Next Stage 英文法・語法問題 4th Edition
最終更新日:2022年12月20日
- おすすめしたプロフェッショナル
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原 健一 / 茨城高等学校・中学校 国際教養コース長
Next Stage 英文法・語法問題 4th Edition
桐原書店
- おすすめのポイント
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Q. 良かったところ
英文法・語法・イディオムの総復習教材。日常会話表現も含めて「1冊ですべて済む」というのがとてもありがたい。複数冊あると、生徒は焦点が定まらないし、時間も限られるため、コンパクトにまとまった本書は非常に良い。
これ1冊をやれば、全体の「見取り図」ができて、文法・語法が頭の中にひととおり納まるようになる。紛らわしかったり混乱しやすい項目が奇麗に整理されているところもメリット。例えば、「似たような意味をもつ形容詞」などを解説するまとめの表がたくさんある。大学入試で合格点を取るための基礎となる最重要の表現に絞って書かれている。イディオムも、代表的な最重要表現がほぼ網羅されている。
Q. 困ったところ・改善してほしいところ
・見開き右側の説明については、「少し分かりづらい」という声もたまに聞く。
・最終章の発音のまとめなど、センター試験時代のままの内容・構成になっている箇所がある。
・イディオムパートがほぼ「片っ端から羅列」になってしまっている。最重要のものを先に厳選して、やや上級向けと別にしてほしい。英語が苦手な生徒は全部を覚える余裕がない。羅列だと、最重要なものがなかなか定着しない。最重要熟語を500~700くらいに厳選する形式にしてもらうとありがたい。
・熟語の選別やまとめ方で、若干違和感のあるものが混ざっている(この熟語も入れてほしい、この熟語はやや不要というものが少しだけある)。
Q. 導入の経緯など
導入時期は10年以上前。文法・語法・熟語などを総合的に定着させるための教材として導入した。
おそらく本書はこのような教材の先駆者的なものの一つだが、現在はさまざまな類書が数多く出版されている。だが、今でも本書が1番バランスが良く「ベター」だと思う。
10年前からほとんど改訂されておらず、内容自体は昔のままで、長年使用してるので内容的には前述のように細かな不満もある。しかしその点を差し引いても、現在でも通用するバランスの良い構成であり、その点で本書以上のものが今のところ見当たらない(どれも一長一短)。この種のもので「決定版」がない中で、本書が全面改訂されるか、より良い別の参考書が出てくるのを待っているところではある。
また、この10年間使い続けているので、本書を習得させるための自作教材を蓄積していて、それらが便利であるため使い続けている、ということも、理由の一つである。状況(クラスの人数やレベル):
レベルでクラスを分けており、1クラスは20名~40名台。地方国公立大や私立大を目指す生徒~国立私立最難関大を目指す生徒まで在籍している。高校1~2年で全員導入し、高3まで使う。授業外の自主学習用教材として使用し、月1回の小テストで範囲を指定して、内容の定着を確認していた。
Q. 実際の使い方(進め方)
・高1~2で導入して、小テストなどで範囲にしながら、2~3年かけて習得させる、というパターンを、ここ10年くらい多くの学年で続けている。
・本書は項目が1500くらいある。本書に限らず単語集や熟語集はボリュームがあるため、短期間では習得できず、1年半~2年くらいはかける必要がある。理想は高1から、遅くとも高2の初めくらいには着手したい。・複数年使う中で、小テストのペースとしては2周はできるように組んでいる。やり込む生徒は、本書を3周とか4周とか繰り返し行う。
・基本的には授業内では使わず、自主学習で使い、テストで確認をするという使い方。学校で小テストを課すような形でペースを作ってあげないと、なかなか多くの生徒はやり切るのが難しい。
・テストは、週1回あるロングホームルームの時間内に15~20分ほど使い、月1.5回くらいの頻度で実施。1回のテスト範囲は200~300項目分くらい。
・本書の全項目を穴埋めで学習できる独自教材を自主制作(下記参照)。記号だけだと覚えづらいので、生徒は穴埋め式で重要表現を書いて覚えられるように工夫した。その方が定着率が良い。
・小テストは、選択式記号問題と穴埋め問題を半々くらいの割合で混合させて作った。英語が苦手な生徒は、穴埋めを全て覚えるのは大変なので、少なくとも選択肢からは選べるようにする。上位者は、ほぼ穴埋めができるようにして、それを英作文の力に生かせるように意図した。その両方に対応できるように、半々にしていた。・小テストは教員側で採点して返却。生徒は各項目をテキストを見て再確認する。
指導する上での工夫:
どうしても本書のようなタイプの問題集は、記号の選択問題がほとんどのため、繰り返しやっていると「答えを覚えてしまう」という弱点がある(この点がかつての「即戦ゼミ3 大学入試 英語頻出問題総演習」と異なる)。
その弱点を補うため、本書のほぼ全部の問題・全英文を、穴埋めで学習できる独自教材を作成して冊子化し、それを利用して生徒に学習させた。全英文を穴埋め問題にして書き込み式で学習することで、学習しやすくした。記号問題形式のテキスト自体で学習した後、内容が少し頭に入っている状態で、独自教材の穴埋め式問題集に取り組むことで「書いて覚える」形で学習しなおすことができる。この独自教材は、見開きの左ページが穴埋め問題だが、右ページには解答が書いてあるので、英語が苦手な生徒でもできるようにした。さらに、日本語訳を見ながら英語部分を全部隠すことで、英作文の学習としても利用できるようになっている。
この独自教材は、「覚えやすい」ということで、生徒には大変好評だった。ただし問題数が多いために、習得するには2年以上はじっくり取り組む必要がある。このように独自教材を利用して補う形で、ここ10年ほどは本書を使ってきた(なお、桐原書店では本書の副教材もいくつか出しているので、それらの中にも利用できるものがある)。Q. 使ってみた結果
文法・語法・熟語の整理教材として、一定程度以上の成果をあげていたと思う。生徒との会話の中で「Next Stageにこう書いてあったよね」「この表現は〇〇番で出てたよね」という話題に出しやすい。生徒自身からこのような言葉が出てくることがよくあった。テキストは「プラットフォーム」であり、それを共有するコミュニティーが存在することが重要。生徒同士の間でお互いに話題にし合うことで、教材が「プラットフォーム化」し、その結果として、生徒たちが総合的にいろいろな表現や語法を習得する「コミュニティー」が作れたのが、一番の効果だと思う。
Q. 利用が向いていると思われる学校・クラス・生徒
共通テストから文法問題が消えたので、文法・語法・熟語の学習の重要性が低下したと思われるかもしれないが、中・上位の大学を狙う受験生にとっては、いまだに必須の学習である。全ての受験生にとって、お薦めできる教材だと思う。
Q. 個人的にあまり合わないと思う学校・クラス・生徒
英語が特に苦手な生徒には、イディオムがやや量が多くて、覚えきれないことがあった。どれが重要で、どれがさほどでもないのかという区別がつかず、全部覚えようとすると、最重要表現も定着が悪く、うまくいかないと思う。
- 原 健一
- 茨城高等学校・中学校 国際教養コース長
プロフィール
30代で英語教員になった後、私立中高一貫校に勤務して約20年になる。一橋大学社会学部・同大学院言語社会研究科修士課程修了。中1~高3という6年間のスパンで、継続して同じ生徒を教える経験をした後に、現在は主に難関大学受験に特化した指導をしている。同時に、オンライ…