アプリを活用した音読練習で発音への意識が大きく変化!カタカナ英語が改善した音読の練習法
最終更新日:2023年10月4日
- おすすめしたプロフェッショナル
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尹 龍貴 / 三田国際学園中学校・高等学校
ELSA speak
アプリ
- おすすめのポイント
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おすすめのポイント
音読アプリのELSA speakによる音読練習の導入で、生徒の発音への意識が変わり、日本語なまりの英語発音が格段に改善された。
Q. 対象としたクラスの特徴(学年、人数、授業目標等)
中学校はインターナショナルサイエンスクラス(ISC)とインターナショナルクラス(IC)の2コースだが、インターナショナルサイエンスクラス(ISC)の一部生徒は、中学2年からメディカルサイエンステクノロジーコースも選択できる。生徒数は、1学年全体で220人程度。一般的にネイティブ教員と呼ばれる外国人教諭(インターナショナルティーチャー)が30名以上が在籍しており、日頃からネイティブスピーカーの英語にふれあう機会が多く、英語教育の環境が整っている。
現在担当しているのは、インターナショナルサイエンスクラスの中学1年。
インターナショナルサイエンスクラスの1学年は全4クラス。1クラス36~37人。学年全体で140人。
クラス編成に英語力は反映されないが、英語の授業は、習熟度別にStandard・Intermediate・Advancedに分けて行われている。
・Standard:英語力を問わない。英語授業は日本人教員による授業(週5時間)とネイティブ教員による授業(週3時間)。
・Intermediate:ある程度の英語力がある(入学時と学年末のアセスメントテストで選抜)。ネイティブによる英語授業のみ。
・Advanced:帰国生またはネイティブスピーカーレベルの英語力がある。ネイティブによる英語授業のみ。今回紹介する教材の対象となるのは、インターナショナルサイエンスクラスのStandardクラス99人。英検3級を取得している生徒が1~2人で、取得していない生徒が大半。
Standardクラスでも、生徒の英語学習へのモチベーションは高い。
英語4技能をバランスよく学び、英語で思考する力を育てている。
Q. 課題意識、導入の経緯
NewTreasureは、5~6年ほど前から導入している。以前使用していた教科書は、難易度的に問題がなかったものの、教科書からQRコードなどを読み取って直接音声を聞けないのがネックだった。別売りのCDはあったが、生徒のiPadを使って聞けるものが欲しかった。
NewTreasureに決めたのは、難易度の高さが検定教科書より高いからというのが理由のひとつである。NewTreasureは、教科書内にバーコードが付いており、生徒が自分のiPadで読み込んで音声を聞けるという点もニーズに合っている。
これまで高校卒業時には英検準1級から2級程度までの英語力を身に付けた生徒でも、発音に関しては課題が残っていたため、今年度より音読アプリのELSA speakも合わせて活用を始めた。
英語の成績がよい生徒でも、帰国生が話すネイティブレベルの英語を聞き、自信を持てなくなるケースも少なくない。そのような生徒でも、音読の練習によって発音が改善されれば自信を持って発話できるようになるのでは、という考えもあった。
とはいえ、音読学習に力を入れるにも、学習の結果を教員が一人一人チェックするのは現実的に難しい。ツールを活用すれば個別対応が可能になると考えてアプリの導入に踏み切った。専用のソフトウェアなどではなくアプリを選択したのは、生徒全員が持っているiPadを使って学習できることを考えたからだ。世界規模で利用者が一番多いという理由により、ELSA speakを選んだ。
Q. 実際の使い方
週5時間の英語の授業および、家庭学習(宿題)で使用している。授業は1コマ45分。
授業では、教科書の本文を音読する際に、ELSA speakを活用している。授業前の準備として、あらかじめELSA speakに教科書の英文(データ化されている)をコピーしてアップロードしている。主な学習方法は、文法解説を終わらせた後、本文のリスニング→リピート→シャドーイング→ELSA speakで発音チェック→レシテーションという流れで進めていく。ELSA speakでは、音読するとその場で発音の結果が点数で表示されるので、点数が低い生徒に対して改善するためのアドバイスをすることもある。
