アクティビティが自然と生まれ、英会話が楽しくなる教科書
最終更新日:2022年8月23日
- おすすめしたプロフェッショナル
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大川稔和 / 近畿大学附属高等学校
Uncover
ケンブリッジ大学出版
- おすすめのポイント
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Q. 良かったところ/こだわり
【Uncover1(CEFR A1レベル)は簡単な英語から始まる】
本校には基礎的な学力を身につけている生徒が入学している。しかし、Uncover1では、be動詞などの基本的な文法を使って実際に話したり、書いたりするところから始める。なぜかというと、難しい文法問題を解くよりも、中学で学んだ文法を実際に使って、自分について表現することを重視しているためである。
【自分の体験と関連づけながら視野を広げられる】
また、Uncover1はトピックや題材が、学校の出来事などを扱っているため、英語で話すことが苦手な生徒でも、自分と関連づけたり、表現がしやすいところも良い点の1つ。Uncover2(CEFR A2レベル)、Uncover3(CEFR B1レベル)になると、海外の社会的・文化的な内容を豊富に取り扱う点である。自分の日常と海外を比べられ、視野を広げられる内容になっている。
【英語力が上がる教科書構成】
1時間の授業で必ず、4技能の「聞く(リスニング)」「話す(スピーキング)」「読む(リーディング)」「書く(ライティング)」を使う構成になっていて流れがとても綺麗。
ページの最後には、「YOUR TURN」というコミュニケーションのためのアクティビティが織り込まれているため、英語でのペアワークやグループワークが自然とできる。
また、教科書のレベルが上がるにつれて、自分だけでは答えが出せなかったり、答えが複数あったりするような思考力を問う内容になるため、他の人の意見を聞いて、伝えるという機会が自然と生まれる。
【生徒の知識の幅が広がる動画】
「Discovery EDUCATION」という3〜4分程度の付録のビデオがあり、教科書のトピックに合わせて、日本の生徒たちが普段触れる機会の少ない関連情報を提供している。例えば、天気のトピックの際は、北極など気温が極端に寒い地域に住んでいる部族の話を紹介して、「生徒自身の生活と比べて、類似点と相違点」に関する問いかけができるようになっている。
動画で見た内容と自分たちの生活を比較したり、新たな疑問が生まれたり、生徒が知らない文化や科学などについても触れることができるので、知識や興味の幅が広がる。
動画を使用するタイミングは教科書に記載されており、授業の中で教科書に沿って使用している。
Q. 困ったところ
【教員に向けた研修の徹底が必須】
本教材は、教師が説明をせず、生徒にアクティビティをさせる作りになっている。設問も含めて全て英語で書かれているのを、一語一句説明しようとすると、生徒たちの力が伸びず、教科書の目的と合わなくなってしまい本教材の良さが最大限に活かせない。そのため、「教師が説明しない」・「生徒が学びの中心」となるための教員研修を徹底的に行う必要がある。
コミュニケーションが主体の教材のため、教員研修では、授業の演出方法、生徒たちが言語項目を理解しているかを確認する質問(CCQ:Concept Checking Questions)、活動の理解を問う質問(ICQ:Instruction Checking Questions)の作り方を扱う。 現在は、年に2〜3回、ケンブリッジの資格を持つ教員が校内研修を担当している。。本教材の正しい使い方を学ぶことを負担に感じる教員もいるが、時間をかけて、研修していく必要がある。。
Q. 導入の経緯
5年ほど前に、実践的な英語指導をするために、ケンブリッジのプログラムを導入したいという当時の教頭の提案からスタート。英語教師資格のCELT-SやCELTAという資格を英語科教諭が取得し、、グローバルスタンダードな言語教育を提供できる環境を整えた。、日本語に逃げない「英語のみの海外の教科書」であるケンブリッジ大学出版の教材を使うことで、より効果を高めようと営業担当と何度も打ち合わせをして、本教材を採用した。
Q. 実際の使い方
使用しているクラス:
学校全体のクラス規模としては、40人前後のクラスが、各学年27〜28クラスある。
そのうち本教材を使用しているのは、1年生が 16クラス、2年生が16クラス、3年生が14クラスで、主に近畿大学に進学するコースで使用している。
教材の構成:
