入試や英検にも役立つ、時事英語や背景知識が学べて国際的視野も広がる!世界のニュースから英語と世界を学べる教材
最終更新日:2023年3月22日
- おすすめしたプロフェッショナル
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岩谷 奈美 / トキワ松学園中学校・高等学校
CNN Workbook Extended Course
朝日出版社
- おすすめのポイント
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Q. 良かったところ
オーセンティックなニュース音声とゆっくりなスピードで聞き取りやすい音声の2パターンがあり、使いやすい。
メモを取るなど大まかな内容を把握 → 次は細かな内容を把握 → ニュースに関する自分の考えを表現する、のような流れで、授業を進めやすい構成。
スクリプトもあるため音読もでき、特に3技能について色々使える(リスニング、スピーキング、ライティング。文章が短いため、読解力という意味でリーディングに寄せたい時は関連した長めのニュースを別で用意して取り組むこともある)。
副教材のような付属データも充実している。長い版の元記事や、動画もあるため各ニュースを学んだ最後には動画でCNNニュースも見ている。
今年のものには、教材内には入っていない初見のニュースが定期テスト用として幾つか入っている。短いパッセージのスクリプトのような、ディクテーションなど色々に使える教材も多い。使いこなせているわけではないが、さまざまなデータがあり、色々な使い方ができ、とても便利。
困ったところや改善してほしいところ
大体2年くらい前のニュースなので、もう少し最近のニュースが入るとありがたい。
Q. 導入の経緯や、本教材採用の意図と狙い
問題/課題:
5年ほど前に導入した。背景として、時事英語に日常的に触れてほしい、よりオーセンティックな英語に触れてほしいという考えがあった。GS(Global Studies:学校設定科目。ネイティブとチームティーチングでのAll English授業)でも少しやるが、ニュースを扱う頻度は限られるため、足らないと感じていた。本教材はCNNそのままの音声が使えるため、時事英語に取り組むにはとても使いやすいと思った。時事的な内容は大学入試でもかなり出題されているため、背景知識を英語で入れる意味でも便利な教材。短いニュース記事ではあるが、それを入り口として世界で起きていることに目を向けて国際的視野を広げてほしい。
状況(クラスの人数やレベル):
高2の文系特進と理系が混合のクラスで使用。1クラスしかなく、現在31名。レベルは、ほぼ全員が英検準2級が取れており、クラスの3分の2以上は高2中に英検2級を取得している状態。他の類似教材ではなくなぜこれか:
類似教材は無い。採用理由は、出版された頃にたまたま当該出版社主催のセミナーに参加したこと。先行導入校の様子を聞き、本校でも使えそうだと思った。帯活動のように毎時間10分取り組む事例や、膨らませてディベートやライティングに繋げる事例が発表されていて様々な使い方ができる点に魅力を感じた。スクリプト・単語・アクティビティが揃っている教材が他になかったのでちょうど良い教材でもあった。それまでも同じ出版社の市販教材『CNN English Express』を授業内で使っていたが、単発で周辺教材準備も自力なので、高校生向けの本になっていれば教員の負担も減りやりやすいと思った。本教材(『CNN Workbook Extended Course』)の他にも、姉妹教材として『CNN Workbook Intensive Course』と『CNN Comprehensive Trainer』があるが、違いはレベルというよりも掲載ニュース数とニュースのタイプ。『CNN Comprehensive Trainer』は内容が理系寄りのため、クラスの半分以上が文系という本校の導入対象クラスには難しいだろうと除外し、最初はニュース数が10個の『CNN Workbook Intensive Course』を導入した。もう少しやっても良いと思ったので、その後はニュース数20個の本教材を使っている。
Q. 教材の構成(全体構成、単元ごとページ構成)
20本のニュースを収録。ニュースの書き起こし以外に、ニュース内容に関するfact-finding questionが3題、ニュース内容に関して自分の意見を書くessay questionが1題掲載されています。
