【シリーズ英検活用 あの学校はどうしてる?!】 国公立志望でも英検は有用! / 和歌山信愛中学校・高等学校

最終更新日:2023年12月20日

いま、英語外部検定(外検)利用入試が盛んになっています。一般受験では外検の級やスコアが英語試験の得点に換算されたり、学校推薦型選抜と総合型選抜では出願資格に指定されていたりと、今後ますます重要になっていくことが予想されています。ケンブリッジ英検、GTEC、TEAP、TOEFL、TOEICなど数ある外検のなかで、もっとも採用されている英検(実用英語技能検定)。そこで国際教育ナビでは「シリーズ 英検活用  あの学校はどうしてる?!」と題し、積極的に英検に取り組んでいる学校や先生方にご取材を実施。学校内での位置づけや生徒への取り組ませ方、授業との関連づけや教員の関わり方など、各校の具体的なアプローチに迫ります!

#4の今回は、和歌山信愛中学校・高等学校。英語教育の中でも英検の取得に力を入れており、最難関国公立大を目指すコースでは高2の冬の時点でほぼ全ての生徒が2級を取得しています。英検は生徒の英語教育にどのような効果をもたらしているのでしょうか。また、進学校でもある同校において、大学入試対策と英検をどのように両立させているのでしょうか。和歌山信愛中学校・高等学校の藤田 絢香先生にお話を伺いました。

実力を測る目安として、併願校のお守り代わりとして役立つ英検

—— 貴校の英語教育の特色を教えてください。

本校は、教科の中でも英語に特に力を入れています。日々の小テストや課題もスモールステップで、二人三脚の育成型で進めております。「ここからここまでがテスト範囲だからやっておいて」と言うだけでいきなりテスト、ということはせず、単語等は定期考査までの間に小テストという形で日々少しずつトレーニングをしております。また、オンライン英会話やネイティブ教員による授業も取り入れており、マンツーマンやグループワークなど、いろいろな形で英語を話せる環境を作っております。

本校では「ACPアドバンスコミュニケーションプログラム」と呼んでいますが、海外からの留学生に来ていただき、英語で1週間をともに過ごす、校内留学のような活動も特色の1つと考えております。

—— GTECをはじめ、他にもいろいろある中で英検に取り組まれている理由は何でしょうか。学校のプログラムにおいて英検はどのような位置づけですか?

受験者数一つとっても、日本にいる受験生が利用している外部試験の中では英検が8〜9割のシェアを占めていると思います。大学入試で加点対象になるのも、やはり他の検定に比べると英検が一番多いので、生徒には「英検2級を取るまでは受けましょう」と伝えています。また、自分の実力が何級程度なのか、という目安にもなっています。大学共通テストが準1〜2級レベルなので、早くから大学レベルを意識するためにも使わせてもらっているという形ですね。

—— 英検は全員必須で、一斉受検の形式なのでしょうか。

そうやっているクラスもありますね。どの学年かにもよります。高校1年生であれば、1年間勉強して、最後に全員で準2級にチャレンジしようか、みたいなパターンもありますし、中1だと3級はまだ難しいので、中2の終わりに全員で3級受検、と目標に据えるパターンもあります。

—— 貴校が目標に設定している英検のレベルはどの程度ですか?

クラス、コースによっても変わりますが、私が持っている今のクラスが「医進コース」という一番上のレベルで、そのコースで言うと、2級は高2のうちに全員取得しておきたいですね。できるならば高1のうちに取っておいて、準1級を2〜3年で取れたらいいかなという形です。

—— 貴校の生徒の進学先では、準1級を取得していると加算対象になる大学が多いのでしょうか。

国公立では加味してくれるところが少ないですが、逆に私学を受けるときに役立つという感覚です。国公立に集中して受験対策をしていると、私学用の勉強にはなかなか時間が割けないので。

英検がお守り代わりと言いますか、早いうちに取得しておくことで多少気持ちを楽にして国公立に集中できるかなと思いますね。別のコースで、それこそ国公立にちょっと手が届かないという場合は、私学の勉強をして、英検の勉強も並行して、という感じです。

意識の高い生徒には準1級の特別講座も授業外で開講

—— どちらかというとボトムアップを意識されている学校のほうが、私立に行く人数が多いと感じていたのですが、貴校は進学校であるにも関わらず、英検も学校としてちゃんとおすすめされているのはなぜでしょうか。

そうですね、でも特に「英検対策」と銘打って指導をしているわけではないんです。普段の授業をしっかりやっていれば準2級も2級も受かるので、普段の勉強をした上で英検にチャレンジした時に、「私にはこの級の力があるんだ」という自信につながればいいかな、と。

ただ、早い段階で2級取得ができた生徒には、準1級の特別講座も開講しているので、さらに上の級へのチャレンジも積極的に促しています。ネイティブの先生による英検準1級対策講座を、授業とは全然違うところで、土曜日の放課後などに少数で行っています。それも、準1級や2級の難しいものだけで、希望者だけが参加する講座です。ネイティブの先生が自主的に始めてくださったのですが、内容もおまかせでやっています。特にライティングなどは見てくれる人がいないと勉強がしにくいので、そういったもののチェックもしています。

