【来年からはラクしよう】まだそれ手作業なの?マイクロソフト認定教育イノベーター(MIEE)が教える超ラク!!校務攻略術

最終更新日:2023年10月4日

高校の新学習指導要領が本格施行された2022年以降、特に高校の先生方にとっては変化の大きい1年だったと思います。環境が変化しているにもかかわらず、授業、テスト作成、部活、面談、学校行事、保護者対応、事務作業などタスクは減らないですよね。労力の配分に四苦八苦しながらなんとかこなしているという先生も多いのではないでしょうか。

そこで、来年からはICT活用で校務をラクにしませんかというご提案です。本業である教えることにぜひ集中していただきたいと思っております。

※ 本記事は、2022年12月17日に開催されたオンラインセミナー「【来年からはラクしよう】まだそれ手作業なの?マイクロソフト認定教育イノベーター(MIEE)が教える超ラク!!校務攻略術」の内容を要約したものです。

目次

登壇者紹介
セミナー趣旨説明(桑野先生)
【第1部】ICT実践例(三好先生)、アドバイス(田中様)
【第2部】ICT実践例(中川先生)、アドバイス(田中様)

登壇者紹介

本日は、マイクロソフト認定教育イノベーターの先生方より学校現場でのICTの具体的な活用例をお話しいただき、日本マイクロソフトの田中様より活用をより深めるアドバイスをいただきます。学校でマイクロソフト製品を導入していなくても、同様のICTツールですぐ実現できるものばかりです。

桑野 健太郎 先生(九州国際大学付属高等学校)

九州国際大学付属高等学校教諭(英語)、福岡英語力向上プロジェクトTeam くわけん”代表、文部科学省認証 英語教育推進リーダー、外国語教育推進ネットワーク副代表。国際教育ナビ顧問。

三好 規夫 先生(九州国際大学付属高等学校)

マイクロソフト認定教育イノベーター(MIEE)。学校法人九州国際大学 ICT教育改革プロジェクト(ICTEIP)チームリーダー。九州国際大学付属高等学校 国語科主任。国際教育ナビ顧問。

中川 千穂 先生(工学院大学附属中学校・高等学校)

マイクロソフト認定教育イノベーター(MIEE)。工学院大学附属中学校・高等学校英語科教諭 英語科主任、インターナショナルコース担任、Round Square Rep, Cambridge International School Counsellor, Microsoft Innovative Educator Expert, Adobe Education Leader, IB English B, CELTA。兵庫県出身。

・田中 達彦 先生(日本マイクロソフト)

マイクロソフト認定教育イノベーター(MIEE)。日本マイクロソフトで、小中高校の先生向けのコミュニティやトレーニングを2年前から担当。それ以前は、エヴァンジェリストとして製品マーケティング、ソフトウェアの開発などを行う。書籍や雑誌への執筆も多数。主な著書は「ゼロからはじめるプログラミング」。

 

セミナー趣旨説明(桑野先生)


2022年度の学校教育では新しい取り組みが増えており、現場の人間として時間と労力の限界を感じつつあります。新たなことをするには時間と労力が必要ですが、やりたいことが増えても1日の仕事に充てられる時間は変わりません。土日や研究の時間を削らなくてもやりたいことを実現する方法を考え、校務とICTの視点から考えれば良いのではないかと結論しました。

そこで、良い意味で、来年こそラクにできるように、本日は三好先生や中川先生、そして田中様からいろいろなアドバイスを受けて、私も皆様と一緒に学んでいけたらと思います。

 

【第1部】ICT実践例(三好先生)、アドバイス(田中様)


九国式ICT教育、社会情勢に対応した教育活動において、Microsoft Teams(以下 Teams)とMicrosoft Forms(以下 Forms)、Swayを活用した取り組みについて説明いたします。


本校は、生徒数が3学年合計約1,600人(50クラス)の規模の学校で、教員も120名おります。コロナ禍において密を避けるため、マイクロソフトツールを使って合理的かつ便利になる活動ができないかと考えて、取り組みを始めました。


本校ではTeamsやFormsを、入学式や生徒総会のような各行事で主に活用しております。


本校では入学式と卒業式に全員が集まれないため、新入生と卒業生は会場で参加し、保護者は別教室で中継を視聴しています。会場にはタブレットPCが配備され、中継担当の教員が教室に配置されています。これにより、テレビ中継のような形で実施しています。

ツール活用により、入学または卒業する学年の生徒約600人、保護者約700人、学級担任約20人の移動時間が大幅に短縮され、約30分節約できました。密の回避と保護者の参観も両立でき、別室とはいえリアルタイム視聴できて良かったという喜びの声も寄せられています。


体育祭では、従来は競技ごとの得点を紙に書いて得点係に渡し、得点板に反映していました。現在はTeamsを活用して、リアルタイムで得点係教員に直接データを送信して得点板に反映させる方法にしています。これにより大幅に時間と労力を節約でき1競技につき約20分の削減が実現しています。また、ペーパーレス化や、トランシーバーでの連絡からTeamsへの変更によりタイムラグの解消にもつながりました。