探究型論文作成ガイド(SDGs対応)、学習者の自己評価用Reflection Sheet付き。
付属品(音声データ、別冊「解答・解説」、充実の指導用データ、動画含むダウンロードコンテンツ)
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Q. 実際の使い方 (どこを、どの程度のペースで等)
進め方(年/学期単位、授業単位):
週1回、CNNの日と決めて1時間かけて1つのニュースに取り組む。ただ、行事や試験範囲との兼ね合いで本教材ができない週もあるので、大体1年で1冊(ニュース20個)がちょうど終わるペース。進め方は、最初はある程度スタンダードな使い方をするが、年度が進むにつれて少し違うやり方に変えたり、ニュースによっても変えたりしている。
■一番基本的な進め方
①何も見ないで、ナチュラルスピードのCNN音声を聞きながら、できるだけメモを取り、どんな単語が聞き取れたか試す
②少しゆっくりなスピードで聞いて、大まかな内容を理解する
③もう少し聞いて、内容についての選択問題を解きながら詳細も聞き取れるかを確認
④まだテキストは見ずに、ディクテーション
⑤ディクテーションの答え合わせをしながら、スクリプトを確認
⑥音読(時間があればシャドーイング)
⑦関連事項についてペアでお互いの意見を言い合う
⑧言い合ってから最後に自分の意見を書く
⑨回収し、添削して返す■メモの取り方を変える(出てきた単語の重要度に気付けるか)
学年の最初の頃は「聞こえてきたものは全部メモを取る」形で、クラス全員でシェアしていた。最近は「10語だけ書いていい」「一番重要だと思われる8語を書く」のように語数制限を与えている。ただ「メモを取る」だと、とにかく耳に入ってきた単語を全部書くだけなのであまり考えないが、語数制限があると、どの単語が一番重要かを聞きながら考えて、より内容に注目するようになる。「ニュースを理解するためにどの単語が重要か」を考えて、聞こえた単語に優劣を付けながらメモを取る必要がでてくる。■ディクトグロスやライティングをグループで
音声を聞いた後、それぞれ重要だと思う単語を持ち寄り、ほぼ同じ内容のニュースを自分たちの言葉で再構築できるか、のようにディクトグロスに繋げて少しライティングに力を入れる時もある。本教材はリスニング教材だが、一切リスニングせずにライティングに使うことも。最初に「タイトル」「教員が選んだキーワード」「写真1枚」だけが載っているプリントを渡し、グループで話し合いながら、キーワードを使ったニュースを作る。例えば「10. 地雷探知に貢献のネズミに金メダル!?」では、ネズミの写真と重要な単語だけを与えた。ある程度予測がつくものでないとライティングまでいかずに止まってしまうので、「ネズミが探すのかな」「嗅覚を使うのかな」のように推測がつきそうな情報を幾つか出した。与えられた情報から類推したニュースをグループごとに書いてロイロノートで提出し、全員で各グループの提出内容をシェアする。
大体同じニュースになるようにキーワードを出しているが、ニュースのどこに注目するかや膨らませ方の多少の違いによって色々な表現があると見ることができる。最後にリスニングしてスクリプトを見て「CNNが言いたかったニュースはなんだろう」「大体合っていたね/ここは違ったね」のように振り返る。最後は回収し、文法や表現など詳細も添削をして返却する。
■簡単なディベート
リスニングを少し軽めにして、最後のディクテーションを必ずしもテキストに載っている内容ではないものを扱ってディベートに発展させることもある。例えば「9. BLM運動の波 NFLチームが差別的名称を変更」は、アメリカンフットボールチームのマスコットが、モチーフとなったネイティブアメリカンにとっては差別だと批判され、変えざるを得なくなったというニュース。伝統文化と新しい価値観の対立の話だが、本校は女子校なので、正直生徒はあまりアメリカンフットボール自体に興味がない。
そのため、テキストはさらっと進めて、最後のExpression(ニュースに関連して考えてみようという質問項目)のところをアレンジして、他から探してきた相撲のニュースを使った。地方巡業の際に男性市長が土俵で倒れて、見に来ていた女性の医師と看護師が土俵に上がって救命措置をした際「女性は土俵から降りてください」という相撲協会のアナウンスがあったというニュース。その後も、明石市の女性市長が、決まりだからと土俵で挨拶できずに別の場所で挨拶していたニュースもあった。「女性だからといって、同じ市長なのに土俵に立てないのは悔しい。文化の伝統は大事にしたいが、新しい価値観にも対応していくべきじゃないか」のような挨拶。これらのニュースを「降りろ」という声やヤジが飛んでいるような騒然とした様子の動画を探して映像で見せて「皆さんはどう思う?」と議論した。様々な意見が出て、生徒たちなりに色々考えていた。
