教授資料が充実!授業内解説を付属動画に任せてアウトプット活動が増やせる「英語コミュニケーション」の教科書
最終更新日:2022年11月15日
- おすすめしたプロフェッショナル
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脇淵良太 / 松商学園高等学校
BLUE MARBLE English Communication Ⅰ
数研出版
- おすすめのポイント
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Q. 良かったところ
教科書の左側が本文で、右側に「書く」「話す」がすべてパートごとにまとまっているので、左側で情報を整理して、右側ですぐにアウトプット活動ができる構成がとても扱いやすい。
アウトプット活動もやりやすく工夫されている。例えば、本文の文章を要約するリテリングの問題では、白紙状態からではなく、写真や書き出しなどのヒントが与えられている。リテリングの利点は、本文内容を丸暗記ではなく自分の言葉で再構成するところ。持っている語彙の中で、自分のレベルに合わせて学んだ内容を復習できる良い活動だと思うので、やりやすくて助かる。
各レッスンの本文が、パートごとより全文が先に掲載されているという構成も良い。レッスンごとの構成は、最初に写真などの導入があり、その後の本文の載せ方が教科書により違う。本文をパート1パート2のように4つくらいに分けて載せた後に全パートを掲載するものもあるが、本教材は全パートが先でその後にパートごとという順序なので、最初に全体を通読できる。
共通テストでも、最初に長い文章があり、それを段落ごとに読んでいくのが普通。教科書で言うと、その段落がパートに該当する。共通テストは、高校の英語教育の最終的なゴールの一つではあるので、同じように、最初に全体像を見せてこれだけ読むのだと把握した後でパートで区切っていくという読み方がしたい。そのように本来の文章の読み方と一致することも、本教材を選んだ理由の一つでもある。
教授資料が充実しており、「進め方」で後述しているように教員が欲しいと思うものが最初から準備されている点も良い。
Q. 困ったところや改善してほしいところ
特になし
Q. 導入の経緯や、本教材採用の意図と狙い
問題/課題:
2022年度から高1のみ、特進コースと文理コースに導入。それまでは三省堂さんのCROWNを使用していたが、新カリキュラムになるにあたって比較検討した結果、本教材を選択した。
今まで本校はオーソドックスな「読む」「聞く」のインプット型の授業が多かった。様々な改革のなかで時代の流れに沿って「話す」「書く」のアウトプット型へ移行しようとし始めたところなので、教科書の中でどんな風にアウトプット活動をする設定になっているかを重視した。
状況(クラスの人数やレベル):
本教材を使用しているのは、特進コース(各20名で2クラス)と文理コース(1クラス40人弱で5クラス)。受け持っているのは、特進コースの2クラスで、国公立大学や難関私立大学を目指すレベル。
他の類似教材ではなくなぜこれか:
本教材を導入した特進や文理コースは、最終的には国公立大学や難関私立大学を目指すコースなので、教科書の本文のレベルが、ある程度共通テストなどに対応できる内容であることが必要。そのため、三省堂さんと数研出版さんそれぞれの一番上のレベルの教科書を比較し、アウトプット活動のやりやすさの面で本書を選んだ。新カリキュラムでは全体的に各社対応しているが、本教材は一番やりやすい構成だと感じたことが決め手だった。
内容についても、各社似てはいるが、本教材はSDGsに関係しているものが基本的に取り上げられている。今の時代どこかで学ばなければならない内容なので、教科書で扱われていれば、その授業を通して合わせて確認できて良い。SDGsは各社取り扱っているが、内容を確認してみて、テーマや内容が、扱いやすく話しやすく、学ぶべきだと感じるものが多かった。
例えば、SDGsの3・11・13、なかでも特に11(持続可能な都市づくり)に関係した「レッスン4:独特な方法で行動を変える、人の行動をデザインで変える」では、街中の標識が出てきて、普段目にしているものなので生徒が理解しやすかった。レッスン4には他にも、棚のファイルなどを順番通りに並べてほしいときに、揃えればつながる線を背表紙に引くだけで人は揃えたくなる、のようなデザインでの解決事例も。普段は見てはいないがこんな考え方もあるのか、という学びもあり反応が良かった。
Q. 教材の構成(全体構成、単元ごとページ構成)
全体で10レッスンと、オプショナルレッスンが2つある。8レッスンは基本的に実施した方が良いもので、レッスン9〜10が進度調整用、さらに進度が早い場合用にプラス2レッスンのオプションがついている。
各レッスンの構成は
導入活動
本文(全体)
本文(パートごと)
各パートの要約・リテリング、関連トピックについて自己表現活動
本文関連の別素材を使ったリスニング・表現活動
言語活動習得のための差し込みレッスン
本文(パートごと)の部分は、前述のとおり、左側が本文で、右側が書く・話すなどのアクティビティ。
Q. 実際の使い方 (どこを、どの程度のペースで等)
進め方(年/学期単位、授業単位):
