【第3弾】「映画・洋楽×ICT」この授業って大丈夫?!〜授業目的公衆送信補償金制度から考える〜

最終更新日:2021年10月13日

※このイベントは2021年9月に開催されたものです。

 

◆第2部(後半)|パネルディスカッション


 

(越智)ここからは高瀬先生にもご登場いただき、3人でパネルディスカッションを始めていきたいと思います。ここまでお話を聞いてみて、高瀬先生はいかがでしたか。

(高瀬先生)非常にわかりやすい説明の部分もありましたが、やはり文面の解釈によって「どう捉えたらいいんだろう」という部分もありました。実際、リスナーの方々からも質問が10件ほど出ているので、まず私の質問にお答えいただいた後、リスナーの皆様の質問にもぜひお答えいただきたいと思います。

 

 

(越智)パネルディスカッションに入る前に、木南さんから補償金制度についてお話をしていただきました。繰り返しお伝えされていたポイントはこの2点かなと思っております。

著作物の利用円滑化と著作権者の利益保護とのバランスという観点から、1つ目は「必要と認められる限度かどうか」。本当に授業で必要なのか、必要であることを客観的に説明できるのかということです。2つ目は「著作者の利益を不当に害していないか」。

ここから5つの疑問に関しましては、この2つの視点から質問を考えていきたいと思います。

 

【疑問への回答1】教科書 ①「小部分」ってどこまで?

 

(越智)教科書について3点ほど高瀬先生から質問を頂いておりましたので、一つずつ振り返りながら木南さんに回答いただきます。

 まず、教科書の「小部分」というのはどこまでLMSにアップロードしていいのかという点ですが、木南さん、いかがでしょうか?

(木南さん)「小部分」の解釈は、どういうケースでどう利用するのかによる部分が大きいですが、基本的には「その著作物の一部分」とされています。ただ、教科書についてはガイドラインの中でも特別な扱いがとられており、その授業に必要と認められる範囲内という前提にはなりますが、採択される教科書の中の著作物利用に関しては、著作物の全体を利用することもできるでしょうと方向性が示されています。 

ここで言う「全体」というのは、教科書のすべてを載せておくことではありません。例えば国語なら、ある作品の該当部分が1単元として出ているのであれば、その小説の部分が一つの著作物です。また別にイラストが出ていれば、そのイラストも一つの著作物とみなしますので、そういう著作物の中で授業に必要と認められるものであれば、全体を使うこともできる、といったことがガイドラインで示されているのです。

(越智)今、木南さんがおっしゃっていたガイドラインというのは改正著作権法第35条の運用指針ですね。全部を複製してもその採択された教科書の中の著作権物の利用であればよい、とガイドラインの中でも書かれています。高瀬先生、補足してお伺いしたいことはありますか?

(高瀬先生)この文面通りに理解すると、採択してお互いに紙ベースで持っている教科書であれば、デジタル化したものを共有する分には、範囲の大小関わらずOK、と理解しました。

(越智)一旦上げたものは、使わなくなったら最終的には削除していただく、というのも併せて大事な点ですね。

(木南さん)いつまでもずっとそこに載せておくということではなく、授業の中で使い終わったら下げるということを心がけていただく必要があるかと思います。

 (越智)ありがとうございます。非常にクリアになりました。

 

【疑問への回答1】教科書 ②音声はアップロードしていいの?

 

(越智)今度は音声の部分についてです。無料のQRコードやデジタル教科書のように既に教科書に音声が載っている場合もありますし、教科書の付属品としてCDを購入しているなど、様々な音声の配布形式があると思いますが、こちらのアップロードにつきましてはいかがでしょうか?

(木南さん)先ほど先生からも業者とデジタル教科書の契約をしているというお話がありましたが、基本的にはその契約の内容にもよります。送信まで認められている契約であれば、そういう利用も可能かと思います。

先ほど見ていただいた「採択された教科書の中の著作物の利用」という条項の2つ目の※印に、採択された教科書の代替として利用されている学習用デジタル教材の契約内の利用についても同様、とあります。生徒が持っている教科書を代替するものであれば、先ほどの例と同じような利用の仕方をしていただけるのではないかと思います。そうではなく、例えば本来は生徒に配られるべきCDを先生が集約しておりそれを使うといった場合は、この制度の原則に立ち戻り、必要な部分を限定的に使っていただく形になるかと思います。

(高瀬先生)お答えいただきありがとうございます。生徒が持っているものであれば基本的には問題ないということは理解しました。非常に複雑ですが、例えばデジタル教科書が使えるけれどCDは持っていない、ただし再生される音源は一緒で、教員がCDを持っている場合に、定期試験でそれを活用するとか、生徒もデジタル教科書で聞ける音声だけれども、加工物としてCDの音声側のものを送信してフィードバックをもらうとか、媒体が違うけれども結局持っているコンテンツは同じという場合はどうでしょうか?