文化祭では、クラスまたは舞台発表者ごとに動画を作成して集約し、本番では動画を鑑賞後に保護者とも共有して、投票で最優秀クラスまたは最優秀賞発表者を決定しました。投票にはFormsを活用しています。

文化祭の活用メリットとして、全校生徒約1,600人、教員約120人の移動時間および待機時間を約90分短縮できました。さらに、投票の集計作業も約60分省略でき、ペーパーレス化が進みました。動画での発表により、生徒たちのICTスキル向上にも貢献しています。密の回避も達成できております。


生徒総会や生徒会役員選挙でも、生徒会役員や立候補者がMicrosoft PowerPointなどで資料を作成し、生徒は教室のプロジェクタと1人1台ある各自のSurfaceで資料を見ながら討議や演説会に参加します。討議結果や投票はFormsで送信し、最終結果が判明するというシステムが出来上がっております。

生徒総会および生徒会役員選挙におけるメリットは、移動時間の短縮と投票結果の集計時間の削減です。Formsの活用により、約120分の時間短縮が実現しました。生徒自身も、発表や議題にICT機器を使って取り組むことで、スキル向上に成功しています。


始業式や終業式、講演会、進路などのガイダンスもオンラインで配信しています。生徒たちは各自の教室で視聴しますが、Teamsを使って別室にいる発表者とリアルタイムで繋がり、質疑応答なども行われています。


研修報告や視察の報告など、今まで教員間で紙で行っていたものなどは、Swayを使って報告しております。Sway活用によるメリットは、テンプレートも含めてTeamsで共有できることや、ペーパーレス化です。文書と画像を効果的に活用できるため、紙よりよく聞いてもらえるようになりました。


ただ、本校では混在しているデータやデジタルツールの一元化が課題となっています。教育支援アプリを複数導入しているため、教職員のIDやパスワードの管理が複雑になっているからです。この課題の解決方法を田中様にお聞きしたいです。

(田中様)マイクロソフトでは、デジタルツールの一元化を進めるためにシングルサインオンという試みを進めています。これにより、マイクロソフトのアカウントを使用して複数のツールに1つのIDとパスワードでログインできるようになります。

データの複雑化については、特に学校は多くのデータが集まるため、その活用方法が今後の課題として挙げられます。Power BIというマイクロソフトのツールを使えば、データを可視化しわかりやすく成型できます。データの活用に際しては、まず学校の目的ややりたいことを明確にした後に、それに応じたデータを必要な形で集めることを検討するという順番が重要です。

(三好先生)大変勉強になるお話を伺いました。シングルサインオンがいろいろなところでできるようになればいいなと願っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 

【第2部】ICT実践例(中川先生)、アドバイス(田中様)


私が今から話したいのは、情報共有の力についてです。1人でやったらしんどいことも、みんなでやればそれだけ仕事が分担されラクになります。それを可能にしてくれるのがこのICTの力だと思っています。


まず、なぜ情報共有が必要か。人口減少や学校の先生への志望減少が現状であるため、その少ない人数の中でやっていくためには、冒頭でもあったようにICTの活用が必要です。

社会構造も変化しています。元々の3R(Reading、Writing、Arithmetic)は、4C(Communication、Collaboration、Creativity、Critical Thinking)へ。人口減少、家族の形の変化や気候変動、いろいろな変化の中で特に日本は、他国に比べて少し下がりかけています。今後の新しい世代の教育をどうしていったら良いでしょうか。


社会構造の変化に合わせて、教育のあり方も変える必要があります。ICTを使っても、ただチョークが電子黒板に変わっただけの教え方では不十分です。生徒たちは体験し、理解し、自ら行動することが重要です。デジタルトランスフォーメーションは、教育分野でも必要であり、Microsoft 21st Century Learning Design(MS 21CLD)には、21世紀に求められる教育についての多くの情報があります。教育は単にICTを使うだけではなく、見えない部分での成長を大切にするべきです。学校の成績だけでなく、人との協力や友人作りなど、多くのスキルを育むことが重要です。社会の変化はチャンスであり、現在が変革の絶好の機会だと考えています。


では情報共有の力として、利用しているさまざまなツールの中から本日は3つを主に取り上げてお話しします。


まずTeamsでは、教員の働き方改革として、教科の先生同士や同じ授業を担当する教員同士がチームを組み、授業で行った内容や良かった点を共有しています。テストや定期考査、小テストなどの情報もチーム内でシェアでき、1人だけで全てを行うよりも効率的に進めることができます。

