【第2弾】「映画・洋楽×ICT」この授業って大丈夫?!〜授業目的公衆送信補償金制度から考える〜

最終更新日:2021年10月13日

※このイベントは2021年9月に開催されたものです。

 

第2部(前半)|講演「授業目的公衆送信補償金制度」について


 

(越智)まずは木南様にご講演いただき、補償金制度について改めて学びたいと思っております。木南さん、よろしくお願いいたします。

 (木南さん)文化庁の著作権課の木南と申します。私のほうで少々お時間を頂き、この授業目的公衆送信補償金制度についてお話をさせていただきたいと思います。

 

●「授業目的公衆送信補償金制度」の仕組み

 

 (木南さん)「授業目的公衆送信補償金制度」とは著作権法に定められた制度です。ICTを活用した教育を推進するために、著作物の利用円滑化と、権利者の利益保護とのバランスを取る制度となっております。

学校の先生や教育関係者の中には、著作権を守らなければならないと意識しつつも、「公的な使命のある教育活動を行うためになぜ補償金の支払いが必要なのか」という考えや、「多様なコンテンツを無料で自由に使えるようにすべきではないか」と疑問を持たれている方がいらっしゃるかもしれません。

一方で、他人の著作物を利用することで便益を受けるわけですが、それは当然無料で使えるわけではございません。買い物をするときに、お金を支払って物を買うのと同じように、著作物の利用にあたっては、著作権者への対価が発生し、これを誰かが負担をすることによって、対価が還元され権利者の利益保護が図られるということになります。

著作物の利用の円滑化という観点も非常に重要です。授業目的公衆送信補償金制度は、著作権者と著作物を利用される教育現場の方々がWin-Winとなるように、著作物の利用のしやすさと対価還元のバランスを取った仕組みとなっております。

 

●そもそも…「著作権」とは?

 

(木南さん)ここで皆様方に、そもそも「著作権」とはということで、簡単にお話をさせていただきます。

著作物を創作し流通させ、そして利用してもらうという流れを円滑に回すことで、優れたコンテンツが広く利用される社会にし、文化の発展に寄与するという大きな目的のもと、著作権の仕組みがございます。これを回すためには、権利者の利益を保護することと、著作物の公正な利用を確保することとのバランスを図ることが重要になってきます。

権利保護が強すぎると流通や利用がしにくくなる一方で、権利の制限が強すぎると、逆に創作者に適切な対価が還元されず、次の創作活動に支障をきたしてしまいます。著作権制度というものは、常に権利保護と利用円滑化の良いバランスに留意して作られているわけです。

著作権の権利者、著作権を持っているとはどういうことなのでしょうか。著作権を持つ権利者は、その著作物を誰にいくらでどういう条件で利用させるか決めることができます。また、他人が無計画で著作物を利用することを禁止できます。よって、他人の著作物をコピーしたりネット配信したりする際には、原則として、著作物ごとに権利者に「使っていいですか」と許諾を得ることが必要となります。

では、どうして学校では許諾を得ずにコピーを配ることができるのでしょうか。著作権の制度は、公益性の高い利用や、権利者の利益に与える影響が小さい場合など、一定の条件を満たすと著作権を持っている人の権利が制限されて、著作権者が駄目と言えない場合がございます。

著作権法第35条「学校その他の教育機関における複製など」という規定があり、学校の先生が教室で授業を行う際にいろいろな資料をコピーして配るケースはこれにあたります。したがって一定の条件を満たせば、権利者の方に無許諾でもコピーを配るなど著作物の利用が可能となります。

 

 ●著作権法 第35条の規定

 

(木南さん)授業目的公衆送信補償金の制度と密接に関係するのが、著作権法第35条の規定です。先生方も日常的に使われている規定ですので、長いですが、条文を読み上げたいと思います。

『学校その他の教育機関において、教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における利用に供することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、公表された著作物を複製し、若しくは公衆送信を行い、又は公表された著作物であって公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達することができる』。この公衆送信というのは、いわゆるメールやインターネットで送ることです。

この後がまた重要でして、『ただし、当該著作物の種類および用途並びに当該著作物の部数及び当該複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りではない』。条文では但し書きに注意とよく言われますが、この規定にも、原則の話に対して「ただし」ということで、注意すべき点が掲げられております。

第二項では、『前項の規定により公衆送信を行う場合には、同項の教育機関を設置する者は相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。』とあり、ここで支払うべき補償金が授業目的公衆送信補償金ということになります。

 

 ●第35条を満たす条件

 

(木南さん)どういう場合に著作権法35条の条件が満たされるのかということで、5点挙げております。

まず、対象施設。「学校その他の教育機関、営利を目的としないもの」とされておりまして、営利を目的とする塾や予備校などは対象外となります。つまり幼稚園や保育所、小中高校、それから大学、専門学校、公民館、図書館、美術館。こういった場所は対象施設としてマルということになります。

