「Cambridge Englishスクール」認定校、おススメ教材!
最終更新日:2022年7月29日
- おすすめしたプロフェッショナル
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中川千穂 / 工学院大学附属中学・高等学校(高校)
UNLOCK
ケンブリッジ大学出版
- おすすめのポイント
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Q. 良かったところ
本書がそれぞれのユニットで扱うテーマは非常にアカデミックで深く、生徒たちに刺激を与え、生徒の世界を広げてくれると感じる。例えば、環境問題を扱ったトピックでは日本の地震や原子力発電所の事故について書かれており、世界からはどう見えていたのかを知ることができる。また、本校は理系大学附属の高校のため理系のテーマを好む生徒も多く、テクノロジーについてや宇宙開発などのトピックにはとても食いついて真剣に取り組んでくれていた。卒業生の中には、本書で扱った「エシカルファッション」(※素材の選定、生産、販売までのプロセスで人と地球環境に配慮して作られたファッションを指す)に感化され将来のやりたいことを定め、大学の進路を決めた生徒もいた。教材が生徒に与える影響力の大きさを実感した。
また、あるニューヨークの映像祭で本校の生徒が入賞し引率した際、どこを観光したいか聞くと「テキストに写真で載っていた、あの場所に行ってみたい!」とニューヨークのハイライン(高架跡地を再開発した空中庭園)をリクエストされたことがある。教材の写真がこんな風に生徒の心に残っていくのだと知って、胸がいっぱいになった。英語を教えるためのただの教材ではなく、生徒の頭にも心にも残る教材を使って指導ができることがとても嬉しい。Q. 困ったところや改善してほしいところ
特にない。
Q. 導入の経緯や、本教材採用の意図と狙い
7年ほど前から本書を導入している。Unlockは、Reading, Writing & Critical ThinkingとListening, Speaking & Critical Thinkingの2種類に分かれているため、4技能を本シリーズだけでバランス良く網羅できる。国の定めた高校の学習指導要領にきちんと沿って指導できる点が良いと感じた。また、本書はシカゴ大学のベンジャミン・ブルーム博士がまとめたブルームの分類体系(Bloom’s Taxonomy)を応用して作られた内容になっており、本校の目指すべき指導にも大変合致している。
状況(クラスの人数やレベル):
本書はレベル1~6に分かれており、高1ではUnlockのLevel2(CEFR A2レベル)、高2ではLevel3(CEFR B1レベル)を活用中。普通科は1クラス最大40名程度で、1学年7、8クラスある。「コミュニケーション英語」の授業にて本書のReading, Writing & Critical Thinking版を使い、「論理・表現」の授業にてListening, Speaking & Critical Thinking版を使っている。
他の類似教材ではなくなぜこれか:
テキスト以外のサポートも充実している。
・Teacher’s manual:どんな風に教員が生徒に指導していけば良いのか明確に示してくれる。
・Teacer development support:地域ごと(ヨーロッパ圏、アジア圏など)に、生徒がつまづきやすい点などをまとめた付属データソースにアクセスできる。
・Online workbook:生徒たちが日々活用し、学習記録として生徒と教員で共有できる。本書を導入してから教員のレベルがいっそう高まった実感がある。本書を使い、教員ではなく「生徒」に英語を話させる・使わせる授業をするため、自ら熱心にテキストを読み込む。また、完成度の高いテキストなので別に補足プリントやパワーポイントを作る必要はなく、教員は授業という場をコントロールし、的確な指示を出すことに集中できるようになった。
Q. 実際の使い方
教材の構成(全体構成、ページ構成):
「Reading, Writing & Critical Thinking」と「Listening, Speaking & Critical Thinking」は共に8ユニットから構成されており、2つのテキストの各ユニットテーマは互いに共通している。1ユニットは10ページ程度。細かい部分で違いはあるが、おおよそは以下の流れで学ぶ仕組みになっている。ここでは「Reading, Writing & Critical Thinking」について少し詳しく説明したい。
1ユニットは【WATCH AND LISTEN】と【READING】の大きく2つのパートに分かれ、それぞれのパートのアクティビティを順々にこなしていくことで理解が深まる作りになっている。
①【WATCH AND LISTEN】では、ビデオを見る前にテーマに沿った内容のペアワークを事前に行うPREPARING TO WATCHや、実際にビデオを見て設問に答えたり、正誤問題などを行うWHILE WATCHING、そしてペアワークのディスカッションで自分のアイディアについて話すDISCUSSIONの項目がある。
②【READING】では2題の長文を読んでいくが、読むにあたって重要な単語の定義を事前に確認していくPREPARING TO READや、パラグラフを整理していくWHILE READING、実際に長文を読んだ後、さらに行間を読むことを学ぶREADING BETWEEN THE LINES、そして最後にはDISCUSSIONの項目がある。ユニット8のDISCUSSIONのテーマの1つは、Will private companies make it possible for tourists to go to the moon or to explore planets like Mars or Kepler 22b? Why / Why not?