レベルやユニットに関わらず構成は全て同じである。まず初めは、ユニットに関する写真があり、Introductionとなっている。次に、Vocabulary、Reading、Readingに関連するGrammar、Listening、Listeningに関するGrammar、トピックに関連したConversation、EmailやBlogなどのWriting、Readingという順に構成されている。
授業の流れ:
教材に記載の通りの順番で授業を進めている。Discovery Educationやアクテビティも前後の学習とつながりがあるため、教材に記載のタイミングで必ず実施している。1時間の授業で1ページ進め、1つのUnitに対して約8時間使用し、全部で10あるUnitを各定期考査までに2つずつ終わるように進めていく。
まず、導入では、その日の授業で扱う題材を連想させるような問いかけをし、時間制限を設けてペアで話し合いをしてもらう。その次に、生徒を個人指名して意見をクラスで共有したら、本題に入っていく。
例としてVocabularyのページでは、次のように進めていく。
①、写真と単語をマッチさせる問題を時間制限内に1人で解き、その次に生徒同士で答えをシェアをする。
②答え合わせは教材に記載のとおり、音声を聞いて確認する。
③Vocabularyの意味・接頭辞や接尾辞などの型・発音やアクセントを一つ一つ確認していく。その際は、アクセントの位置がわかりやすいように、手を叩いて伝えている。
④スペルの確認をする。例えば、題材が教室だった場合は、実際に教室にあるものを指で差して、スペルを書いてもらう。。
⑤題材が教室の場合、関連したWordが、他にどのようなものがあるかを問いかけ生徒に答えさせる。
⑥最後にその日の授業で学んだ単語を活かしたSpeakingの活動を行い、自分のことを話させる。
授業の工夫:
この教材は教師の力量によって、授業のやり方や、生徒の身につく力が変わるため、次のように多くの工夫をしている。
①グループワークや、ペアワークが授業の中心。。グループワークのメンバーは、アクティビティによって変えることもある。
②Reduce TTT(Teacher Talk Time:先生は喋るな・生徒に喋らせる)を実現するために、生徒から現在や、過去の経験を聞き出して生徒中心の授業作りをしている。
③Grammarの説明をせず、講義形式にならないようにすること。
④教室内の言語は英語を豊富に使う「English Rich」な授業をすること。
⑤扱う教材や、トピックについては生徒が興味を持つような内容で問いかけること。中でも食べ物関係のトピックは人気で、日本のキャラ弁に関するトピックが出た際には、「日本のキャラ弁ってそんなにすごいんだ!」と生徒から新しい発見に対して声が上がった。
これらの工夫を活かすために、授業準備では、どのような活動を行うか、どんな問いを投げかけるかを考えている。
Q. 使ってみた結果(英語特化コース)
本教材を導入後は、TOEIC の成績が伸長。78人中900点台が3人、800点台が10人、700点台18人と上位層が特に増えた。平均点は入学時の346点から、卒業時には662点まで伸びた。
英検の成績結果としては、1級に2人、準1級に14人、2級に44人が合格し、人、準1級のライティングに関しては満点が2人いた。。
本教材を使用し始めて5年目であるが、、使用し始めた1期生は、世界のTOP200に入る大学に3人進学した。
また、生徒からは、「英語を使ってのペアワークが多いので、普段話すことが少ない友達とも、話す機会ができて楽しい」「文に感情を込めて話すことができるようになった」「わからないことは生徒同士で説明しあったり、聞いたりできる環境なので英語への理解が深まった」などと英語に対しての興味・関心が高くなったことが窺える。
Q. 利用が向いていると思われる学校・クラス・生徒
コミュニケーション能力を育成したり、世界の言語教育レベルに合わせたい、多くの文化や社会に触れさせたい学校やクラスに合っている。
また面白いことに、英語でのコミュニケーションが苦手な生徒でも、コミュニケーションをせざるを得ない環境づくりや、ちょっとしたアドバイスで英語力が身についていくため、生徒の得意不得意に関係なく利用できる。
Q. 個人的にあまり合わないと思う学校・クラス・生徒
分詞構文など難易度の高い文法は、Uncover1〜3では扱わないため、日本の大学を目指す生徒や、学校には合わないかもしれない。
ただし、補足する教材を工夫すればこれらの課題も解決できると個人的には思う。
- 大川稔和
- 近畿大学附属高等学校
プロフィール
大学卒業後、アデレード大学大学院(オーストラリア)で応用言語を学ぶ。帰国後は、立命館中学・高等学校や追手門学院高等学校(英語科主任、国際教育 主任)で勤務。退職後、大学や企業のTOEIC講座講師を経験をし、近畿大学附属高校に勤務し英語特化コースを担任。在職する…