次に、対象の主体。これは、「教育を担任する者」ということで主に学校の先生、それから「授業を受ける者」ということで児童、生徒、学生が対象の主体となります。教員等の指示のもとに事務職員などの補助者が行うことも可能ですが、教育委員会などの組織が主体となるものはこの制度の対象外となります。

3点目に、利用の目的限度。目的は「授業の過程」における利用に必要と認められる限度ということになっています。この「授業の過程」については、教育課程外の教育活動、部活動などは含まれますが、職員会議などは対象外です。また、その授業と関係のない他の教員・教育機関と著作物を共有する場合も対象外です。それから、授業で取り扱う範囲を超えてのコピーや送信についても対象外ということで、送信をする対象も限定するという考え方です。

4番目、対象行為。これは複製、つまりコピーと公衆送信です。メール送信ですとか、インターネットを使って流すこと。それからメールやインターネットで流したものをモニターに映して見せるといった使い方です。

それから5点目は、権利者利益への影響です。先ほどの但し書きの内容に当たりますが、その著作物の種類や用途を複製の部数などから判断して、著作権者の利益を不当に害しないという条件を満たす必要がございます。

履修者が購入済みの書籍の、履修期間におけるコピーや送信は対象として認められるでしょうが、履修者が通常購入して利用する教科書(これは小中学校の教科書ではなく、大学などで先生が講義の中で使うために大学生が購入するような教科書を指します)、各人が直接記入する問題集などのコピー送信は対象外と考えられております。

 

●「授業目的公衆送信補償金制度」で何が変わったのか?

 

(木南さん)制度自体は2020年4月から開始されております。ただ2020年度はコロナの影響もあって、権利者の方の格段の配慮ということから、補償金としては無償、0円ということで運用されてきました。それが2021年度、今年度からは有償の補償金ということで制度が本格運用されております。この制度がスタートする前は、著作物の利用について利用者は「複製」と「一部の公衆送信」のみ無許諾・無償で行えました。

制度の開始後も無許諾・無償で利用できる場合の一つは「複製」です。先生方にはおなじみかと思いますが、学校の対面授業で使用する資料として印刷コピーしたものを配布できるという、従来からあった仕組みです。

そして、「遠隔合同授業等のための公衆送信」。著作物を送るという行為について、対面授業で使用した資料や講義映像を遠隔合同授業などにより同時中継で他の会場に送信することについては、無許諾・無償でできます。Aという教室で先生が生徒に教えていて、同時にBという教室でも生徒が授業を受けている場合、A教室で使用されている資料をB教室に送るということについては、従来どおり無許諾・無償で利用できるということです。

授業目的公衆送信補償金制度によって、補償金を支払えば無許諾で著作物を利用できるということの範囲が広がりました。それが「その他の公衆送信すべて」ということです。対面授業の予習復習用の資料をメールで送信したり、対面授業で使用する資料を外部サーバー経由で送信したり、あるいはオンデマンド授業での講義映像や資料の送信、それからスタジオ型のリアルタイム配信授業も該当します。これは先ほどの例とどこが違うかというと、「遠隔合同授業等のための公衆送信」の場合、A教室には先生も生徒もいなければなりませんが、スタジオ型の場合は、そこに生徒がおらず、ビデオの前で先生が講義しているものを別の会場にいる生徒へ送るパターンについても、この制度の条件を満たすということで利用可能になります。

 

●「授業目的公衆送信補償金制度」の意義

 

(木南さん)この制度には大きく2つの意義があると言えます。1つ目は著作物等の教育利用におけるクリエイションエコシステムということです。非営利の教育活動であっても、コンテンツのコピーや送信をされれば書籍や論文などの売り上げに影響が出てきます。

作家や作曲家などのクリエイターは創作時に汗をかいて、創作物の対価により次の創作を行います。このエコシステムを教育現場の教材等にも導入することで、適切な対価還元によって創作が活性化され、質の高いコンテンツが生み出されますし、教育の質についても向上が図られるという好循環に繋げることが可能となります。

 

 

(木南さん)もう1つの意義として挙げられるのは、教育向けコンテンツのサブスクリプションサービスという見方です。ワンストップの指定管理団体を通じて、あらゆる種類の著作物利用について権利の一括処理が可能になりました。

先述の通り、著作物を利用する際には原則として権利者に許諾を得る必要があります。従来は、著作物を利用するたびに一件一件権利者に許諾を得て使うという仕組みでした。それを、SARTRASという指定管理団体に補償金を支払うことで、一件一件許諾を取るという手続きが必要なくなりました。

さらに、無断利用を止められる許諾権を制限することによって、遠隔教育での著作物の利用を促進し、教育などの未来への投資に活かすことができます。従来は、その権利者の方に「使っていいですか」と尋ねても「駄目です」と言われてしまうケースがありました。この制度では、補償金を支払うことで「使っては駄目」という回答がなくなり、条件に当てはまれば誰でも止められることなく活用できるようになっています。

 

●指定管理団体SARTRAS(サートラス)とフォーラム

 