であった。Why / Why not?と問われることで、生徒たちはクリティカルシンキングを自然と学び、
「自分だったらどう表現するか?」について深く考え、発信する練習を本書を通じて何度も実践できる。進め方(年/学期単位、授業単位):
「Reading, Writing & Critical Thinking」と「Listening, Speaking & Critical Thinking」2冊を1年かけて指導する。1学期2学期で3ユニットずつ、3学期に残り2ユニット分に取り組むイメージ。クラスにより進度もさまざまではあるので、他の教科書も上手く活用しながら指導している。
指導する上での工夫:
「要点を掴みながら読んでいこう」と読み進めながら理解を深められるよう声をかける。初めての英文を読む際、生徒の知らないテーマや出来事、モノが登場することも多いが、初めに最低限の単語はテキストで紹介してくれるので安心できる。授業中では要点を掴んで読んだり聞いたりすることに注力し、単語や語彙などの確認は小テストやワークブックを通じて定着できるようにしている。また、テキストは語彙や文法説明、読解、アクティビティが満載の内容で飛ばすところは1つもないので、時間がないからと端折ったりせず、テキスト通り順番に全ての項目を授業で扱うことが重要だと感じる。
Q. 使ってみた結果
高1の4月や5月の時期は、本書を使った英語の授業に慣れず苦労することもある。高1の頭で英検3級に落ち、英語に苦手意識を持っていた生徒が「最初は授業で何を言っているのか全然わからなかった。でも秋になる頃にはなぜだかわかるようになってきて、あぁ自分は英語が聞けていなかったのではなかったんだ。ただわからない、知らないことが多かっただけだったのだ、とUnlockの教科書で学びながら気付きました。今は世界の出来事にすごく関心があります」と話してくれたことがある。その生徒はそこから英語が好きになり、高3では英検2級に合格している。生徒が大きく変わっていったことは大きな喜びであった。
また、本書を3年使用した生徒たちから授業についてのアンケートをとったが、そこにも「さまざまなテーマに触れて、世界への視野が広がりました」「4技能まんべんなく学べた実感がある」「英語力がついて大学への進学も満足のいく結果が出せて嬉しい」「年下の妹にも自分のようにこの教科書で英語を教えてあげたい」など、生徒の実感のこもった嬉しい言葉が並んだ。
世界は日々変わっているので、教員も勇気を持って新しい英語教育に日々取り組んでいかなければと感じている。
本書を導入してから、海外大学への進学者の増加、早慶上理大への進学者数も2倍以上と飛躍的に伸びた。学校全体として生徒たちの視点や考え方を広げ、深めるような指導に取り組んできた結果だと感じる。Q. 利用が向いていると思われる学校・クラス・生徒
教員が本書を使って指導することへのやる気と情熱さえあれば、誰に対しても向いていると思う。
Q. 個人的にあまり合わないと思う学校・クラス・生徒
和訳や、日本語での指導を中心にしたい先生や学校には合わないかもしれない。
- 中川千穂
- 工学院大学附属中学・高等学校(高校)
プロフィール
兵庫県生まれ、兵庫県育ち。大学卒業後は百貨店に就職し、バチェラーオブシューフィッターとして靴の販売に従事。結婚、出産を経て英語教員のキャリアをスタートさせた。現在は、工学院大学附属中学校・高等学校にて勤務7年目となる。薙刀2段、趣味はキャンプとスキー。3女の母…