【第3弾】添削の手間が激減?! 〜生徒の自己学習力を育むライティング指導実践ワークショップ〜

最終更新日:2021年11月19日

※このイベントは2021年10月に開催されたものです。

 

【第2部】実践編「SSCCのためのツール活用」


 

(越智)ここからは、第2部の実践編として、今井先生には弊社のアプリを使用してSSCCを実践していただくところを皆さんにご覧いただきます。生徒役は北星学園女子中学校・高等学校の藤原先生です。

(藤原先生)生徒役の藤原です。よろしくお願いします。

(越智)ここまでお聞きになって、藤原先生はどのようなご感想をお持ちですか。

(藤原先生)添削は大変ですよね。他の先生方もそうだと思うのですが、やりすぎると倒れます。この時代ですから、働き方改革をしながら、できる限りいろいろなものに任せてやっていこうというのは、本当にその通りだなと思います。

(越智)ありがとうございます。ではここから、今井先生と藤原先生に一旦進行をバトンタッチいたします。今井先生、藤原先生よろしくお願いいたします。

 

●SSCC体験

 

(今井先生)今日は藤原先生に、高校生ないし中学生の気持ちに戻っていただいて、僕の大事な生徒役ということでやっていただければと思います。

時代は急速に流れておりまして、もうすぐ生徒全員がタブレットを持つ時代になりますよね。タブレットを使ってのSSCCも可能ではないかということで、今回はリピートークの画面を使いながらやっていきたいと思います。

それでは藤原先生、SSCCのところをクリックしていただいていいですか。

(藤原先生)はい。

(今井先生)それではレッスン1、textですね。画面の前の先生方も、お近くに紙とペンがありましたら書いていただきたいと思います。『昔、英国の小さな町にある少年が住んでいました』。

 

(今井先生)先生方、あるいはご参加されている皆さん、英文を頭の中で考えてみてください。考えがまとまりましたら、そこにどんどん書いてみてください。

(藤原先生)僕も英語が全然できなくて苦手なんです。すみません、恥ずかしいですが。できない生徒なので、はい。

(今井先生)藤原先生には、生徒に戻った気持ちで書いてもらいます。

(藤原先生)かなりできないんですよ。

 

(今井先生)さあ、藤原くんの書いてくれた英文ですが、『昔』というところで「many times ago」と書いていますね。「the boy lived on the small town in England.」と書いてあります。

まず『昔』ですが、「many times ago」は全然駄目ということにはならないです。ナイストライであると言えますね。『昔』は、模範英文には「once upon a time」と書いてあります。藤原くん、「once upon a time」は聞いたことありますか。

(藤原先生)聞いたことあります。本とかで。

(今井先生)そうですね、これは「昔々」というような、昔のストーリーを話すときに使われる表現ですよね。「once upon a time」、一つのストーリーとして考えていきますと、こういう出だしがふさわしいということが言えると思います。

次に、「ある少年が住んでいました」。The boyとか、A boyとか、boyから書き始める人が絶対に多いはずです。これは物語の一番初めなので、「there lived a small boy」という言い方にします。新しい情報を最初に持ってくるときには「there is(are)構文」を使います。ですので、「there lived a small boy in the small town in England」という言い方にするとばっちりになるわけですね。どうでしょうか?

(藤原先生)できました。

(今井先生)はい、ありがとうございます。それでは、2つ目に行ってみましょう。『彼の家はとても貧しいものでした』。

(藤原先生)彼の家だから「His house」、過去の話なので「was」、とても貧しいので「very poor」でしょうか?

