「シリーズ 英検活用 あの学校はどうしてる?!」英検の全員受験で英語力を強化!学校一丸となって取り組む『英検まつり』の仕組みとは?
最終更新日:2023年12月15日
いま、英語外部検定(外検)利用入試が盛んになっています。一般受験では外検の級やスコアが英語試験の得点に換算されたり、学校推薦型選抜と総合型選抜では出願資格に指定されていたりと、今後ますます重要になっていくことが予想されています。ケンブリッジ英検、GTEC、TEAP、TOEFL、TOEICなど数ある外検のなかで、もっとも採用されている英検(実用英語技能検定)。そこで国際教育ナビでは「シリーズ 英検活用 あの学校はどうしてる?!」と題し、積極的に英検に取り組んでいる学校や先生方にご取材を実施。学校内での位置づけや生徒への取り組ませ方、授業との関連づけや教員の関わり方など、各校の具体的なアプローチに迫ります!
#2の今回は、佼成学園女子中学高等学校。東京都にある同校は、「国際社会で平和構築に貢献できる人材の育成」を教育理念に掲げ、グローバル教育にも力を入れています。数々の取り組みをしている中で注目されるのが「英検の全員受験」です。学校一丸となって英検に取り組んでいるということですが、具体的にどのような仕組みを作ってているのか、教務部長の二木宏明先生にお話を伺いました。
英語教育を強化し、生徒に自信を持たせるための「英検全員受験」
――御校が英検に力を入れている理由を教えてください。
(二木)本校では、2005年から全校で英検を受験する「英検まつり」という取り組みを始めました。もともと英語教育には力を入れており、そこをさらに強化したいという意向があったこと、そして本校ならではの特色を出せる学校行事を行いたいという思いもあったからです。
英語力を測るには、ほかにもさまざまな検定試験がありますが、国内で一番受験者数が多いことと、大学の入試にも使えるという理由から英検を選びました。
英検というと、英語科が中心となって取り組むのが一般的かもしれません。しかし本校では、学校行事として英検まつりを行っているため、取り組み自体は教務部が中心となり、英語科の教員は英語の実指導に専念してもらっています。
*英検まつり開始前に廊下などにポスターを掲示し、学校全体で「英検まつり」のムードを醸成。その他、優秀者も掲示し、生徒の頑張りを「見える化」している*
――希望者のみが受験する学校が多い中、あえて「全員受験」とするのはどのような理由からでしょうか。
(二木)希望者のみの受験とすると、本当は英語力もあり受験したいと思っていても、「自信がないから」と諦めてしまう生徒も少なくありません。しかし、学校行事として取り組むことで、そういった生徒にも受験するきっかけを与えることができます。英語が好きではなかったけれど、英検を取得することで英語への興味関心が高まり、積極的に授業に取り組むようになった生徒も多いようです。
担任も含め、クラス全体で「英検に向かって頑張ろう」と取り組むため、初めて受験する生徒に対しても「みんなで頑張ろうね」と励まし合いながら勉強をしています。英語力を身に付けるだけでなく、クラス内の連携や友達への思いやりの気持ちが育まれるなど、生徒の内面的な成長も期待できます。
本校は中高一貫校ですので、中学1年で5級を取得し、高校2~3年で1級を取得する生徒もいます。2023年春は中学生222名のうち、英検取得者数は1級3名・準1級12名・2級25名でした。
短期集中で英検だけに集中する「英検まつり」
――「英検まつり」の具体的な内容について教えてください。
(二木)「英検まつり」は、6月と10月の年2回です。試験は土日に行われるので、平日5日間は英検対策期間として集中して勉強し、当日の試験に備えます。当初は2週間ほどかけて取り組んでいたのですが、長年の取り組みを通して要領がつかめてきたため、1週間の短期集中で実施するようになりました。
英検まつりは教務部が中心となって取り組むので、まず私が実施要項を作成し、あらかじめ校内の教員に共有します。例えば6月の英検まつりの場合は、1学期が始まる前に教員と情報共有しておき、4月中に家庭通知として生徒にも配布し、保護者にも協力してもらうようお願いします。
試験当日の土曜日は、午前と午後の2回に分けて、準会場となっている本校で1次試験を受験するという流れです。ただし、準会場で受験できるのは5級から2級までなので、準1級から上を目指す生徒は、日曜日に本会場で受験してもらいます。
