビでは、教材レビューを投稿したい方を募集しています。お気軽にお申し込みください。編集部員よりオンライン取材させていただきます。