—— だいたい何人ぐらい参加されているのでしょうか。

多くても10人程度だと思います。少ないときは2〜3人ぐらいのときもあります。本当にちゃんと英検を取りたいという意識の高い生徒が参加しています。

ロードマップを示すことが英語に取り組むモチベーションに

—— 普段の授業の実力アップや、大学のレベルを意識するためのアセスメントとして非常に適切であるというお話ですが、その狙いに対する成果としてどのようなことを感じていらっしゃいますか。

先日、私のクラスで個人面談をしたところ、ほとんどの生徒が2級を取得していました。2級は高校卒業程度のレベルなので早い方ではあるのですが、取得していない生徒も「みんな取っているからそろそろ受からないとやばい」という感じで勉強しているようでした。なので、学力がどれだけついているかレベルを測る意味もありますが、それ以上にやる気の部分が大きいかなと思います。

去年卒業した生徒もほぼ全員が2級を取得し、半数以上の生徒が準1級まで挑戦していました。第一志望はほとんどが国公立なので「英検が効いた」とかはあまりないかもしれませんが、併願で受けた私学では準1級を持っているから英語を勉強せずに済んだというケースも実際ありました。モチベーションの波及効果も含め、英検が英語に取り組む動機の一つになっているというのは日々感じますね。

—— お話を聞けば聞くほど、どの学校も英検をやったほうがいいんじゃないかと思えてきます。「受けてほしい」と思っている英語の先生は多いにもかかわらず、受検者数が伸びないのは理由があるのでしょうか?最近は費用がますます高くなってきて勧めにくいという話は聞きますが……。

昨年ぐらいまでは1万円を超えていたので「年度末に1回受けられたらいいかな」という感じにはなっていましたね。そういった声が多かったから今年は少し安くなったのだと思いますが、それにしてもまだ高額ですよね。

声がけという点では、懇談会などでも保護者の前で「また今度チャレンジしようか」と言うようにしています。英検を知らない保護者の方はほとんどいないので、やっぱり英検は強いですよね。

—— 生徒向けの声がけとしては、どんなコミュニケーションをされているのでしょうか?

一応、ロードマップのようなものはあります。私の場合は年度の初めに伝えていて、今持っている中3のクラスであれば「準2級を目指して頑張りましょう」みたいな感じで言っていますね。そうすると生徒自身も自然に「まだ取れてない」とか、どれぐらいの進度で取っていくべきかが分かると思います。

英検は年に3回ありますし、S-CBTも含めるともう年中になってしまうので、全員に1次、2次と全部指導する時間はありません。でも二次試験対策は必ず1人ずつ1回、多い生徒は4〜5回対応しています。

英検は保護者の期待に対する成果を測る、分かりやすい指標

—— 入学者確保のためにも英検に力を入れているという学校の話も耳にすることがあるのですが、保護者の方の英検に対する期待ってどの程度なのでしょうか。

マストではないけれど「プラスアルファでしっかりやってくれてるな」という印象を与えるものかなとは思いますね。「2級を取るまでは全員受けましょう」というのはどの英語教員も言っていると思うので、挑戦した級に合格したら家族でおいしいごはんを食べたり、ご褒美をモチベーションにしたりして家族ぐるみで取り組んでいるご家庭が多いようです。保護者の方々も価値を実感しているのではないかと思います。

保護者懇談では、高1の最後に英検2級を取った生徒のお母さんから「しっかり力を入れて指導してくれてありがたいです」というお言葉も頂きました。保証型というわけではないですが、入学するときの期待として、「この学校に入ったら英検2級レベルまではちゃんとフォローしてくれるな」という印象はあると思います。

—— 入試広報でもその点は打ち出していらっしゃるのですか。

そうですね、英検2級は取れるように、かつ準1級も、という感じです。それ以外にも本当に英語のプログラムが充実しているので、その期待の成果を測るという意味でも納得感があるというか、英検は分かりやすい指標になっていると思います。

—— 最近、さまざまな英検対策のアプリなどもありますが、そういったツールの活用はされていますか?

「速読聴トレーニング」というのをご存知ですか?iPadの「TERRACE(テラス)」というアプリで、英検対策が級別にあるので、それは英検に向けての自主学習に有効かなと思って生徒にもアナウンスしています。

また、iPadには「Brain+(ブレインプラス)」という辞書のアプリが入っているのですが、そこにもいろいろなレベルの単語のリストがあります。英検に特化したものではありませんが、単語力強化のために自主学習で活用することが成果に結びついているかなと思います。メインで何か英検のためのものを使っているわけではありませんが、そういった付属のツールもやっぱり英検に役立つものが一番多いので、その点はお得だなと思います。活用できるものが多いですよね。

—— 英検について、何か今後ご要望はありますか。

単一の選択形式なので、たまに「このレベルでも受かるの?」みたいなケースもあるのは事実です。でも、1次も2次もそんなに偶然が続くことはないので、割と納得感はあります。2級は要約問題が加わるなどライティングの形式がちょっと変わるので、それがどういったものなのかというのは楽しみというか、見てみたいなと思っています。

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