また、前回の受験で1次試験に合格したものの、2次試験で不合格となってしまった生徒もいます。このような生徒は1次試験が免除となるので、試験会場とは別の教室で2次試験の面接対策を受けます。2次試験対策には、ネイティブ教員も含めた英語科の教員すべてに出勤してもらい、徹底的な対策を取ってもらっています。
――受験対策として具体的に行っている授業内容などを教えていただけますか。
(二木)英語の授業内容はすべて英検対策に切り替わります。そのほかに、朝に30分、英単語や英熟語を暗記する時間も作っています。2次試験対策として、ネイティブ教員によるマンツーマンのレッスンも行っています。他の教科の教員にも協力をお願いし、この期間だけは宿題やテストを出さないようにしてもらうなど、まさに全校あげて英検に取り組むという感じです。
また、高校3年生の場合、放課後に講習も行っています。本校では、教員による校内講習のほかに、予備校の先生など外部講師を招いて講習室(校内予備校)を実施しているのですが、英検が近くなると講習室でも受験に向けての対策をとってくれています。
通年カリキュラムやICT活用による徹底した英検対策
――英検まつり以外の期間では、英検対策として何か取り組んでいるのでしょうか。
(二木)中学校では、通年のカリキュラムとして英検に特化した「英検授業」も行っています。学年別に取得したい級でクラス分けし、級ごとの対策を取る授業です。高校では、新カリキュラム導入後、論理・表現の授業にネイティブ教員も入り、リスニングとスピーキングの対策に取り組んでいます。英語コミュニケーションの授業でも、教科書の英文法や長文読解に加えて英検に関する教材も取り入れるなど、普段から英検対策をしています。
また、本校には、さまざまな海外研修プログラムもあります。プログラムに参加し、自分の英語力不足を実感したことがきっかけとなり、積極的に上の級を取得しようと思う生徒もいるようです。授業・講習・英検まつり・海外研修プログラムなど、すべてのことが英検に関する興味を引き出す仕組みになっているのではないかと思います。
――御校では早い時期からICTの導入もスタートされていますが、英検にも活用されているのでしょうか。
(二木)本校では、6年ほど前に生徒1人1台のiPad導入を開始し、各授業で積極的に活用してきました。英検対策では「mikan」という英語アプリを活用しています。実は、アプリを提案したのは、生徒なんです。ニュージーランドに留学していた国際コースの生徒から、「良いアプリだから全校で使ってはどうか」と紹介されたのです。教員で検討した結果、他のアプリに比べて使いやすかったため導入を決めました。
英検まつりを始めた頃から、単語学習用の教材として旺文社の「英検でる順パス単」を使用しているのですが、mikanにはこの教材の5級から1級まですべて搭載されているというのも導入を決めた理由のひとつです。
かわいいキャラクターが登場して励ましてくれたり、級ごとに勉強を頑張った生徒のランキングが出たりなど、楽しく、かつ生徒のやる気を刺激するような仕組みになっており、生徒からの評判も良いようです。
英検をきっかけに得られるさまざまな相乗効果
――生徒の皆さんは、全校受験に対してどのような反応をしているのでしょうか。
(二木)本校では、建学の精神「国際社会で平和構築に貢献できる人材の育成」を教育理念としており、「佼成の英語」として英語教育にも力を入れています。その一環として英検まつりに取り組んでいますが、ただ英検を取得することが目的ではありません。英検は、あくまでも教育を受ける中で自分の到達度を測るためのものです。
英検の受験がきっかけで、海外研修プログラムへ興味を持ったり、また、研修に参加したことから英検に積極的に取り組むようになったりと、さまざまな相乗効果も生まれています。
私たち教員も生徒が勉強に集中しやすいような雰囲気を作ってはいますが、生徒自身が、今やるべきことは何かをしっかり理解し、全員で英検を受験するという空気を作ってくれていると思います。
取材・構成:小林慧子/記事作成:白根理恵
「シリーズ英検活用 あの学校はどうしてる?!」
#01:あえて通常授業に組み込まない 1800人のエネルギーを英検に集中させる手法とは
#02:英検の全員受験で英語力を強化!学校一丸となって取り組む『英検まつり』の仕組みとは?
#03:“英検全員受験”という環境が生徒と家庭をワンチームとし、生徒の英語力を高めていく。
#04:国公立志望でも英検は有用! / 和歌山信愛中学校・高等学校
#05:張り巡らされた戦略が切り拓く英検合格への道