音読の学習は、帯活動として取り組んでいる訳ではないので、どのくらいの時間を割くかは、授業の進度による。教科書の進み具合によっては、音読の学習だけという日もある。
また、教科書の音読のほかに単語帳の音読や、レシテーションコンテストの練習にも使用している。単語帳には、Z会の「速読英単語」を活用しているが、こちらも単語がデータ化されているので、手入力する必要はない。
レシテーションコンテストに使う英文は、本校のネイティブ教師を中心に準備している。使用している英文は、ネイティブ向けの雑誌・スピーチ・演説・新聞などから引用。レシテーションの練習に対するフィードバックは、ネイティブ教員が担当している。
これらの音読練習は、宿題として家庭学習でも取り組ませている。音読の結果はAIが採点し、発音が間違っている箇所に色が付いていたり、発音ポイントの解説文が表示されたりするので、生徒は結果を見ながら間違えた箇所を繰り返し練習できる。
Q.工夫したポイント
「L」と「R」の発音の違いや、音のつながり方などについての知識を身に付けるために、授業の最初の10分間で英語の歌を歌いながらフォニックスについて学ぶという帯活動もしている。
例えば、ディズニー映画「アラジン」の「A Whole New World」や「アナと雪の女王」の「Let It Go」などの曲を使い、歌詞の発音を音声学的に解説する。1番の歌詞だけを使っているが、解説ポイントが4~50カ所になる曲もある。学期内の定期テストまでを一区切りとして同じ曲を使っているため、1曲につき15~20くらいのコマ数をかけて学んでいく。
ELSA speakだけで繰り返し発音を練習させるのもひとつの方法だが、歌を使ってフォニックスを学びながら練習する方が、生徒たちは楽しく覚えられるようだ。また、歌を通じて学んだフォニックスの知識が、ELSA speakなど音読練習時に生きている。
ELSA speakの仕様上、音読の結果に対して教員からは直接フィードバックを返せない。そのため、宿題の提出とフィードバックには、Google Classroomを活用している。生徒がパーセンテージで表示された音読結果と、発音できていなかった箇所が色分けされている画面のスクリーンショットをGoogle Classroomに提出し、教員がフィードバックを返すという流れにした。
音読練習の結果は、成績には反映させていない。発音に点数を付けてしまうと、点数に左右され、「自分はできない」と思ってしまうことがあるからだ。そのため、練習をした生徒には全員満点を付けるようにしている。
Q. 実施した結果
ELSA speakを導入したことで、生徒たちの発音に関する意識が大きく変わったと思う。これまでなんとなく英文を読んでしまっていた生徒でも、ELSA speakで音読の結果が点数化されることによって、「もっと高得点を得よう」というゲーム感覚で取り組めるからだろう。練習を繰り返して点数が上がれば、生徒の自信にもつながる。
実際に、今まではレシテーションをさせてもカタカナ英語のようになっていたことが多かったが、ELSA speakで練習したことにより、発音が今までより格段によくなったという実感がある。
ELSA speakの使い勝手についても、特に問題はないというのが現在までの所感である。ELSA speakは教員用の管理画面から生徒の学習状況を確認できるが、練習したかどうかの確認のみで、音読結果や学習時間などは把握できない。しかし、本校の場合、Google Classroomを併用しているのと、学習時間の把握までを目的としていないことから、利用に関して支障はないと考えている。
Q. 今後に向けて
まだ導入後2カ月ほどなので、もう少し継続して結果を見ていきたい。今の段階では生徒のモチベーションが保たれており、一定の効果も出ている。今後は、学習がマンネリ化しないか、またはもう少しレベルの高い英文になったらどうなるのかなどを見ながら、次の方法を考えていきたい。
- 尹 龍貴
- 三田国際学園中学校・高等学校
プロフィール
University of York(英国ヨーク大学)TESOL専攻修士課程を修了後、立命館守山中学高等学校に英語科教諭として入職。現職の三田国際学園中学校高等学校では、入職2年目より英語科主任を務める。 2017年から2022年の6年間にかけて、中学1年から…