出ない順 試験に出ない英単語
最終更新日:2022年2月23日
- おすすめしたプロフェッショナル
-
佐藤 貴明 / ドルトン東京学園中等部・高等部
出ない順 試験に出ない英単語
飛鳥新社
- おすすめのポイント
-
Q.良かったところ
まず、本書は万人向けの英語教材ではなく、ごく一部の人にドハマりする英単語帳だとお伝えしたい。これまで、正攻法の単語帳で一語一語、淡々と覚えるのに挫折した人でも、本書ならば「楽しく」自然に英文に触れ、覚えることができる。「試験に出ない英単語」という変わったタイトルと、下ネタ表現の英単語がかなり多く登場することから、「箸休め程度にやるとちょうどよい」などと言わることも多い。しかしながら、本書の最も優れた点は、極めて汎用性の高い英語表現にある。これらの英語表現は、実際に日常会話やビジネス場面のアイスブレイクなどにも使えるものが多く、本書1冊をやり込むことで150もの生きた例文を体に染み込ませることができると感じる。また、普段使わなさそうな単語であっても「笑いをとる」ときに使えるようなフレーズが載っていたりもする。
(例)
単語:hibernation「冬眠」
例文:同僚から、人事部長が冬眠から目覚めたとの連絡があった。
I had a call from my colleague to say that the personnel manager had come out of hibernation.
この例文にある「冬眠から目覚める」という表現は、例えば、これまで長い間一言も会議中に発することなく静かにしていた同僚が、ようやく何か自分自身の意見を述べた際に「やっとだね!やっと起きたね」という冗談で使うことができるかもしれない。英語でジョークを言うのは簡単ではないが、少々エッジの効いた本書の例文を参考にしても面白い。
Q.困ったところや改善してほしいところ
本書には下ネタ表現が多く登場するゆえに、学校内で使いにくい。ただ、その「くだらなさ」こそ本書の良さであるので難しいところである。
Q.導入の経緯や、本教材採用の意図と狙い
本書は万人向けの英語教材ではなく、学校などで採用するのは壁が高いと思う。実際に、過去の勤務校にて本書の導入を検討したが却下されてしまうなど、本書を学校などの教育機関で導入した実績はこれまでない。しかし、個人ベースでは大変おススメしたい単語帳である。
他の類似教材ではなくなぜこれか:
他の教材とは一線を画す存在である。まず、本書のタイトルである「出ない順 試験に出ない英単語」とは、有名なロングセラー単語帳である「試験に出る英単語」のパロディである。そのタイトルのインパクトもさることながら、肝心な中身もとても変わっている。おかしな登場人物とその周りの仲間たちがシュールなイラストで描かれており、検定教科書には決して載ることがないような下ネタ単語やブラックジョークが例文で書かれている。大変ユニークな単語帳であり、同質性が高くなりがちな英語教材のなかで、1つの新しい道を示してくれている。
Q.実際の使い方
【本書の構成】
本書には、全部で150の例文が掲載されている。CHAPTER1は「絶対に出題されない英単語」、CHAPTER2は「高確率で出ない英単語」、CHAPTER3は「普通に出る英単語」と分かれている。本当に試験に出ない順かどうかは定かではない。見開き半分の1ページに、例文を連想させるシュールなイラスト1つ、キーワードの単語、単語を含んだ例文1つが日本語と英語でそれぞれ載っている。イラストは1ページの上部を使って大きく描かれており、かなりインパクトがある。
(例)
単語:salmon carpaccio「サーモンカルパッチョ」
例文:ボブは笑い過ぎてサーモンカルパッチョが鼻から出ました。
Bob laughed so hard that the salmon carpaccio came out of his nose.
この例文の場合、少し悲しそうにも見える、どや顔をしたような表情とともに、鼻から出てしまったサーモンカルパッチョの塊をティッシュの上に載せて、我々に見せているかのようなボブの様子が描かれている。キーワードの単語は「salmon carpaccio」だが、注目すべきは、この例文の中にso taht構文が組み込まれている点である。ただso that構文を丸暗記するよりも、この例文内で覚える方が記憶に残るのではないだろうか。
【使い方】
おススメの学習方法は、シャドーイングである。シュールで癖が強い、インパクトのあるイラストを見て場面をvisualizeし、付属の英語音声を聞きながら自ら発声することでイントネーションを学ぶ。目と耳の二方向から情報を入れることができるので、定着しやすいだろう。また、キーワードとなる単語を入れ替えてそのままの例文で覚えることもできる。「この単語はあまりに下品では?ふざけすぎでは?」と思う時は、自分なりにもっと合うと思う単語を当てはめれば良い。
(例)「機長がgarter belt(ガーターベルト)着用のサインを消すまで、ガーターベルトはしっかりとお締めください」
この例文のキーワードはガーターベルトだが、これをseat beltに変えればごく自然な表現になる。単語を入れ替えたとしても、シュールなイラストのおかげで楽しく覚えられると思う。例文を覚えたタイミングで、イラストのみを見て例文を書いてみるのも効果的な使用方法の1つだ。
指導する上での工夫:
一般的な英語学習指導向けの教材ではないため、個人の学習ツールとして、自分の好きなペースで進めていければいいと思う。上記で述べた通り、使い方は付属の英語音声を使ったシャドーイングがおススメだが、気負わず好きな方法で楽しく取り組んでほしい。一方で、重要構文や頻出のイディオムがふんだんに組み込まれているので決してあなどれないということをお伝えしたい。
Q.使ってみた結果
本書には汎用性の高い表現(構文・イディオムなど)がたくさん使われており、自分自身の復習にも使えた。英語をある程度すでに学んでいて、日常的に英語を使う場面も多い人からすると「あーこれよく使うよね!」という表現が数多くあることに気づく。この、「あーこれよく使うよね」という感覚は、もしかしたら中学生や高校生には伝わらないかもしれないが、意識せず自然に身に付けられたらこんなに良いことはないと思う。
Q.利用が向いているクラスや生徒
下ネタや下品な表現にも寛大な、中学生から大人まで。また、既存の単語帳が合わず挫折してきた人や、楽しく英語を覚えたい人、英語の運用能力を身に付けたい人におススメしたい。
Q.あまり合わないと思うクラスや生徒
下ネタや下品な表現が苦手な人、潔癖症の人、教育的指向が強い人。
- 佐藤 貴明
- ドルトン東京学園中等部・高等部
プロフィール
そこにいるだけで落ち着く「学校」という空間が好きだったことから、高校卒業後教員の道を志した。 大学卒業時自らの英語力に課題を感じており、アメリカサンフランシスコの大学院に留学しTESOLを修了した。その後編集プロダクションにて英語教材の作成に携わり、英語を使用…