 

(今井先生)惜しいですね。これです、赤いところ。藤原くん、彼の家がとても貧しいのか、彼の家族が貧しいのか、どっちですか。

(藤原先生)家は建物で、建物が貧しいということはないから、家族です。

(今井先生)正解です。ですので、「house」は「family」になりますよね。

(藤原先生)直します。

(今井先生)今、藤原くんが書いてくれたのはとても大事なところです。日本語をそのまま英語にすると、今みたいな状況が出てきますね。ですので、日本語の本質を考えて書く必要があります。これを「日日作文」といいます。これはとても大事なことなので、頭の隅に置いておいてください。それでは次いきましょう。

 

(今井先生)『ある日、彼は食べるものを得るために川に釣りに行こうとしていました』。さあ、それでは自分の思う英文を皆さんもそれぞれ書いてみてください。

(藤原先生)僕も初見なので緊張しています。

(今井先生)大丈夫です。間違っていただいて全く構いません。高校生だったら、あるいは中学生だったらこんな感じかな、みたいなね。さあ、どうでしょう。

 

 

(今井先生)では見ていきましょう。ある日は「One day」、いいですね。「川に釣りに行こうとしていました」、「行こうとしていた」なので、「行った」ではないんですね。

(藤原先生)ちょっとひどかったですね、これは。

(今井先生)「行こうとしていた」なので、過去進行形「was going fishing」ですね。で、「in the river」。

続いて「食べ物を得るために」ですが、ただ食べ物を得るのであれば「to get food」で良いですが、英語というのは「何のために行ったのか」という部分がとても大事です。「to get food for his family」、彼の家族のために食料、食べるものを得るために川へ行きましたということになるわけですね。

はい、できました。このように、語順や時制が大事になってきます。

 

(今井先生)それでは次にいきましょう。『川に行く途中、大きな屋敷の窓から美しいピアノの音色が聞こえてきました』、書いてみましょう。できるだけ簡単な英単語を書いてください。『川に行く途中』は何と言うのでしょうね。

(藤原先生)わあ、真っ赤だ!

(今井先生)ちょっと見ていきましょう。『川に行く途中』は「on the way to the river」ですね。藤原くんは何と書いたのかな。

(藤原先生)「彼が川へ行っているときに」としました。「途中」がわからなかったので、「When he was going to the river」にしちゃいました。

(今井先生)はい。これ、全然悪くないですよ。

(藤原先生)やった!

(今井先生)『川に行く途中』なので、「When he was going to the river」と書いてもバツにはなりません。中間点ないし、正解に近づくことは可能です。

(藤原先生)なるほど。

 

(今井先生)次ですね。日本語をそのまま英語に直すと、藤原くんが書いたように、「ピアノの美しい音が聞こえてきた」。藤原くんが書いたのも全然悪くないです。「無生物主語」と言って、「その音がこっちに来た」という言い方をします。

これはとても良い書き方になっていると思います。ただし、英語は主語が誰かということが常に大事です。

日本語は主語がなくてもコミュニケーションできます。これには大きな理由があって、日本人というのは「場面内視点」と言って、場面の中に常にみんないます。そのため、主語がなくてもコミュニケーションが成立する文化の中で僕たちは生きています。「愛してるよ」と言うときも、日本人なら同じ場面の中に人がいるので「愛してるよ」で通じます。

ところが欧米の人たちは、場面の外から俯瞰して常に自分を見つめているので、同じ場面にいません。「I love you」と主語と目的語を明確にしなければ成立しない言語、それが英語です。ですので、ここの主語の立て方は、無生物主語で持ってくる英文もマルですが、ここでは誰が聞いたか。藤原くん、どうですか。

(藤原先生)日本語をそのまま英語にして、なんかうまくいかない感じはしていたのですが、言われたらしっくりきました。あと「sound」より「melody」にした方が綺麗な気がします。

(今井先生)そうですね。というわけで、「He heard a beautiful melody」ですね。「sound」でもバツではありませんが、「melody」の方がより臨場感が出てきますね。

ここで、中学・高校の時に勉強した過去分詞です。「played on the piano from the window of a large mansion」、この「お屋敷」も、「building」でも全然いいです。これは大丈夫でしょう。

ただ概念として、『とても大きな家』という表現の部分で「mansion」という使い方について、注意点が一つあります。日本で使われている「マンション」ってありますよね。日本でマンションというと5階建て、10階建ての共同住宅ですが、あれを欧米では何と言うか知っていますか?

(藤原先生)ちょっとわからないです。

(今井先生)一番最初は「a」で始まります。

(藤原先生)a、a、a、アミューズメントパーク?