(木南さん)ここで指定管理団体「SARTRAS(サートラス)」について簡単にご紹介いたします。

この授業目的公衆送信補償金は、文化庁長官が指定する指定管理団体のみが権利行使できることになっています。その全国で一つだけの団体が「授業目的公衆送信補償金等管理協会」で、通称SARTRAS(サートラス)と呼ばれています。このSARTRASを指定管理団体として、今年度から制度の本格運用がなされているところです。SARTRASには、それぞれの著作物の分野ごとに関係団体が入っており、そういった団体の集合によって作られています。

それから次にご紹介したいのが、著作物の教育利用に関する関係者フォーラムです。これは権利者団体と教育関係者が共同してフォーラムを設置し、改正法に基づく制度の構築など環境整備に取り組んでいるものです。例えば、「著作権法の解釈に関するガイドライン」として、この35条の運用にあたりどういう条件であればこの制度の対象となって、どういう条件であると対象外となるのか、というガイドラインを定めています。このガイドラインは、改正著作権法第35条の運用指針として2020年12月に公表されました。

 

 ●著作権法35条運用指針の主な内容と補償金額の概要

 

(木南さん)次に、著作権法35条運用指針の主な内容をご紹介します。特に、表の下から2段目にある「必要と認められる限度」、また最下段の「権利者・著作権者の利益を不当に害する場合」についてはいろいろと問題になることもあると思います。ガイドラインが示されているURLなども情報として提供しますので、ご確認いただきながらこの制度を使っていただければと思います。

[PDF] 改正著作権法第35条運用指針(令和3(2021)年度版)

今年度から本格的に有償の補償金額を定めて制度が運用されておりますが、この補償金額は大学・高校・中学・小学校と学校種別に年間の料金が定められており、「生徒1人当たりこの額を支払うと、年間いくらでもこの制度の中で利用することができる」ということになっています。この金額については3年経過ごとに検討を加えて必要な措置を講じるということになっています。


●事例紹介

 

(木南さん)ここからは、いくつかQ&A形式で皆様に具体的な事例をご紹介させていただきます。

まず、教科書や指導用教材を用いた授業を撮影し、その動画をYouTube等で配信する場合についてです。授業動画を配信するにあたっては、教科書が映ったり指導用教材の音声や映像が入ったりしても、設置者がこの補償金を支払っていれば許諾は不要となります。

ただし、これは必要と認められる限度において行うことが求められます。さらに、権利者の利益を不当に害することとなる場合は、別途著作権者の許諾が必要となります。したがって、一般公開ではなく、パスワードや限定公開などの機能を用いて授業を受ける学生に限定配信するといった対応が必要と考えられます。

次に、学校のホームページで、著作物を使用した授業の動画を配信したいというケースです。本制度の対象範囲内で考えられるのは、教員が担当または担任する授業の生徒に限り、閲覧権限をID・パスワード管理によって付与するなど、公開先を限定することです。このような方法をとらず、学校のホームページに単にアップロードし誰でも視聴やダウンロードができる場合は補償金制度の対象外となり、権利者の許諾が必要と考えられます。

 

 

次に、教育委員会が主体となってこの制度を利用し、著作物を公衆送信することは可能かというお尋ねについてです。この制度の対象となる主体は「教育を担任する者および授業を受ける者」と規定されています。教育委員会の組織はこれには該当しませんので、教育委員会が主体となる場合は制度の対象外となり、権利者の許諾を得る必要があります。

YouTubeの限定公開で生徒が演奏した合唱の動画をアップして、当該学校の生徒のみが閲覧可能なパスワードをかけたページにURLのリンクを貼る場合、権利者の許諾が必要かという事例については、「必要となると考える」と回答いたします。本制度は、学校その他の教育機関が授業の過程での著作物利用を対象としたものです。全校の生徒を対象に、いつでも自由に著作物が利用されるような画面は対象外と考えられます。よって、権利者に許諾を得て著作物を利用する必要があると考えます。

本制度に基づいて、海外の通信社が配信した写真が使われている新聞記事を利用する場合、補償金をSARTRASに支払う他に、通信社の許諾を得る必要があるかというお尋ねです。本制度は国内外全ての著作物が対象となるため、海外の通信社の許諾を得る必要はなく、SARTRASへの補償金の支払いによって当該著作物を利用することができます。

 

 

最後ですが、以下の著作物利用は本制度の適用となるかということで2点回答いたします。1点目は、そのものは授業の中で扱わないが、読んでおいた方が参考になると思われる文献を生徒宛に送信する場合、もう1点は、授業の中で回ごとに同じ著作物の異なる部分を利用し、結果としてその授業での利用が小部分でなくなる場合です。回答としましては、いずれも権利者の利益を不当に害する可能性が高いケースであり、本制度の対象外として、権利者に許諾を得て著作物を利用する必要があるケースとなるかと思います。

本制度に関する説明の最後として、補償金の分配についてご紹介させていただきます。SARTRASに集まった補償金については、原則としてできる限り権利者の方への分配がなされますが、一定の割合で、著作権の保護や著作物の創作の振興・普及に資する事業など、共通的な事業の基金として利用されることとなっています。

 
 

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