パターンで書ける! FRAME 自由英作文
最終更新日:2022年2月24日
- おすすめしたプロフェッショナル
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安藤亮輔 / 名鉄学園杜若高等学校
パターンで書ける! FRAME 自由英作文
数研出版
- おすすめのポイント
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Q.良かったところ
本書はライティング用教材であるが、「シンプルなイラストを描写する」など、英検やGTECにも対応できるようなものから、「90 words 程度のエッセイライティング」など、内容がバラエティに富んでいる。だんだんとレベルアップするように作られているため、無理なく力をつけていける。また、特におススメしたいのが4コマ漫画の描写をするUNITだ。例えば、One day, a boy is sitting on the bench in the park. という英文の下に、主人公の男の子の様子が4コマ漫画で表される。
①主人公は、公園で犬が楽しそうにボールで遊ぶ姿を見てほほ笑んでいる
②自分の飼い猫を思い浮かべながら、猫のおもちゃをペットショップで購入する
③家に帰った後、飼い猫におもちゃを見せる
④猫はおもちゃに興味を示さず、おもちゃの入っていた箱の中に入って喜んで遊んでいる。
これらを英文で表現する問題である。GTECのスピーキングテストでも、このような4コマ漫画の説明をする項目があるが、なかなか4コマ漫画が入っている教材は少ないため、本書で見つけた時は嬉しく思った。
Q.困ったところや改善してほしいところ
現在、レベルがこの1冊のみだが、もう少しボリュームやレベルを下げたものや、逆にレベルを上げたものがあると良い。そうすれば学年で使い分けたり、指導もさらにしやすくなると思う。
Q.導入の経緯や、本教材採用の意図と狙い
およそ2年前から、自分の担当するコースにて導入している。英作文を書く力は英語力の土台になると考えており、高校で積極的に取り組ませてあげたかった。自由英作文のテーマが豊富で、段階的な練習ができるようなものを探していたが、分厚い参考書のような本ばかりでなかなか良いものに出会えなかった。そんな時、数研出版の方に本書を紹介してもらい大変気に入ったため採用に至った。
問題/課題:
生徒たちを指導する中で課題に感じていたことがあった。それは、生徒たちがクローズドクエスチョン(YES/NOで答えられる質問)にはすぐに答えられるが、オープンクエスチョン(自由な回答を求める質問)に対してはなかなか答えられないことだった。自らの言葉で自身の考えや思いを他者に伝える力は、これから大学へ進学したり社会に出た後で求められる力である。普段の授業内でこれらの力を高めるにはどうしたら良いか考えた際、英作文の指導を強化する必要性を強く感じた。また、実際に英語を書かせてみると、中学初期で習うような基本的な文法事項や単語のミスも多く見られた。これらも英作文を通じて指導していくことが重要だと考えた。
状況(クラスの人数やレベル):
本校の、高2・高3の文理コース(国立、難関私大への進学を目指すコース)にて使用。1クラス30名ほど。2年生文理コースは1クラス、3年生文理コースは2クラスある。
習熟度別で2つのクラスに分け、授業を行う。本書を使うのは主に高2の間で、高3は希望の進学先に合わせて個別に使用している。
他の類似教材ではなくなぜこれか:
徐々にレベルアップできるような内容構成となっている。最初の方は、1つの大きなイラストを描写するところから、4コマ漫画のイラスト描写になったり、グラフについて描写するなど難易度は上がっていく。最終的には90 words 程度で自らの意見を書くエッセイ項目があったりと、大学入試にて出題されるようなライティング問題はひととおり網羅されていると感じる。初めは英語が苦手な生徒でも取り組めるので、本書を使う中で徐々に英作文の能力を高められる。
Q.実際の使い方
【本書の構成】
