【第一弾】教科書作成のプロに聞く!「ZESTAR 総合英語」はこうして生まれた!

最終更新日:2021年6月26日

昨年度となる2020年度まで立命館中学校・高等学校でマイスターティーチャーを務め、今年の4月からは札幌大学の教授に就任。これまでに10冊以上の英語教材を世に送り出し、英語教育者向けセミナー「英語教育今井塾」も主催する今井康人先生に、ご自身の著書である『ZESTAR』と、「教材作成」についてお話を伺いました。第一弾の今回は、「教材作成のいろは」をお届けします!

( 全3回のうちの1回目。第一弾 / 第ニ弾 / 第三弾

 

今井 康人(いまい やすひと)

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札幌大学教授。1982年に北海道立高等学校教員採用試験に合格してから、北海道立上の国高校、北海道立札幌拓北高校、北海道立函館中部高校の3校で28年間勤務。その後、立命館慶祥中学校・高校(札幌市)に3年間勤務し、2020年度までの7年間は立命館中学校・高校(京都)に勤めた。

どの学校でも英語科主任として活動し、立命館慶祥中学校・高校と立命館中学校・高校ではマイスターティーチャー(指導教員)も務めた。

 

「覚える文法から使える文法へ」のための工夫

当時、勤めていた学校にZ会の営業の方がよく来られていました。あるとき、Z会で「総合英語」を作ることになったと。そして、著者を誰にするか社内で検討した結果、編集チームのリーダーから僕にオファーが来たのが「ZESTAR」出版のきっかけでした。

本来なら「総合英語」を作るのには2~3年かかります。特に「ZESTAR」は文法知識だけでなく、「どう使うのか」まで踏み込んだ解説を入れるなど、情報量の多い、ボリューミーな内容を予定していました。しかし、短期間で完成させることを目指し、分担執筆にすることで、およそ1年で出版することができました。

教科書制作は、まず編集会議で基本的コンセプトを決めます。そして、ブレインストーミングし、たたき台を作り、章立てをどのようにするかを決めていきます。

ZESTARの場合は、『覚える文法から使える文法へ』を最大のコンセプトに据えました。

これを基に、

  • 生徒の長期記憶に残るよう、他の教材ではあまり見られない、例文を1冊を通してストーリー仕立てにする

  • どのような状況でその英文を使うのかが分かるよう、明確な場面設定をする(Situational Grammer)

  • 何十年も教べんを取ってきた現場の教員だからこそ知る、生徒・学習者が最もつまずきやすいポイントをしっかりフォローする

  • 「読む・書く・話す」の力につながる「使える文法」を掲載する

を基本的なコンセプトにしました。

 

学習しやすいブックデザインを考える

Z会の編集チームは非常に優秀でした。編集レイアウト、挿し絵や色使いなど、分かりやすく、かわいらしく、見やすいデザインで作ってくれました。色使いが特にすてきでしたね。

例えば、カバー下の表紙は淡いオレンジ色が採用されています。高校生って通学電車などで教材を開くためにカバーを外すことが多いですよね。そのときに、男子でも女子でも使いやすい色にしています。また、「日本語で大きな文字が入っていると恥ずかしい」という声もあったので、表紙デザインはシンプルにしました。

紙にもこだわりがあります。660ページもある厚い教材なので、なるべく重くならないように薄い紙を使いました。また、真っ白の紙は、長時間、見続けていると目が疲れてしまうので、クリーム色を採用しています。

さらに、本書はダウンロード音声サービスで音源を聞けるようにした走りの教材です。音声ツールとしてCDを廃止し、いつでもどこでも教材と一緒に音声を聞けるようになりました。

監修担当故の大変さというのは、やはり全編の確認をするところですね。抜けている部分や掲載した方が良いポイントを全て網羅する重要な役割です。おかげで我が家のダイニングテーブルは本や紙だらけ。家族はリビングルームで食事をしていました(笑)。

制作は、普段から一緒に教育活動をしており信頼している5名の先生方と僕を含めた著者チームが英語教育のプロとしてLive Englishを。Z会の編集チームは編集のプロとして高校生が使いやすい教材を。全員で幾度となく会議を重ねました。ゼロから作るモノづくりって、面白いですからねぇ!編集会議は白熱そのものです。その結果、出来上がったのが「ZESTAR 総合英語」です。

 

教科書づくりもプリントづくりも根本は同じ

教員は生徒のために「良い授業をしたい」と誰しもが思っていると思います。「良い授業」とは、生徒が集中して、英語力が伸びていく授業です。まずは、1人の生徒が英語を楽しみノッてきて、結果が出るようになる。すると、「他の生徒はどうだろう?」「他の学校ではどうだろう?」「他の地域では?」と、どんどん輪が大きくなっていきます。

生徒に英語を教えるにあたって、まず教員が勉強をします。これはインプットになりますよね。そして、たくさんインプットをしていると、どこかでアウトプットしたくなります。教科書を作るということは、自分で授業用のプリントを作ることと根本は同じ。全ては生徒のため、より良い授業のためです。僕は教材を作ることで、自分がインプットして得た知識をアウトプットしているんです。