指導する上での工夫:
出版社の教材の趣旨とは少し違うかもしれないが、広く言うと探求のような授業をしている。色々なタイプのニュースがあるので、地雷探知ネズミのように想像しやすいものではライティング、物議をかもすような内容のニュースではディベート、など内容によって使い方を変えている。
ディベートを取り入れている理由は、英語学習に限らずニュースをヒントに、反対意見も含めた他の生徒の意見も聞いたうえで、ではどうしようかと自分自身の考えを持てるようになってほしいから。隣に座っている生徒とも価値観が異なるので、考えを一緒にする必要はないと思うが、英語でやり取りをしながら、違う考えを持った者同士がどう妥協できるか、どう協働していくかという心にも繋がっていく。
生徒たちのディベートはできるだけ英語でさせるが、上手くできるかは学年やクラスで多少差がある。ただ生徒たちは一生懸命やる。なかなか言葉が出てこなくても書かせるとしっかり意見を書いてくる生徒もいるので、必ずライティングは回収して、教員が添削して返却している。最初は日本語で色々な意見を出し合い、次にグループで各自言えるものを英語にして、最後に自分の意見に近い内容を個人で言う/書くのようにワンクッション挟むと、自分の意見を出しにくい生徒もできるようになってきた。
また、定期テストでは、学んだ背景知識を使う実践や関心を広げられるような問題を出題している。問題の素材は、教材外のニュースが付属品にあるが全く違うトピックなので、試験範囲のニュースの内容に関連した初見のニュースを、BBCなどCNN以外のニュースサイトで探している。生徒が分かりやすいように多少作り直して、授業内で扱ったニュースの背景知識を使って解く、正誤判定のようなあまり難しくない問題を作っている。例えば「4. パラオ、サンゴ礁に有害な日焼け止めを禁止」では、ハワイではどんな日焼け止めは使って良くて、どんな物は使ってはいけない、というニュースを探して出題した。
Q. 使ってみた結果
数値として表すのは難しいかもしれないが、ネイティブ同士が普段使っているような早い英語を聞き慣れる効果がある。本教材の音声を聞き慣れると、普通のリスニングがとてもゆっくりクリアに聞こえるので聞きやすくなる。耳がかなり鍛えられるおかげか、生徒たちはネイティブ教員の英語をおそらくほとんど分かっている様子。英検の結果を見ても、本校の生徒はリーディングよりリスニングの方が得点率が高い。面接までいけばほぼ全員が合格するので、やはり耳が慣れていると思う。
また、模試や入試、英検で最近本当に時事的な内容が多く出題されていると感じる。本教材で扱った時事英語が出たり、背景知識が増えたことで、生徒は外部試験で英語が読みやすくなっているだろう。そして、時事英語に触れることで視野が広がることも大事な影響だと思う。
ライティングをメインで行う活動では、あまり社会的ではないニュースを選んでいることもあり、生徒たちは他のグループがどこに注目したかや表現の違いを楽しんでいた。中にはわざと面白いニュースを書くグループもあり、同じ情報を受け取ってもアウトプットがこんなに違うのかと想像力の幅の広さに笑いが起き「違うこと」を楽しんでいるのが印象的だった。本当のニュースと違っても良くて、違いを楽しめる。そして最後に本当のニュースと比べると、こんな風にキーワードを使えばよかったのかと違いがストンと入り頭に残りやすい。単語1つでも能動態で使うのか受動態で使うのか自分で書いた文と比べて正解を知るので、細かな使い方まで含めてニュースの英語がより印象深く学べていると思う。
Q. 利用が向いていると思われる学校・クラス・生徒
使い方次第でどこでも使えると思う。国際コースなど英語に力を入れているクラスにはより向いているのでは。
Q. 個人的にあまり合わないと思う学校・クラス・生徒
使い方次第なので、合わない学校はあまりないかもしれない。
- 岩谷 奈美
- トキワ松学園中学校・高等学校
プロフィール
英語科主任。ホームステイなどに対応する国際交流推進部長。 英語教員を目指したきっかけは、英語を通じて生徒に自分の世界を広げてほしいと思ったこと。英語ができると世界中の人と交流ができる。そんな草の根の交流が世界平和に一番重要だと思っている。外交官になるのは難しい…