(木南さん)ケースバイケースになるかと思いますが、基本的にデジタル教科書の中で音声利用をする補助的なものとしてCDがついているのであれば、先ほどの教科書の例のような活用が認められるのではないかと思われます。

一点気をつけていただきたいのは、この制度とはまた別なのですが、著作権法の中に「同一性保持権」という権利があり、自分の作った著作物を勝手に改変するには権利者の許諾を得る必要があるという制度になっております。例えば英語ですと、センテンスの中で区切って使うという部分ではよいのですが、単語を入れ替えて別のものにしてしまうようなことになると、この同一性保持権侵害にあたる可能性がありますので、加工する際にはそういった点も注意いただければと思います。

 

【疑問への回答1】教科書 ③教員向けに提供されたワークシートは?

 

(越智)教科書に関する3つ目の質問ですが、教員向けに教科書会社から配布されている、「自由にコピーしてください」といったワークシートのようななものを複製してLMSにアップロードしてよいか、という点はいかがでしょうか。

 (木南さん)そもそもこの教科書会社がどういう利用の仕方を認めているかについての確認が必要だと思います。コピーして送信することについても認めているようであれば、既に権利者の許諾済みということになるかと思います。そうでない場合は、ワークシートというものがドリルのような扱いと考えると、基本的にはドリルやワークブックというのは各生徒1人ずつが持っていないと権利者の利益を不当に害するという考え方から、この制度の対象外と考えられます。もし先生のほうにしかワークシートがなく、それを生徒の方に活用して送るということについては、教科書会社との契約関係ということを別にすれば、制度の対象としてはなかなか認められないかなと思います。

一方で先ほどのガイドラインでも、ドリルやワークブックであったとしても履修者全員が購入をしていることが確認される場合であれば、問題の解説などに使うという目的で、付加的に複製などを行うことは許容される余地があるという言い方がされています。ドリル・ワークブックなどでも、生徒が全員持っており、先生が課題を出すとき、また解説するときにその問題を示すといった利用の仕方については認められると考えられます。

(高瀬先生)検定教科書に付属しているものは、生徒に紙でコピーして配布して構わないという書き方になっているので、LMSにアップしていいかどうかは先に業者にきちんと確認を取らなければいけないのかなと思いました。

 (木南さん)従来の制度の中では教室でコピーを配布することについても認められていましたが、新しく公衆送信をするという制度を作るときに、コピーして配られるものは生徒に与えるまでで止まるけれども、公衆送信は生徒の手元に行ったものが他に送られる可能性がある、ということを権利者の方々が非常に気にされていたのです。

そのため、先生がおっしゃるように、コピーを配布してもOKというのがそのまま公衆送信OKということにはなりませんので、「こういうことをやっていいのか」と教科書会社に聞かれるのがまずは一番良い方向かと思います。

(越智)先ほどのガイドラインに沿って簡単にまとめると、教科書の中のものであれば基本的には大丈夫。ただし、授業で終わったものは削除しようねということでした。

2点目の質問に関しても、採択された教科書で付随したCD、もしくはそのデジタル教科書であれば、不当に害していないという点からCDのアップロードをしても問題ない。ただし、木南様がおっしゃっていた通り、教科書に付随しておらず別途生徒が購入しないといけないものに関しては、全員購入している前提であればアップロードしても大丈夫というお話でした。

教科書会社の教員向けのワークシートに関しては、今回のケースであれば「先生だけ」というところが引っかかると。またその範囲に関しては教科書会社に確認した上で大丈夫であればアップロードして良いという認識でおりますが、大丈夫でしょうか。

(木南さん)そうですね。概ねその解釈でよろしいかと思います。

 

【疑問への解答2】問題集・ドリル

 

(越智)では2つ目の「問題集・ドリル」に行きたいと思います。前提として、生徒が全員所有している問題集およびドリルは複製してアップロード・ダウンロードしていいのかという点はいかがでしょうか?