本教材を使用する授業は、週に4コマあり、1コマは1時間。
進度は、順調なときで2コマで1パートという考え方。基本的に3〜4つのパートで1レッスンなので、1レッスンを4パートだとすると合計8コマ(8時間)。つまり、順調にいけば2週間で1レッスンが終わるという進度。ただ、順調にいくときばかりではないので、パートごとの難易度の違いにより、順調に2コマで1パート進むこともあれば、そうではないときもある。今のところの実際の進度は、平均すると3コマで1パート進むくらいだと思う。
年間計画としては、学期ごとに中間と期末、最後に学年末で年に計5回のテストがあり、テストごとに2レッスンの割り当て。現在2学期の中間テスト前で、3回目のテストに向けてレッスン6をやっているので、順調なペース。年度末までにレッスン8までは進めそうで、レッスン9~10かオプショナルレッスンを進度により春休み課題に回すようなかたちで1冊を終わらせることになりそう。
授業の進め方は、まず新しいパートに入ったときに、新出単語とそれが使われているフレーズが出てくる。この単語とフレーズを使って、英作文をさせるよりは、会話をペアでさせている。単語やフレーズをある程度自分で使える形になったうえで、本文の解説をする。
順調に進めば1コマ目の授業で1パートの左側のページを終わるが、途中で時間切れになった場合は次回その続きをやるかたち。
左側が終わると、右側にあるアクティビティで本文の内容を整理してリテリングなどをする。これは早くて2コマ目、遅くとも3〜4コマ目、平均すると3コマ目くらいで終わる。
教授資料内の、ナビゲーションブックとワークブック、教科書解説動画も併用している。教員がGoogle Classroomで配布し、生徒は都度予習や復習のときにそれらを使う。解説動画では、文法的な解説や単語の語源の話など細かい説明がされており、ここがsでここがvのような従来板書で説明する内容を、生徒は必要なときに動画で見ることができる。生徒がしたいと思ったときに都度使えるように、材料をGoogle Classroomで共有している。
単語テストは単語帳を持たせて朝のホームルームで都度実施しており、本教材ベースではやっていない。
生徒は授業の中でのICT利用はたまに使う程度で、教員側はデジタル教科書の本文をプロジェクターで投影して書き込んだり示しながらの説明を毎時間やっている。黒板の半面をプロジェクターで映して、もう半面で簡単な文法解説をすることもある。しかし、基本的には教科書ベースは投影して黒板は使わずに授業をする。
指導する上での工夫:
指導対象は国公立大学などを目指す生徒たちなので、字面だけを追って左から右に読むのではなく、縦の論理的なつながりを意識して指導するようにしている。例えば、本文中どのワードとワードが対応しているか?指示語が何を指しているのか?一方ではプラスのことを言って、もう一方ではマイナスのことを言っているのは、こういう縦のつながりがあるよね、などを解説する。英文は横書きなので「縦で文章を読みましょう」という話をよくしている。
SDGsという世界の関心事に関連した内容がたくさん出ているので、関連させて英語を聞く機会を増やすこともしている。週4コマのうちの1コマで余裕があるときは、ALT教員に授業に来てもらい、そのとき学んでいるテーマについて知っている内容を話してもらう。
Q. 使ってみた結果
アウトプット型の活動が、圧倒的に授業中にやりやすくなっていると思う。ページ構成のおかげでもあるが、解説動画があるので、今まで教員が授業中に行っていた解説全部を説明する必要がなくなり、その分アクティビティにより時間をさけるようになったという変化の結果でもある。
導入後間もなくてまだ数値的には出ていないが、先日の記述模試の際に、例年は空欄で出す生徒も多い英作文パートを書いている生徒が多い印象があった。本教材で英作文の機会が増えたと思うので、その影響かもしれない。記述する英作文は、本教材にも問題はあるが、基本的には「論理表現」の授業に任せて「コミュニケーション英語」ではスピーキングを重視しており、英作文の能力が上がったのかどうかは「論理表現」との絡みもあると思う。ただ、生徒がやりがちな新出単語の意味だけを調べて終わりではなく、単語やフレーズを使えそうなシチュエーションを自分でイメージして、ペアで実際に使って会話することで、アウトプットする機会が増えた。生徒たちのような初級者は特に、頭の中で一度考えて瞬間英作文をしていると思うので、結果的にペアでの会話活動も英作文の能力向上につながった可能性はあると思う。
また、本教材に限らず新カリキュラム全体的な目玉として、教材から音声再生ができるようになったので、CDデッキを持ち運んで授業中にCD再生する手間がなくなったことは、とても負担軽減になった。
Q. 利用が向いていると思われる学校・クラス・生徒
比較的高レベルな内容なので、国公立大学や難関私立大学を志望する生徒
Q. 個人的にあまり合わないと思う学校・クラス・生徒
中堅私立大学や専門学校を目指すような生徒は、難しくて苦戦するかもしれない
- 脇淵良太
- 松商学園高等学校
プロフィール
2012年~松商学園高等学校 英語科。2014年信州大学大学院人文科学研究科修士課程を修了。専門は英語学・認知言語学。2022年現在、松商学園高校英語科主任。特進コースを担当。