「ZESTAR」制作のお話をいただいたとき、教科書を作るのとプリントを作るのとで規模の違いこそありますが、もともと書くことが好きだったので不安はありませんでした。見つけた良いもの(指導法)をシェアする。それを一番広範囲に、しかも最速で広げられるのが、教科書制作なのです。

教員にとって、教科書を作ることは「夢」です。そして、その教科書を使って授業をすることは「最高」なんです。自分が作った教科書で授業を行うことで、生徒にとって使いやすい方法や学びやすさを探究し続けることができます。これは教育の本質につながります。ここが教科書作成の面白い、楽しい部分なのです。

教科書を作りたいと思ってる人はたくさんいても、実際にそのチャンスに恵まれる人は少ない。でも、その教員がどんな研究や発表をして、どんなアウトプットをしているかを、出版社はよく見ています。

例えば、自分で英作文の新しい指導法を研究し、発表し、注目されれば、「誰が作った?」と出版社で話題になります。

「今井が作った」と目に留まれば、「では、お願いしようか」と声がかかります。僕の場合は、基本的に依頼された仕事は受けてきたので、こういうチャンスに恵まれたのだと思います。幸運でした。

教材は学習者にとって重要なものです。英語力向上のカギを握っています。作成者がどのような願いを込めて作っているのかが大切です。この「ZESTAR総合英語」が完成した時、編集スタッフの方が号泣していたのを思い出します。原稿執筆も大変でしたでしょうし、編集も大変だったのです。良いものを作ろうと思えば思うほど、手間はかかります。大変な苦労はしましたが、出版した後も全国の高校生や先生方から理解しやすいとの評価をいただいています。これからは本書の使い方が焦点になるでしょう。読んで理解した後に各レッスンの最後にある「Read Aloud」の英文を音読しましょう。英語力は英文力です。ぜひ、内在化して英語力を向上させてください。

 

【続きを読む】 【第二弾】教科書作成のプロに聞く!「ZESTAR 総合英語」はこうして生まれた!

 


今井 康人(いまい やすひと)

1960生まれ。北海道北見市出身。

 1982年に北海道立高等学校教員採用試験に合格してから、北海道立上の国高校、北海道立札幌拓北高校、北海道立函館中部高校の3校で28年間勤務。その後、立命館慶祥中学校・高校(札幌市)に3年間勤務し、2020年度までの7年間は立命館中学校・高校(京都)に勤めた。

どの学校でも英語科主任として活動し、立命館慶祥中学校・高校と立命館中学校・高校ではマイスターティーチャー(指導教員)も務めた。

2003~2010年までの8年間、北海道立函館中部高校SELHi研究主任などを務め、音読・暗写を核とした英語学習法「HCラウンドシステム」をチームで開発・実践し、注目された。

2006年8月バスケットボール世界選手権(札幌)ではおいて通訳業務を行う。1996年から2013年まで実用英語技能検定面接委員を務めた。2006年6月東日本地区ALT約1000人にプレゼンテーションを実施し、好評を得る。英語授業研究学会会員。また、数名の有志と協力し、英語指導勉強会「METS Hakodate」を開催し、毎月一回土曜日に英語教員のための勉強会を開催していた。

 2021年4月から札幌大学 地域共創学群 人間社会学域 英語専攻 教授に就任。

現在、英語教員を目指す学生とともに効果的な英語教授法を研究開発している。過去38年間、高等学校で教鞭をとってきた。2014年6月に新英作文指導法「SSCC(同時自己添削英作文)とCOC(連鎖意見英作文)」を研究開発。その指導法は全国に広がっている。また、各出版主催の英語教育セミナーを全国(東京、大阪、札幌、仙台、名古屋、福岡など)で1年に10回程度行ってきた。さらに、「北の英語大学」を毎年1月の上旬に開催し、2泊3日の合宿には日本全国の英語教育関係者が参加し、さまざまな授業手法を学び、教員のスキルアップにつなげている。2020年度はオンラインのウェビナー形式で開催。

さらに、英語教育今井塾(現職英語教員対象)を展開し、1年に3回程度英語教育セミナーを開催し、後輩の育成に尽力している。趣味はJAZZ、コーヒー焙煎、写真撮影。日々、教育実践、著作、講演活動を行っている。

 

著書

英語の発信力を強化するレッスン』(青灯社)(単著)

英文読解 Gトレ(標準編)』(アルク)(単著)

英文読解 Gトレ(応用編)』(アルク)(単著)

ゼスター総合英語』(監修・分担執筆、Z会出版)

英語力が飛躍するレッスン』(単著・青灯社)

Hokkaido – A wonderful world』(共著、文英堂)

DVD『北の英語大学~英語教育実践の達人から学ぶ~(今井康人先生の講義)』(ジャパンライム)

COMET英単語』(数研出版)(執筆)

『Rapid Reading Level 1~3』(美誠社)英文速読教材(単著)

Active Writing』(啓林館)英作文問題集(監修・分担執筆)

文部科学省検定教科書 Departure English Expression Ⅰ(平成24年4月検定済み)

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