(木南さん)先ほどご説明した、ドリル・ワークブックは原則で対象外だけれども、全員持っているものについては一部許容されるというお話と一緒かと思います。このガイドラインでも利用の仕方はかなり限定的で、問題の解説を行うなど小部分になるかと思いますが、そういうものであれば認められることになります。

(高瀬先生)この点で質問を一つさせていただきたいのが、販売者の立場ではこのSARTRASという仕組みをどのように活用していくのか、これに関するQ&Aが今たくさん飛び交っています。例えば中学生で何百円、高校生で何百円×人数分のお支払いをしたときに分配される金額が、ざっと計算すると今まで各業者にお支払いしていた金額よりも遥かに小さい額なので。そうするとSARTRASに業者が請求した場合、直接学校に請求していた金額よりもはるかに少ない金額になってしまうのではないのかというのが心配なのが一点。 

また、来年SARTRASのみに一本化した場合、業者にはオンライン利用料の契約をせずそちらに乗り換えますと言ったときに、後出しじゃんけん的に「もうそうしたのでお支払いしません」というのは業者さん側は拒否することができないといった文言もあり、トラブルにならないかというのが来年度心配なのですが、このあたりはどうなのでしょうか?

(木南さん)今お話ししたように、この制度でドリルやワークブックが利用できる範囲はかなり限定的かと思います。ドリルの問題が載っている部分、1ページ全体をLMSなどで送ると、この制度からはみ出してしまうところが出てくるかと思います。

なのでもしSARTRASの制度を超えるような利用も考えるということであれば、例えば業者との契約では全体を送っても構わないというものなのであれば、そこは利用の仕方によってお支払いの内容も変わってくると思います。

(高瀬先生)ということは、小部分の利用はSARTRASがカバーするけれども、全体丸ごとをオンラインで使いたい場合には引き続き業者ともそのような契約を取り交わしていく必要があるということですね。

(木南さん)そうだと思います。

 

【疑問への回答3・4】洋楽・音楽/映画・動画

 

(越智)今度は、洋楽・音楽はどこまでアップロードできるのかという点ですね。

(高瀬先生)教科書会社や出版会社が作ったものではなく、いわゆるネットを介して、具体的に言えばYouTubeやApple Musicで教科として特定の楽曲を買った、あるいはサブスクリプションに登録してこの曲を使えるようにしている。それを授業内の利用として、例えば教科書の中の一部分に出てくる曲を実際に紹介したい・聞かせたい・ディクテーションしたい、あるいはアテレコ、カラオケをさせたい場合、こういったものを配信して送り返してもらうということをしてもいいのかという質問です。

(木南さん)原則は、その授業の中で必要と認められるというところと、権利者の利益を不当に害さないという観点になります。それを誰がどうやって判断するのかというのは実際かなり難しいかと思います。

このガイドラインの中でも、授業のために必要かどうかについては、第一義的には授業担当者が判断をするものだけれども、紛争が生じた場合には授業担当者がその説明責任を負うなど、かなり厳しいことが書かれています。ただ教科書はそもそも授業の中で利用することが前提となっている著作物なので、先ほどのような全体的な利用もあるかと思いますが、それ以外のものを使う場合、特にこの音楽や、次に出てくる映像というものは、本当に授業の中で必要なものなのかということについて、先生方が客観的に説明できるようなことが必要かと思います。

そういうことができる状態であれば、この制度は使用できる著作物を区別していませんので、音楽であろうと映像であろうと必要な部分について先生と生徒がインターネットを介してやりとりをすることも認められております。大前提の部分で本当に必要なやり方なのかということについて、先生方で適切にご判断いただくことになります。

 

 

(越智)かなり主観的な部分もあるので、客観的な説明はやや難しそうですね。例えば、動画は感情や記憶に強く紐づけされるので、学術的にも効果があると思います。そういう観点から見ると、それは客観的な説明・判断であると言えるのでしょうか?

(木南さん)なかなかそのあたりは難しいですね。ただ、生徒の学力を上げるという観点で、この手法が効果的だという視点は必要だと思います。動画のアテレコの話は、映像と音声があるので、映像の部分を見せる必要があるのか、音声だけで足りるのかという観点から、この授業で必要かどうかの判断があるかと思います。

映像を見せないと成り立たないということであれば、動画というものが利用されると思いますし、一方で音声だけで足りるのに映像を使うということについては、なかなか客観的な説明が難しい場合もあると思います。

(高瀬先生)必要か必要じゃないかという点は、非常に教員側の主観で判断がわかれるところが大きいでしょうね。ある意味論破できてしまえばいいということにもなってしまいますし、逆に利益を不当に害していると言われてしまえば、それはそれで先生が困ったことになる、非常にグレーゾーンな部分だという印象を受けました。