(今井先生)そんな高等なミスをする生徒はいませんね(笑)。「apartment」です。日本で言っている「マンション」は、実際には「アパートメント」という言い方をします。

さあ、このままずっと行くとこれだけで20分、30分経ってしまいますので、藤原くん頑張ったとしましょう。

(藤原先生)ありがとうございます。頑張りました。

(今井先生)今のようにいろいろな話をしますよね。これは文法や語法の話です。あるいは、認知言語学の話であったり、欧米の文化であったり、いろいろな話をしながら生徒とともに英語を考えることが可能になっていきます。

 

 

(今井先生)それでは、左側のメニューから「Repeating」をクリックしてください。そこの三角形のマークを押しますと音が出ますので、聞いて音読してください。5つぐらいやってくださいね。どうぞ。

【自動音声】「Once upon a time, there lived a small boy in the small town in England.」

(藤原先生)「Once upon a time, there lived a small boy in the small town in England.」

(今井先生)Very good. じゃあ、次行きましょう。

【自動音声】「His family was very poor.」

(藤原先生)「His family was very poor.」

(今井先生)Very good. いいですね。次どうぞ。

【自動音声】「One day he was going  fishing in the river to get food for family.」

(藤原先生)「One day he was going  fishing in the river to get food for family.」

(今井先生)OK、いいですね。

(越智)録音ボタンも押していただくといいかなと。

(藤原先生)わぁ、緊張する。

 

※《自動音声再生中》

 

(今井先生)ありがとうございます。

(藤原先生)もう恥ずかしいので勘弁してほしかったです(笑)。ありがとうございました。

(今井先生)全然OKです。今日の生徒、藤原くんとして入っていますので。

このように、生徒は自分で読んで録音したものを自分で聞くと、非常に多くの気づきがあります。例えば今の藤原くんは普通の高校生より遥かに上手ですが、出だしからボンッと強く言う。この藤原くん特有の、最初英語を言うときにボンッと勢いに乗るという特徴があって、非常に面白いですね。

これを何回も繰り返すことによって、ネイティブの抑揚、それから一番大事なリズム。そしてこの中に含まれているリエゾンや、音の連結・脱落。そういったものにどんどん気がついていく、というわけです。

日本語を読んで頭で考えて、英語で書いたものから納得しますよね。次の段階として、ここで音と文字が一致していく。これがマスターできると、生徒の英語力が格段に上がっていくわけです。まさに、4技能がここで繋がっていくわけですよね。

 

 

(今井先生)さあ、それでは「Repeating with J」のコーナーに行ってみましょう。

(越智)こちらも録音をしていただけたら。

(今井先生)あくまでも、生徒は好きなだけ何回も練習します。今日、藤原くんにはとても大変なことをお願いしています。藤原くんは今、初見でやっていますよね。これは英語の教員であっても、初見で録音まで行くのはとても大変だということを言っておきます。

(藤原先生)これきついですね、かなり。

【自動音声】「Once upon a time, there lived a small boy in the small town in England.」

(藤原先生)「Once upon a time, there lived a small boy in the small town in England.」

【自動音声】「His family was very poor.」

(藤原先生)「His family was very poor.」

【自動音声】「One day he was going  fishing in the river to get food for his family.」

(藤原先生)「One day he was going  fishing in the river to get food for his family.」

【自動音声】「On the way to the river, he heard a beautiful melody played on the piano from the window of a large mansion.」

(藤原先生)「On the way to the river, he heard a beautiful melody played on the piano from the window of a large mansion.」ああ、間違えた。

(今井先生)はい、OKです。どうもありがとうございます。あれだけ長い文章は、たった1回の練習では無理です、誰でも。それでは、ちょっと聞いてみましょうか?