Microsoft OneNote(以下 OneNote)は授業でよく使います。1クラス40人だと力の差が自然に生じ、知らない英単語があるなど助けが必要な生徒もいます。その学力差を、教師ではなく生徒同士が知識を共有して埋めていくことがOneNoteで可能です。OneNoteは紙のノートをオンライン上で使えるようにしたもので、生徒はそこに書き込むことができます。書いた内容がオンライン上に残るため、後から見返したり、離れた席の生徒が考えたことを知ることもできるのです。

探究の時間にもOneNoteを使っています。高校1年生275人全員を1つのOneNoteに入れることで、全クラスの生徒のノートを閲覧できるようにしました。そのため教員が繋げなくても、生徒同士でクラスの枠を超えて自分と考えが近い仲間を見つけ、共有し、進めていくことができます。生徒たちはSNSに慣れているため、上手に活用しています。


Microsoft Stream(以下 Stream)を使用すると、学年集会や保護者へのオンライン配信が可能です。後からでも見れるため、欠席した生徒に後で説明する手間を省くこともできます。しかも右側に日本語の字幕が表示されるので、留学生や帰国子女など日本語が苦手な生徒も内容を振り返ることが容易です。さらに大切な情報が親にも共有されることで情報伝達の誤解も防ぐことができ、非常に有効に活用できます。


最後は、世界各地と繋がれることが非常に大きなメリットです。マインクラフトなどのゲームや興味があるものを共有することで、子供たちは自然に学び合い、異なる文化や国際交流を体験できます。また、料理や日本語教室、エッセイの共同作成など、さまざまな取り組みがオンライン上で実現可能です。Microsoft ExcelやMicrosoft Plannerなどのツールを活用して計画を立てて、若い世代が協同する喜びを感じていると思っています。


昔は私小説や漫画、ラジオ、テレビ、ゲームなどが教育的に好ましくないと考えられていましたが、現在はその見方が変わっています。英語科の教員としては、特にこれらのツールには助けられています。


ケンブリッジ大学とマイクロソフトが協力して作成した「ENGLISH ADVENTURES with Cambridge」で、生徒たちは英語の勉強を楽しみながらマインクラフトの世界を探求し、自ら新しいものを創造する生徒も出てきました。


ROUNDSQUARE(全世界私立学校連盟)の創設者の言葉「Your disability is your opportunity」にもあるように、コロナのような困難な状況をチャンスに変える考え方が大切です。ICTの活用を通じて新たな変化への好機となるよう、希望を持ち、恐れずに挑戦してもらいたいと思っています。

私は情報やICT関係に特に詳しくはないただの英語の教員ですが、自分で学びながら使い方を身につけることができました。皆様も活用し、情報共有して負担を減らすなど仕事を楽にできると良いと思っています。


学校教育現場へのICT導入によるメリットの話をしましたが、特に私どもは人を育てていますので、マイクロソフト社が目指す人間像や社会像についてお聞きしたいです。

(田中様)マイクロソフトでは、これからの人間像として「Future-ready skills」を提唱しています。これは、児童が将来の社会で求められる力をまとめたもので、以下の6つのスキルです。

①議論し合う力・コミュニケーションスキル:社会に出る際、特に会社に入った場合に重要です。個人の力だけでは限界があるため、いろいろな人と助け合い連携することが必要です。

②コラボレーション能力:協働して何かをする、今後大事になる力です。幼いときからいろいろな考え方に触れてきたかの経験に左右されます。

③好奇心:さまざまなものに対する興味や探求心を育む必要があります。

④計算論的思考:プログラミング的な思考能力で、デジタル化が進む社会でデジタルデータを適切に扱うために必要です。

⑤想像力:新たなものを生み出す力であり、今後も重要性が高まります。

⑥疑問を逃さない思考性:情報が氾濫するインターネット社会において、真偽を見極める力が必要となります。

これらのスキルが必要な理由は、日本が労働生産人口減少に直面しているため、労働生産性を上げる必要性が高まっているからです。平均以上の均一な力を持った生産業向きの人材を育てる昭和的な教育のままでは、世界の中でもかなり低いとされている労働生産性は上がりません。正しい方法や目指す方向を自分で判断し、周囲も上手く巻き込んで大きなことを成し遂げられる人材が今後必要だと考えます。

(松山)田中様、ありがとうございました。未来の子どもたちに必要な6つのスキル、これに繋がる活動ができているかな、と先生方もぜひ振り返っていただければと思います。

私からも田中様に伺いたいのですが、実践例の中でもありましたようにこれだけICTで繋がれる中で、ICTで代替できないものは何になりますでしょうか。

(田中様)ICTで代替できないものは人とのリアルなコミュニケーションであり、それらの場面はなくすべきではないと思います。例えば学校では、友達や身近な大人である先生と実際に触れ合うことは非常に重要です。ただ、ICTを適切に活用することで、人との交流をさらに向上させることができると考えます。

(松山)リアルにコミュニケーションできるからこそ得られるものも絶対にあるということですね。ありがとうございます。

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