(越智)基本的にアップロードしてはいけないという前提ではないのですね。この2つの原則をクリアしていればということだと認識しているのですが、高瀬先生もおっしゃったように客観的な説明ができるかどうかが大事になってくると。ただ、アップロードするときに、1曲丸々、映画1本丸々というのはあまりなく、制度に則って小部分、必要な部分だけという考えは大事になりますね。

(木南さん)そうですね。そこは判断する際に気をつけていただく点になると思います。

 

【疑問への回答5】生徒の成果物 

 

(越智)最後の質問は生徒の成果物という点ですね。プレゼンテーションなどに使ったいわゆるディズニーとかジャニーズなどの画像をLMSにアップロードしても良いのかどうか、送受信していいのかをお伺いできたらと思っております。

(木南さん)この点も、他と同じように授業に必要かというところと、利益を害さないかということが重要です。条件が満たされているのであれば、全体は難しいけれども小部分というような利用の仕方になるかと思います。

この事例で見たときに、本当にそのものが必要なのかという観点で、ジャニーズやディズニーが果たしてそれに当たるのかというところの判断は、一つあるかと思います。研究する成果物としてディズニーのイラストを出さなければならないというようなケースであれば該当することもあるかと思いますが、資料を華やかに見せるためだけに使うとなると、制度の対象からは外れてしまうと思います。

実際この制度は、先生と生徒が利用できる制度にはなっているのですが、生徒の利用の仕方についても、先ほどと同じように先生に説明責任が求められることになります。この制度を使うときにはぜひその生徒にも、「注意が必要だよ」と先生から教えていただければと思います。

ちなみにSARTRASがFAQをホームページに載せているのですが、その中の一つに「子供に関心を持ってもらうためアニメ映画やマンガのキャラクターの画像を画面に貼り付けたいと思います。この場合、権利者の許諾が必要ですか」というものが載せられています。この回答ではアニメ映画やマンガ、テレビアニメのキャラクターの利用については、授業の目的に照らして「必要と認められる限度」にあたらない、と考えるのが権利者側では一般的であるということで、トラブル防止の観点からも個別に権利者に許諾の要否についてご確認ください、という回答になっています。ですからこの辺は注意が必要かと思います。

(高瀬先生)難しい質問にお答えいただいて恐縮です。最後に一つ質問させていただきたいのは、小部分の解釈が非常に難しいと感じていまして。例えば、教科書見開き1ページの右下の半分だけというようなものが小部分という解釈になるのか、あるいは教科書1冊丸々の半分、40ページあったら20ページが半分以下で小部分という解釈になるのか。また楽曲の場合は、1曲の中の数十秒みたいな部分が小部分になるのか、それがアルバムという単位になったときに、半分以下であれば小部分になるのか。もちろん必要と認められる部分を使うということは前提ですが、過大解釈をすればするほど、小部分の解釈も小が中になって、大になって、人の感覚によってだいぶさじ加減が変わってくるので、どういうふうに捉えたらいいのかというのが、最後にお聞きしてみたかったことです。

(木南さん)教科書のところでも申し上げましたが、先生のおっしゃる例で言うと、教科書の1冊そのものを著作物の一つと捉えるのではなくて、見開きページの中で、例えば小説のある一部分が載っているとすると、その部分だけで一つの著作物と捉えます。楽曲についても、アルバムという単位ではなくて、その曲を一つの著作物と捉えますので、例えば1曲の中の数十秒が、小部分に該当するかと思います。

(高瀬先生)なるほど。やはり1曲の中の、1ページの一作品の中の、というのが一つの単位なのですね。

(木南さん)厳密に言うと、1ページの中に小説の一部分とイラストがあれば、それは別個の著作物だと判断をします。ただ、運用上はスキャンすると難しいところがあるので、許容範囲はあると思いますが、著作物の考え方としてはそういうことになります。

(越智)生徒の成果物として、いわゆるアニメや漫画、TVアニメのキャラクターなどは、トラブル防止の観点からも基本的には権利者の許諾を得ながら使用するのが良いということでしたが、いわゆる画像提供専用サイトなどがありますよね。実際私が今使っているミッキーもそういうサイトから買って使っているのですが、もし利用したい場合はそういうところから利用すると良いんじゃないかという視点は合っておりますでしょうか?

(木南さん)そうですね。「Web上でこういう利用ができます」と認められているものであれば、サイトの運営者が既に権利者の方に許諾を取っているという解釈ですので、そこの利用規約の範囲の中でやっていただくことは構わないかと思います。

 (越智)ありがとうございます。

 
 

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