(藤原先生)これは本当に嫌ですね。

 

※《自動音声再生中》

 

(今井先生)通常は、何回も練習して上達した段階で次に行きます。今日は時間の関係で、かなり無理なお願いを藤原先生にしています。でも、すごく面白いですよね。

(藤原先生)楽しいです。

(今井先生)とてもチャレンジングであるということで。

(藤原先生)頭使っています、めちゃくちゃ。

 

(今井先生)これが一通り終わったら、次のメニュー「shadowing」に行きましょう。これも録音ボタンを押して、そのままやってみてください。

(藤原先生)シャドウですね。

「Once upon a time, there lived a small boy in the small town in England.His family was very poor.One day he was going  fishing in the river to get food for family.On the way to the river, he heard a beautiful melody played on the piano from the window of a large mansion.」

(今井先生)はい、OKです。ありがとうございます。ちょっと聞いてみましょう。

 

※《自動音声再生中》

 

(今井先生)このように、自分のシャドーイングも聞けるというのは今までなかったんですよね。僕も今大学で教えていて、シャドーイングもやらせてはいるのですが、一人一人のチェックは無理です。ところが、これに録音されれば自分で聞けますので、「ここ聞き取れなかったな」「長かったな」という部分があればもう一度そこに戻って、「Repeating」で練習して、またここに来るということが可能になるわけです。

 

(今井先生)いよいよ最後です。「Reading」のところを見ていただきましょう。

(藤原先生)長い!

(今井先生)長いですよ。長いですが、一度頑張ってみましょう。それでは、録音開始からどうぞ。

(藤原先生)「Once upon a time, there lived a small boy in the small town in England. His family was very poor. One day he was going fishing in the river to get food for family. On the way to the river, he heard a beautiful melody played on the piano from the window of a large mansion.」

「He is always telling of the wonderfulness of music to the children gathering around him with their eyes shining.」

「From the next day on, he played the piano every day. He rapidly improved his piano skills until he could give performances to the people in his town. His performance was great, but his outfit was shabby. One day, a female professor at the College of Music offered him assistance. With her help, he studied a lot and entered a college of music. He studied diligently and brilliantly finished first in college. He became a music teacher and now holds a concert every month in an orphanage.」

(今井先生)はい、大変でしたね。それではボイス再生しましょうか。

 

※《自動音声再生中》

 

(藤原先生)もうちょっとだったな。結構タフですね。

(今井先生)タフですよね。本来なら音読練習をしっかりやってからここに来るので、藤原先生は素晴らしいですよ。半分から下、初見ですから。

 

(今井先生)というわけで、今日は体験していただきましたが、ずっと下に行っていただくと「提出する」というのがあります。これを提出しますと、教員にこの音が届きます。今提出中です。実は札幌大学の僕の生徒たちにもリピートークを提出させています。週に1回、提出されたものを評価して、フィードバックして返すのですが、設定をしっかりしていくとボタン一発で簡単に評価までできてしまいます。

こうしてデジタルデータをどんどん送るわけですが、先ほどの音に対して、生徒の藤原くんがネイティブの何%ぐらい再現できたかというのも数値で出ます。例えば、完璧にできた場合は100%、惜しい場合は何%、というふうに。

(越智)私がやったものに対しても、今井先生からコメントを頂いています。私の場合、非常にゆっくり読んでしまったので一致率は36%で止まってしまったのですが、このように先生からコメントを頂けます。今はZoomと接続しているのでアップロードが遅いですが、通常であればすぐ先生の方に届きます。

 

 

●まとめ

(越智)一通りやっていただきまして、ありがとうございました。藤原先生、通常であれば先生としてSSCCを現場で教えていらっしゃる側ですが、今回は生徒側に立ってアプリを使用して受けてみるという形で、いかがでしたか。

(藤原先生)頭フル回転ですね、すごく疲れました。良い疲れ方です。英語を書いてそれを喋る、というところまで持っていくのはなかなか難しいのですが、「自分でできる」というのがすごく素敵で、楽だなと思いました。達成度のところで先生が見れるので、フォローアップもしやすいと思いました。

(越智)先ほど今井先生からもご案内いただきましたが、SSCCに関しては書籍に詳しく書いております。今井先生からお伝えしたいことなどはありますか。

(今井先生)何よりも今日、初見でやっていただいた藤原先生に感謝しております。ありがとうございます。

(藤原先生)ありがとうございました。

(越智)お二人とも、ありがとうございました。

 
 

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