本書はUNIT1~9で構成されている。UNIT1~6をSentence Writing(イラストやグラフを描写する)とし、UNIT7~9をParagraph Writing(自分の意見を述べる)と区切っている。最後はCHALLENGEとして90 words 程度のある程度長い意見文に挑戦する。 各ユニットの構成は、モデル文を見ながら解説 → 類題で選択肢をそのまま穴埋め→ 選択肢を使って自分で言葉を補って英作 → 完全英作という流れになっている。(公式HPより抜粋)また、コラムとして「理由を表すbecauseの使い方」や「パラグラフのルール」なども載っており参考にできる。
【授業での活用方法】
担当している高2の文理コースにて、週3コマある「英語表現」の授業で使用している。一学期までは教科書の内容を固めることに専念し、本書は一学期の終わりごろから使い始めた。現在は「英語表現」の授業内全ての時間を使って本書で授業を行っている。自作プリントなどは作らず、本書の順番通りに使い込んでいく。使い方としては大まかに以下の手順であることが多い。
①問題の時間制限やおおまかな指導の方針を、教員から生徒へ指導する。
②下書きをし、ClassiNOTE(共有できるクラウドサービス)を使って教員に提出。
③ペアワークとして、生徒は ClassiNOTE上で互いの英作文を採点し合う。
④教員が黒板に生徒の下書きを投影し、注意点等を個別、全体へ指導。良い答案を全体へ共有する。
⑤生徒は別冊ノートに本書きをし、教員へ提出する。
⑥教員は提出されたノートにコメントや添削を行う。
※1UNITをこの流れで学び、授業コマ数は1~2コマ分使用する。
③について:生徒たちは単数形や複数形の間違いなどを指摘し合えるが、時制や文法の間違い、言い回しの間違いなどを採点することはなかなか難しい。しかし、「何となく違う気がする」という違和感を持てる生徒は多い。この違和感を教員へ相談することでそこから議論を広げ、知識を深められる。また、互いに採点させることで、生徒たちは相手の良い表現などを学び合え、表現能力を向上できる。
指導する上での工夫:
英作文といえば添削指導がつきものだが、教員は授業内で添削しすぎないようにしている。 論理立てて書かれているかどうか、内容が伝わるかどうかを重視し、生徒が言わんとしていたことをもっと適切に表現するならばこうしたほうが良いのでは、という助言および提案をするに留めている。また、細かく添削するには、本校に英語ネイティブの教員がいないこ とや、時間的な制約もありなかなか難しいという背景もある。しかし、厳しく添削をしない理由は、生徒たちに「まず、何か書いてみる」という経験を積んでほしいからだ。生徒の中にはどうしても英作文が苦手な子もいる。ダメ出しばかりが続いてしまったら、生徒たちのモチベーションを下げてしまうため、さじ加減を意識している。授業後に提出させる別冊ノートには、授業内の助言をふまえた英文が書かれているので、教員は二度目の、より細かいところを個別に添削し、返却している。
Q.使ってみた結果
本書の効果はまだ検証できていないが、12月に受検予定のGTECにて反映されるのでは?と少し期待している。本書に取り組み始めたばかりの時は、英語を書くことに抵抗があり「何を書いていいかわからない」とぼうぜんとしてしまう生徒もいたが、現在はかなり減った。「何か書く」ということは徐々にできるようになっている。また、授業中も手を動かしている時間が長いので、「あっという間に授業時間が過ぎる!」という声も聞こえた。大学に入るとプレゼンやライティング活動が多くあるが、その際に感じる心理的なハードルが下がるのでは?と考えている。
Q.利用が向いているクラスや生徒
徐々にレベルアップしていける教材のため、万人受けすると思う。初めのUNITは簡単な絵の描写から始まるため、英語が得意な生徒には簡単すぎるのでは?と感じるかもしれない。しかし、実際に書いてみると意外と書けないことも多い。逆に、英語が苦手な生徒であっても論理的でシンプルな良い英文を書いてくることも多い。そんな時は「褒めポイント」も生まれ、声かけするきっかけになる。
Q.あまり合わないと思うクラスや生徒
特にない。
- 安藤亮輔
- 名鉄学園杜若高等学校
プロフィール
愛知県出身。杜若高等学校で勤務を始め、現在9年目。 大学時代は軽音サークルに所属し、ギターを担当していた。現在は軽音楽部の顧問を務める。世界史と英語が好きで、中学時代から教員志望だった。 【最近気になること、興味のあること】 中学英語と高校英語の指導は、他の科…